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8.スノウリリイちゃん観察日記

 

「おはよう。スノウリリイ。昨日はよく眠れた?」


「・・・。」


「今日の朝ごはん何かな~」


「・・・。」


 しまった。昨日と全く同じことを言っている。昨日よりスノウリリイの反応が悪い。




 昨日は城見学と聞き取り調査で終わってしまったので、スノウリリイについて回ろうと思う。迷惑かもしれないけれど、静かにしているから許してほしい。彼女が一日何をしているのか。それはゲームのいちオタクとしても気になるところだ。普通にお姫様がどんな一日を過ごしているかっていうのも知りたいし。




 結局、彼女がなぜ何も話してくれないかはわからない。もちろん、憶測ではあるけれどもしかしたらという理由は一応ある。けれども、ここでその推理を彼女の前でして、何か話してくれるように促すのは何か違うような気がした。これって、女神様の言っていた権力行使に値するんじゃないか。これでその場に他の人間、例えば国王とかがいたらますます圧をかけているだけじゃないのか。王妃じゃないけれど彼女が話してくれるのを根気強く待つしかない。関係深い人より、全く関係のない第三者の猫になら話してくれると信じよう。彼女のタイムリミットは幸いあと十年。私に必要なのは彼女との信頼関係。これを目標にしていこう。




 食事中、またしても王妃は、スノウリリイを誘いたそうにそわそわしていたが、今回は話しかける前に止めた。断られそうだったし、また彼女に逃げられたら困る。見ていて思ったが、スノウリリイはとても食べ方が綺麗だ。何かこぼしたりもしないし、ナイフとフォークの使い方も正しい。食べた後の皿までも綺麗だ。こういうマナーも厳しく指導されているのだろうなと感じた。




 食後はいつも庭の散歩をする。実はこれは護衛のパオロさんから聞いていた貴重な彼女についての情報だ。彼女は花が好きなのだ。自身も花の名前を冠した彼女は、庭の花を触ることもなく、じっと毎日見つめるのだそうだ。見ていると、彼女は花だけでなく草木や虫もじっと眺めているようだった。きっと自然そのものが好きなのだろう。


「ねえねえ、どの花が一番好き?」


 彼女は真剣にしばらく、うーんと悩んだ後、可愛らしい小さな紫色の花を指さした。


「あ。私もこの花が一番好き」


 とても穏やかな時間だった。しばらく慌ただしかった今日までのことを忘れていた。




 朝の散歩はとても短い。すぐに午前中は勉強の時間になった。私はどちらかというと、勉強は嫌いだったがスノウリリイはそうでもないらしい。彼女は一つ年上のアルベルトと全く同じ授業を受けていた。アルベルトの方が遅れているのではなく、彼女の進みが早いのだそうだ。数学、文学、語法、古代語、歴史・・・。私は聞いている間、半分以上ぐっすり寝ていた。二人はまだ幼いのに、私と違ってちゃんとノートを取りながら居眠りせずに取り組んでいた。各授業に一人ずつ講師がいて、全員その道のプロフェッショナルなのだ。流石王族の教育といったところだ。


 二つだけどうにかならないのだろうかと思うことがあって、この場だけでなく私が学生の頃の授業でもあったことだが、先生たちの中には生徒と交流しながら授業を進めるタイプの先生がいる。この五人の先生のうち三人はこのタイプだったのだが、スノウリリイが終始無言で、すべてアルベルトが答えているのでとても気まずかった。それともう一つ。授業を受けているのは二人だけだが、二人のお付きがたくさんいてずっと授業参観されているような気分だったことだけが気になった。




 昼食が終わってからの午後からはまた違ったスケジュールになる。私たちの世界でいうところの「お稽古事」の時間になるのだ。ダンス、マナーに裁縫、歌、詩、ピアノ、ヴァイオリン。これらが一週間のうち2,3回日替わりでレッスンする。正直裁縫とかいらなくない?王女のなら。とも思ったのだが出来ないと、どこの嫁ぎ先でも姑からネチネチいじめられるらしい。全くどこの世もマウントを取りたがる人間がいるものだ。勉強と違い、お稽古事に対してはスノウリリイもあまり乗り気じゃないらしく無難にこなしていた。唯一ヴァイオリンだけは好きなことを侍女のジルから聞いていたので、相変わらずの無表情だが、少しだけ積極的なように見えた。(言われなければたぶん気がつかなかった)。




 お稽古事は、アルベルトは参加しないものが多いので少し気が楽そうだった。彼は魔法と剣術とスノウリリイは教えられていない一部の教科に午後からは取り組んでいる。本当はスノウリリイも魔法の授業をしなくてはならないのだったが、彼女は物心つく頃には魔法をほぼ完璧に使いこなしていたため、免除されている。当時、神童とかなりもてはやされたらしいが、本当に実質神の子だったとは誰も思わなかっただろう。




 彼女の決まったスケジュールはここで終わりだ。全て終わったのはすっかり日が暮れた夕方だった。七歳の学習量としてはなかなかハードだ。ほぼ七時間授業だった。今日は極端にキツキツのスケジュールだったが、ここまでじゃない日も週に一回はあるらしい。いや、それ週六で七時間授業じゃん。ブラックだな・・・。




 彼女の自由な時間は、寝る前の三時間ほど。自室にやっと戻って来たスノウリリイは、一時間は今日の復習と宿題をしていた。それが終わると、机に向かっていた彼女は私の方に方向を変え、じっと見つめた。

 んんん?何だろう。彼女が何を言いたいのかわからなくて、見つめ返すしかない。


「神獣様、姫様は何かおもてなしをしたいと思っているようです」


 ジルにそう翻訳された。そんな必要はないと周りにもスノウリリイにももちろん言ってある。そうはいっても、今までは「普段の生活の様子を見せて欲しい」と頼んだから、私をそこに置いておくだけで良かったけれども、この自由時間は決まったことをするのではないから、何かしなくてはと思ったに違いない。まだ子供でも、話してはくれなくとも、彼女は王族としての責任として、客である私と向き合おうと思ったのだ。


「じゃあ、私とスノウリリイだけにしてくれるかな?」


いつもありがとうございます

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