取り掛かる
まず炭を筆代わりに毛彫の様に木材にナイフで線を入れる。毛彫とは銅などに細い線で模様などを彫ることだ。
切り取るところに線を入れていく。
机に木材を縦に置いて、その上から平たい叩き鑿を持ち、印をつけたところに垂直に鑿を当てる。
そして勢いよく小槌で鑿を叩く。
ここは迷ってはいけない。
面白いことに、それだけで木の筋に沿って、亀裂がまっすぐに入る。
時々木の癖で真っ直ぐいかない事や、進まないこともある。それを見極めるのもまた仏師である。
途中まで亀裂が入ったので、さらに鑿を叩いて彫り進める。
3度程叩いて、パックリと割れた。
よし、これで片面ができた。さて、もう片面。
同じ要領で反対も鑿で削ると、木材は3角形になった。
これで大まかな形はできた。
次は鳥の輪郭だ。
これも上から印に合わせて斜めに鑿を入れる。すると2回程でぽろりと切り落ち、頭から嘴までの大まかな輪郭ができた。
さて、喉元。
今度は 木材を横に倒して、印をつけた喉の辺りにノコギリで切れ目を入れる。
ギコギコギコ。
ノコギリから平鑿に持ち帰ると、嘴から先ほど切れ目を入れた喉元の辺りを何度もスッスッと彫り削る。
やがておぼろげながらも嘴と喉元が現れていく。
懐かしい。
思わず顔が綻ぶ。
一つ一つ鑿を進める度、ふわりと木の香りに包まれる。
削りかすを手に取り、鼻先に持っていく。
うん、いい香りだ。
命の匂いだ。
師は言っていた。
「いいか、木は生きておる。切り倒されても、こんなに小さい破片となっても生きている。命だ、生きているのだ。だから細部まで一瞬まで気を抜くな。気を抜けばすぐに飲み込まれるぞ」
その言葉を胸に刻み、俺は仏師として過ごしていた。
兄弟弟子には大胆な鑿使いで、荒々しく、力強くその命を彫り進める者もいた。
まるで馬を手懐け、操るかのように。
だが、俺にはそれはできなかった。
そうすると線は乱れ、思わぬところに亀裂が入る。
俺は主にはなれなかった。その代わり、ひたすらに木と向き合った。
細部まで彫り進め、木の持つ一等美しい姿を俺は彫った。
一部の隙もないと言われるまでに。
おっと、ついつい昔の思い出に浸ってしまった。
目を離してはならぬ。
お前の美しい姿を必ず彫りだして見せよう。
そう語りかけると、俺は再び鑿をもった。
職人の姿やっとお見せできました。
もう少し早くてもよかったかな。
うーん、難しいですね。
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