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22.恋の瞬間

いつもありがとうございます。

「急にびっくりしましたわ!!キャー!!」


「うん。叔父様すごい」


「はいはい、早く帰るよ」


「耳が赤いよ」


「神獣様?」


 ごめんごめん。宮の出口に向かっていくと、今度はジルが何か一人で立ち尽くしていた。手に何か持って・・・紙かな?三人もジルに気が付いたようだ。


「ジル?」


 呼び掛けても紙を凝視していて気が付かない。もう一度呼ぶとぱっとはじかれたように顔を上げた。


「申し訳ありませんっ。少し考え事をしていて・・・」


 大きな目を見開いて、謝罪するジル。何が書いてあるの。


「それが・・・で・・・」


 なんて?声がか細くて聞こえない。


「それがお手紙を頂いたのですが・・・」


 ふーん、誰からだろ?見せて、見せてとちびっこ二人はぴょんぴょん飛んで中を覗き込もうとしているが、あんまりそういうプライバシーに関わるものは勝手に見ちゃいけません。というわけで止める。しかし、ジル本人がこともあろうが、ルカに差し出した。


「え、いいの?」


「ええ、父と母にも相談しようかと思っているので、皆様に見せても問題ないかと・・・」


「それなら読もうかな」


 ルカは、手紙を受け取ると、軽やかに読み上げた。




「ジル・アレニウス殿へ

 突然のお手紙申し訳ありません。国に帰ってから、いても立ってもいられなくなり、筆を執った次第です。私の先日の行動は、貴女をとても驚かせてしまったことでしょう。それについては深くお詫び申し上げます。私のような大男が急に大声を出してしまい、怖がらせてしまいました。しかし、私の言葉に噓偽りは全くありません。全て本気です。私の脳裏には、可憐な貴女の姿が、焼き付いて離れないのです。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誠に勝手ながら、私の気持ちをこれからも貴女に伝えたい。これからも手紙を書くことを許して欲しい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 割愛したところには蜂蜜よりも甘ったるい口説き文句が書いてあった。文の最後には、アントン・アパリコフという署名があった。聞いたことあるような?というかこれ・・・


「これって・・・恋文ですわよね?」


「や、やっぱりそうなのですか?」


 察していたはずなのに七歳に指摘されて動揺するジル。大丈夫か?一方、スノウリリイとルカは二人して考え込むような顔をしている。


「アントン・アパリコフか・・・」


「一体この人何者なの?名前聞いたことあるような気がするけれど」


「この間のリオートの使者団の一人。皇帝の従弟で確か公爵」


 ああ、いたいた。あの真面目そうな大きい人だ。公爵なんだ。ジルに彼と何があったか聞くと、彼がワインが服にかかって困っていた所にたまたま通りかかり、染み抜きをしてあげたそうだ。そして、二度目にまたしても、たまたますれ違ったときには突然使節団の男たちも多くいる前で、求婚してきたのだ。プロポーズと大声でからかう彼らにびっくりしたジルはその場で逃げ出してしまったのだ。


「相談してくれて良かったよ。これ、兄上たちにも通さないといけないよ」


「え?そんなに大変なことなのコレ?」


「うん・・・。この人リオートでも特に偉い人。受け入れるのも断るのも大変。でも、それだけじゃなくて」

「ジルの正式な戸籍が森の国の実家に残っているのも問題」


「森の国は確実に色々口出ししてくるだろうね・・・厄介だ」


 森の国と実家からすれば大国のリオートの、しかも皇帝と親類になる機会を棒には振りたくないだろうね。侍女として残るために、貴族籍を持っていることが面倒なことになるなんて誰も思いもしなかっただろう。


「父と母が亡くなった時、何も助けてくれなかったのに、こんな時だけ親戚みたいな顔をするってことですか?」


「ああ、そうなるかもね。まだあちらに知られていないのが幸いだけれど」


 ジルは悔しそうに唇をへの字に結んだ。それを見たスノウリリイはぎゅっとジルの手を握った。


「わたしはまだジルと一緒にいたいな。ジルもローラももうすぐお嫁さんになる年だってわかっているけれど・・・いなくなったら寂しい」


「姫様・・・!はい、私もまだここで働きたいです。姫様とも父や母とも離れたくありません」


 そう言って、ジルはふんわりと優しくスノウリリイを抱きしめた。


「君の意志は分かったよ。スノウリリイを大切にしてくれている君を、陛下も悪いようにはしないだろう。君の母上の功績も大きいからね。今から話してくるよ。君もちゃんと家族に説明してね」


「はい、承知いたしました」


「ということで、マリア嬢のお見送りはスノウに任せてもいいかな」


「もちろん。ジルのことよろしくね、叔父様」


「ああ。マリア嬢も約束守れなくてごめんね」


「いいえ、わたくしのことはお気になさらず。とても有意義な時間でしたわ」


「帰ってきたら、また君たちのお茶会に混ぜてね。それじゃ、行ってくる」




 マリアとスノウリリイはルカを見送った後、二人で手を繋いでマリアの迎えの馬車の方に向った。


「それにしても今日は、二度も恋の瞬間に立ち会えましたわね。わたくし初めてですわ」


「恋の瞬間・・・そういわれるとそうなのかもね」


 少し納得いかない顔をしているがスノウリリイはマリアの言葉に頷いた。どっちも片思いだったけれどね。これからどうなるのかなぁ。


「恋って小説ではわかるけれど、自分ではよくわからないな」


「ええ、わたくしたちまだ子どもですから・・・ッ!!」


 急にマリアの言葉が止まった。ついでに足も止まっている。


「どうしたの?あ、お兄様」


「もう帰る所かい?」


 訓練の帰りなのか少し額に汗がにじむアルベルトが話しかけてくる。マリアはさっきまでの饒舌さが嘘のように黙りこくってしまった。よく見ると、耳の先が赤い。さっきのルカみたいだ。


「アルバス嬢、いつもスノウと仲良くしてくれてありがとう」


「いいえ、わたくしの方こそ仲良くさせて頂いて・・・」


「・・・・。」


「・・・・。」


 会話が続かない。将来的には悪役令嬢と攻略対象なんだから婚約破棄になるってわかっているけれど、やっぱり仲良くしてほしいなぁ。今のマリアは純粋にアルベルトのこと好きみたいだし。いや、ゲームのマリアも王妃になることに固執している感じだったけれど、本当はただ好きな人が取られたくなかっただけなのかもしれない。何しろこの可愛い女の子たち二人、掘り下げが少なすぎてその辺の事情が語られていないのだ・・・。アルベルトの方がどう思っているか知らないけれど、色々悪い方向に進まないと良いけれど・・・。


「それではまた」


「はい、失礼いたします」


 素っ気ない挨拶をして、アルベルトとは別れた。




 マリアは私の推測では今のところは、転生者とかではないと思う。正直、この世界に複数の転生者がいると知ってから、彼女が一番怪しいと思っていたのだが、私が見ている限りだとゲームから逸脱するような行動ややたら大人びているだのの印象はない。まあ、ゲームから逸脱しているのは私と女神様のせいなんですけれどね。そのルール違反に対しても目立ったアクションはない。これは本当に純粋にこちらの世界の人間とみていいだろう。悪役令嬢に転生ってよくあるやつだと思ったのになぁ。当てが外れた。彼女がもしゲームの記憶のある転生者なら、協力者になってもらおうかと思ったのに。


 今、こんなに仲良くなった二人。ゲームでは一切会話している様子はなかった。きっとこの二人は良い方に少しずつ変わってきている。今のマリアならば、スノウリリイに魔神を憑りつかせたりしないだろう。でも、それと同時にゲーム外の他の人・・・例えばジルやリオートの皇太子たち婚約者候補のように運命が変わった人もいるのだろう。まだ会っていないラスボスやメインヒーローのことも気になるんだよな。彼らの動きが何より怖い。


「ヴィー、私たちも戻ろうか」


 スノウがこちらを振り向く。それはかつての彼女ならあり得ないほど穏やかな顔だった。大丈夫、私のやっていることは間違いじゃないはず。こんな顔を見せてくれるスノウがいるんだもの。そう言い聞かせて、私もまた彼女に笑い返した。


アルベルトが久しぶりに出てきました。もっと出番増やしたいですね。叔父様ばっかり出てくるので。

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