軌道に乗る
俺が完成したばかりの鷹を見せると、みんな思い思いに感想を述べた。
「きゃー、すごいすごいすごい」
「こりゃまたすげーな。この前の鳥と違った凛々しく野生味を感じるぜ」
「見事だね・・・・。月並みの言葉で申し訳ないけど、うん、見事」
みんなからの賞賛にほっと胸を撫で下ろす。
ラベンダーは俺の才能に驚きつつも、目を潤ませて喜んでいた。
腹減り爺さんはゆったりと俺の彫刻の素晴らしさを伝えてくれた。
「では、大家さんは満足してくれるかしら?」
「そりゃもちろんだよ!!この出来だ。この前もすごかったけど、これはまた立派だな」
そう言いながら、彫刻を手にしてしげしげと見つめる。
「今回は一段と存在感を感じる。なんというか、奥行きがあるというか、立体的というか」
グナシは建設的に話すタイプではなく、思ったことをそのまま単語でもポンポンと言う。
だが、意外に鋭かった。
そう、今回は両羽はほぞ継ぎで組み合わせている。
ほぞは片方の角材にほぞ穴を開ける。そしてその大きさに合わせてもう片方を凸型に削り、先ほどのほぞ穴に入れ込むのだ。とても弱々しく見えるが、これが凸と凹がきちんと組み合わさり、なかなかの強度がある。
ほぞで別に彫り出した両羽を組み合わせたので、木材の大きさにこだわらずに羽を表現できた。
翌日グナシが届けると大家は大層喜んでくれたそうだ。
それを聞いた瞬間、思わず安堵の大きなため息が出た。
自分が思っている以上に内心は緊張していたようだ。
自分の力で彫刻を生み出す。
依頼を受けた以上、俺を選んでくれた以上、全力でその期待に応える。それはこの世界でも奈良でも変わってはいない。
「というわけで、彫刻を見たご近所さんからも4体ほど注文が入りましたーーー」
・・・・・。
え?
全く、グナシの奴は悪い奴ではないが、こちらの都合お構いなくどんどん注文を受けるのだから困ったものだ。
彫刻を一体作るのはそう簡単ではない。
そもそも仏像のように決まった図面があるわけでもなく、一から図面を起こさなくてはいけない。依頼される彫刻も毎回依頼内容が異なるし、ここには大した道具もない。
奈良のようにはいかないのだ。
とは言いつつも、俺は職人魂で依頼された馬やウサギ、亀、トンボまで彫った。
彫って彫って彫りまくった。
彫り終わると、週末にグナシは城下町へ行き品を届ける。
俺は毎回グナシの顧客の言葉を聞くまで内心ハラハラしていたが、どれも俺の彫刻を賞賛する言葉だけでほっとしている。
なお、お代は手数料半分引かれてはいるが、それなりに潤ってきた。
そのお金でグナシ経由で賄賂を払い、食事はこれまでとは比較にならないぐらい質が良くなった。
ブリオッシュが配給品に入ってた時はラベンダーは声を上げて喜んでいたっけ。
グナシの半分の手数料にはラベンダーは大いに不満があるそうだが、実際のところ製材された木材や新しい道具の手配などでそんなに儲かってはいないようだ。
今のところ、ご近所や大家への貸しを作ったようなもんだろうか。
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