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一日目

 ドサッーーーー。

 

 痛い。

 体をしたたか打ち付けてしまった。

 どこかに落下したようだ。

 

 突然の光が眩しく、目をゆっくりと開ける。

 地獄の燃えるような大地でもなく、極楽浄土の花々の世界でもない。

 硬く冷たい床の上だった。

 

 ここは一体どこだ?

 

 頭を上げるとズキンと鈍い痛みが走る。頭でも打ったのか?

 思い出そうとしても強い痛みに、思考が停止する。

 きゃあ!!!どこからか女性の悲鳴がして、誰かが駆け寄ってくる。


「大丈夫ですか」


「どうやら階段から落ちたようだ」別の声もする。


 階段?俺は階段から落ちたのか?


「早く医者を」


 切迫するような声がして周囲で皆が慌ただしく動き回る。

 肝心の俺は頭が痛み、なかなか目を開けることができない。

 なぜ俺は階段を歩いていたのだ?なぜ落ちた?


「オーロラ様!!!」


 若い女性の声がして、俺の手を強く握る。

 うっすらと目を開くと若い娘が泣き出しそうな顔をしてこちらを見ていた。

 藤色の髪と瞳・・・。

 珍しい色だ。異国の者か。


「ここは・・・?」


「え・・・ここは宮殿の大広間でございますよ、それよりお身体の方は・・・」


 大広間?宮殿??一体何を言っているのだ。

 痛む頭を抑えながら、周囲を見渡すとそこは見知らぬ場所だった。

 豪華な装飾品に絵画、大理石の床。

 なんだここは。俺を取り囲む人々は異国の服装をしている。

 

 起きあがろうとして妙な違和感に気づく。

 体が変だ。なんだろうか。どう言えばいい。うまく表現できないが、自分の体ではないような奇妙な感覚だった。


「オーロラ様??」

 

 ぎゅっと手を握る若い娘。

 そしてその後ろに見える、壁にかかった大きな姿見。


 !?

 ????


 そんな・・・。どーなってるんだ。

 姿見に写っていたのは無骨な男ではなく、若く美しい金色の髪をした少女だった。

 

 なぜ俺が女の姿に・・・。

 どういうことだ?

 先ほどから寄り添ってくれている娘の肩を強く掴み問いかけた。

 こちらのあまりの気迫に娘は怯えたような顔をする。


「女だ」

「え?」

「なぜだ。それに俺は死んだはずだ」

「何をおっしゃいますか。生きておりますよ、間も無く医師が」

「美しい女人になっている」

「オーロラ様はいつも美しい女性ですよ」

「そんなわけはない!!俺は・・・俺は男だ!!」

「お、男??」


 ズキンッ!!!激しい頭の痛み。

 意識が朦朧として今目の前にいた娘が夢のように霞んでいく。そうか、これは夢だったのか。ああ、女を知らぬ俺が異国の女になるなんて、なんという夢だろう。


 遠くで誰かの声がした。


「聖女様がご乱心だ!!!」


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