幽閉
夜更けに、従者がやってきて勅令を告げた。
明日の早朝に俺の聖女剥奪と幽閉が決まった。
早すぎる結末だった。
「あんまりですっ」と泣いて従者に縋ろうとするラベンダーを制した。
弁明は無用だろう。
そして夜明けと共にわずかな荷物を持ち連れ出された。
ラベンダーもまた共犯と見做された。
4人の騎士と宮殿を出ると、果実園を抜け、礼拝堂を通りすぎると寂れた場所にでた。ここまでくるのに荷物を背負っていたので少し疲れた。
歩きながら昨日の事を考えていた。
部屋にあった辞典によるとスパイダーエイプルはハーブのエイプルに見た目はそっくりだが、民間では媚薬として信じられていた。実際は麻薬の一種で精神錯乱や酩酊状態でしかなかったが、それでも多くの男女が摂取して精神に異常をきたす事例が後を絶たず、エルダットでは栽培及び持ち込みでも厳罰に処されるのだ。
スパイダーエイプルの名前の由来は根が蜘蛛の巣のように地中で張り巡らせ、近くの植物の栄養を奪っている厄介な植物だった。
そんな植物を俺は王子にも飲ませようとした罪人となってしまったのだ。
なぜそんな危険な植物がハーブ園にあったのだろうか。
しばらく歩くと、蔦が絡まった古い門が姿を出す。
「ここはどこでしょうか」
宮殿のことは何でも知っているラベンダーでさえ、知らないようだった。
周囲はぐるりと煉瓦の塀で囲まれていた。唯一の入り口である門は重く分厚い木でできていて、硬く閉ざされている。長い木の板が錠前代わりに横倒しになって門を閉めていた。
これは、内側からは自由に出入りできないな。
重い板を騎士二人がかりで呼吸を合わせて外す。
重音を出しながら、門が開いた。じっとりと湿気を含んだ風が抜ける。
門の先は薄暗い森のようだった。
「この中に入れ」
オーロラ様、とラベンダーは私の背中にぴたりと寄り添う。
うおっ。
ラベンダー、当たっている・・・。
胸が・・・・豊かな胸の膨らみが俺の背中に当たっているぞ。
心臓が激しく鼓動を打つ。
自分の身体にやっと慣れてきたが、他の女人の身体は別だっ。
「ちょっとラベンダー近くてよ・・・」
身体をそっと離そうとして、手を止める。
ラベンダーは体を震わせ、怯えていた。
「大丈夫」
ラベンダーの手を握ると彼女ももこくりと頷いて、握り返した。
ここはどこなんだ?
俺とラベンダーは互いに手を取りながら、周囲をキョロキョロと見渡す。
森のようではあったが、道があり舗装されていた。
土や木、そして雨のような匂いがする。
しばらく歩くと開けた場所にでた。
そこは寂れた庭のようで、枯れた噴水に、伸び切った雑草。脚が一つ折れている椅子。
しばらく人の往来がなかったかのように、朽ち果てている。
二人でキョロキョロと周囲を見ていると騎士が聞いてもいないが、教えてくれた。
「ここは元は王族や貴族が外国の要人と秘密裏に会談したり、愛人と会ったりする隠れ家があった。だけど、ある時浮気に気づいた夫人が密会していた愛人を殺害してからは、誰も訪れなくなったんだよ。今では眠りの庭と呼ばれていて、あんたみたいな罪人を幽閉するのに使われている」
とかげがいたが、人に気づくと草の陰にサッと消えた。
少し短くて、すみません。
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