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40.婚約式

 そこからの日々は驚くほどあっという間だった。フラムとアクアノーツの間で結ばれた新しい条約は世界中で話題となった。長く疎遠だった二つの大国が和解することを誰も予想していなかったからだ。



 そうした中で人々の間でこんな噂が流れ始める。


「スノウリリイ王女の嫁ぎ先はフラム帝国なのではないか」


 というものだ。これまでにたくさんの神の愛し子がこの世に生を受けてきたが、神の愛し子同士で婚姻した例はほんの数例しかなかった。高すぎる魔力と人並み外れた美しさを持つとされる彼らが結ばれるとどうなるのだろうか。それは多くの人々の関心を集めた。



 しかし、そうも言っていられないのが他の国々。最大とは言えずとも大国の一つとして数えられるアクアノーツとの繋がりが出来ると期待していた国は焦った。彼らは正式発表がないのを口実にスノウリリイへの求婚を続けた。十歳の婚約の正式発表までに不毛なお見合いが何度も繰り返された。こちらも大々的に言ってしまったために、断ることも出来ないのだ。人見知りのスノウリリイには苦痛でしかないだろうが、逆に彼女の社交力がこれで上がってしまったのがまた皮肉なものである。




「ここに来てから三年も経ったんだなぁ・・・・」


 盛大なスノウリリイの誕生祭を空の上からぼんやりと見物する。去年、アルベルトはゲーム通りマリアと婚約した。それを皮切りに、他の主要キャラたちも全くゲームと同じ相手と婚約したようだ。ただ、メインヒーローであるディーノだけは誰とも婚約していない。もしかすると、ヒロイン・・・・ソフィアと婚約するかと思ったけれどそうは世の中上手く出来ていないようだ。



 水色のプリンセスラインのドレスを着た今日のスノウリリイはとても美しい。三年前のあの日よりも背も伸びて、ますます綺麗になっているのが嬉しくもあり、怖くもあった。少しずつゲームの開始が近づいていると感じさせられるからだ。



 この世界に来た頃の私に、第一作のヒーローと推しキャラが婚約するよと言っても何を言っているんだと返されるだろう。それぐらい運命が変わったのだ。それに、人生二周目の次期皇帝がいるのも心強い。ゲーム後のあれやこれも対応できるだろう。




「お前はそんなところで見ていていいのか」


 急に誰もいないはずの空中にもかかわらず、声が聞こえた。顔を上げると、そこには久しぶりに会う女神とその部下であるリヒトさんが立っていた。


「お久しぶりですねぇ」


「何がお久しぶりですだ。わしらの事忘れていただろう」


 むすっとして女神様が顔を背けた。それを見た隣のリヒトさんがため息をつく。


「この人、貴女がもっと自分を頼ってくれると思っていたから拗ねているんですよ」


「何を言う。こんな生意気な猫知らん」


 頼っていいんだ・・・・。それもっと早く言って欲しかったんだけれど。


「女神様もお祝いに来たんですか?」


「いや、もう下にはいかん。経過観察に来ただけだからな」


「なるほど。それでどうですか?私何か間違えていないですかね?」


 成績を貰う前の学生のような気持ちになりながら、女神に問いかけてみると、彼女は難しい顔をしながら腕を組んだ。


「うーん・・・・。なかなか今までにない展開に持ち込めたし、わしは悪くないと思うんだがな」


「そうでしょうか?不確定要素が増えただけでは?」


 相変わらずこの主従の意見は割れる。女神様は肯定的、リヒトさんは否定的か。


「聞きたいことがいくつかあるんですけれど」


「言ってみろ。答えられる範囲で答えよう」


「ではまず一つ。アーサーとスノウリリイが出会うこと。これはどうあがいても起こることですか?」


「そうですね。もし、アーサー皇子が家出をしなくても、どうにかして運命が二人を出会わせようとするようです」


 何かの資料を捲りながら、リヒトさんが私の疑問に答えた。そこまで運命的なものとは思わず少し面食らう。いや、他にも聞きたいことはある。


「リオートのユーリ皇子・・・・彼もスノウリリイと会う運命とかなんですか?」


「いや、わしもそれは驚いている。あれは本来スノウリリイの人生に関わることのない人間だったはずだ。まさか創造主の方が干渉してくるとは思わなかった」


「じゃあ、創造主様も運命を変えたい?それってスノウリリイ関係じゃなくてもしかしてですけれど、その後のアーサーが侵略を始めることを止めるのが目的ですか?女神様たちもそっちがメインなのでは?」


 二人は顔を見合わせたのち、頷いた。


「まあ・・・・そうですね」


「なんでそんなに歯切れ悪いんです?」


「いえ、結構貴女に無理を押し付けた自覚があるので申し訳なくなくて。貴女にはスノウリリイ姫の事しか頼んでいないのに実際はもっと大きなことが目的だったわけですから」


「そんなにスノウリリイが重要なんですか?」


「というかあのアーサーの暴走の引き金があいつじゃぞ」


「あ・・・・だから最初にアクアノーツを?」


「そうです。スノウリリイ姫と幼少期に会ったことを忘れてはいなかった彼は、ソフィア姫とその仲間たちの魔神退治の話を聞いて非常に不快感を覚えていました。実際は仕方なくスノウリリイ姫ごと退治するしかなかったのですけれど、彼にはソフィア姫たちがスノウリリイ姫を手にかけておいて英雄呼ばわりされていると思っていたのです」


 それが色々なものが積み重なって行動に移してしまいもう最悪なことにとリヒトさんは続けた。その最悪な状況見てないからな・・・・。でも神様たちがこぞって改変しようとするぐらいだし、よっぽど酷いのかな。


「こんな回りくどいことしないで、女神様が自分でどうにか出来ないんですか?」


「いや、出来ていたら本当に苦労しないんじゃけどな。そうもいかないのだ。世界に手を加えすぎると、わしより偉い神々から粛清を食らってしまう」


「その偉い人たちはなんの神様なんです?」


「この世界の魔法の元になっている火だの、水だのの神じゃ。今はその世界を運営する神の監視役が主な仕事だ」


「へー。でも手を加えすぎても怒られて、何もしないとしばかれると?」


「そうだ。理不尽な話だろ?神々にとってはお前らがやるような・・・・それこそゲームと大して変わらないと思われているんじゃ」


 その神の一人が不満そうに口を歪めた。彼女はどうも神々が嫌いと感じられるニュアンスの事を前にも言っていた。権力が嫌いなタイプなのか?自分も神様なのにね。


「そうなんですね・・・・。所でこれからは時々相談とかしていいってことなんですかね?」


「うーん・・・・」


「えっ、さっきと話が違いません?」


「いや、だってこれでも結構忙しいし・・・・。まあ、いいか。何か重要な相談と本当に困った時だけ呼べ。わしじゃなくてコイツしか来れん時もあるだろうけれど」


「いえいえ、十分ですよ。何か他に気を付けておくこととかあります?」


「まあ、フラム帝国の連中だな。詳しく言うならば本来の皇后の・・・・ティファニー・プランケット周りだな。本人も怪しいがあの辺どうも妙だ」


「なるほど・・・・。心得ておきます」


「そうしてください。それではそろそろ帰りましょうか」


「じゃあな」


 二人はすぐさまキラキラした謎のエフェクトを出して消え去った。




 私は再び下を見る。すっかり時間が経って、パーティーも後半だ。終始機嫌のいいアーサーに比べると、スノウリリイは時々暗い表情をする。そろそろ戻らないとな、猫は泳ぐように彼女の元へと降りて行った。


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