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第五話 指切り

小鬼討伐を終え、土御門本殿の中へと朱夏と爺と一緒に入って行く。


「でかっ!!朱夏先生こんな凄い所で働いてるの!?」


晴明はキョロキョロ辺りを見回しながら感嘆の声を上げていた。


「ふふん!凄いでしょ!これから土御門の一番偉い人に会うから、行儀良くしなきゃダメよ」


「はい!」


「あっ晴明君、襟が曲がっているわ」


朱夏は晴明の襟を正す。自然と晴明との距離が近くなる。

朱夏の美人な顔が近付き晴明は照れて顔が赤くなる。


「ありがとうございます」


「ん?良し!さあ行くよ!」


そんな晴明の心情を知ってか知らずか、晴明の手を引きぐんぐんと本殿の奥へ進んで行くと目の前に大きな扉が現れる。


「ここに楼閣様が居るわ!楼閣様ー!朱夏ですー!晴明君連れてきましたー!開けますよー!」


急にデカイ声叫びながらノックする朱夏に晴明は目を丸くして驚いてた。


「あ〜聞こえとる!聞こえとるから入ってええよ!」


「ーーーでは私はこれで朱夏様、晴明様、またお会い致しましょう」


そう言うと爺の姿は何処にも見当たらなかった。


「あれ?急に居なくなった?」


「爺はね凄いのよ、悔しいけど私より強いんだから」


「朱夏先生より!?凄い!」


「それより、ドアを開けるから騒いだりしちゃだめよ!」


ドアが開くと純和風の部屋の奥に綺麗な黒髪で巫女服姿の女性が座っていた。


「良く来たね葛葉の護り子、いや名は晴明君やったかな?ようこそ、土御門へ。よう来たなあ、禅師の事はすまんかった。堪忍してや、今日小鬼見たやろ?どやった?おしっこちびってもうた?」


「えっとあの、漏らしてません・・」


「何や初めてみたのに、ちびらんかったのかい。腰は抜かしてたみたいやけどなあ?後晴明君、化け物とは言え殺しは殺し。初めて殺しをした感想はどうや?気持ちよかったか?それとも気持ち悪かったか?」


小鬼を殺した事実を唐突に突き付けられる。

晴明は気絶から目覚め、土御門家の広さに圧倒されその事を考えずに済んでいた。

その事実を目の前の女に指摘され、途端に恐怖が舞い戻り、晴明の身体は震え始める。


「何や殺した自覚もあらへんの?晴明君が殺した小鬼痛かったやろなあ?雷で身を焼き切られたんやから。うちやったらショック死してまうわ」


晴明の膝が崩れ、その場で小康状態に陥入る。


「ぼっ僕は必死で、死にたくなくて」


「そんなん当たり前や。小鬼かて殺されとうないわ、み〜んな同じや。そない簡単な事もわからんの?」


「楼閣様!いい加減に!「朱夏!黙っときい。これは大事な事や、口出し無用!」


「僕は僕が僕は僕があっあああ」


晴明は涙を流し、塞ぎ込んでしまう。

楼閣は塞ぎ込んだ晴明の髪を持ち、顔を強制的に上げさせる。


辺りに憎悪と怒りの気配が立ち込める。

朱夏はその強烈な気配に金縛りにあったように動けなくなっていた。


「ええか君の力はな、小鬼と同じ様に人を簡単に殺せる力や先ずそれを自覚しいや。魔物は間引かなきゃあかん。人間はな圧倒的に弱いんや君みたいに、誰も彼もが魔物を殺せる訳やない。弱い人を護る為に警察や自衛隊や土御門の様な陰陽師がおるんや。ええか、枠をはみ出したらあかん。護る為以外に力を振るったらあかんで」


髪を離し、晴明を抱き締める楼閣。


「ちーちゃい身体に身の丈に合わない力を持たされて難儀するやろな。土御門家が力になる、だからどうか力の使い方だけは誤らんでな」


楼閣の頭の中に声が響く


「(今回だけは許しましょう、でも〜今回だけ、今回だけよ。次に〜貴女が晴明ちゃんをまた虐めるならあ、存在事消すわよお)」


冷徹な声が響く


楼閣は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


「(人の頭の中に入って来んなや。貴女とやり合う程こちらは落ちぶれてないんや。この子にどんな運命強いる気や、間違いなく道半ばで心か身体が死ぬで!)」


「(なら貴女が護りなさあい。晴明ちゃんを死ぬ気で護りなさあい。いずれ来る深淵までねえ)」


「(何やいずれ来る深淵って!)」


「(これ以上は晴明ちゃんも私に気付いちゃうからあ、またねえ。分家のお嬢ちゃん)」


そう言うと楼閣の頭の中の声は消える。


(流石は葛葉やな。いらん事までよう気付きよる、深淵これについて調べなあかんなあ、あ〜めんどくさいわあ)


「いっ今のは!?楼閣様!ご無事ですか!?」


金縛りから解かれた朱夏が直ぐに楼閣と晴明の元へ駆け寄る。


「あー大事ない、大事ない。ちょっと子の力が強過ぎただけや。安心しい、とりあえずはもう大丈夫やから」


「はっはあ。あっ!晴明君には謝ってくださいね!私の弟子なんですから!虐めるのもだめです!」


「堪忍や堪忍や。そや、晴明君を本格的に修行させるなら学校はどないしよかなあ。う〜ん、うちに入る言うて学校側には連絡せなあかんなあ」


「晴明君が望むならですよね!?」


「もちろんや。けど晴明君は断らんよ感やけどな」


カラカラと笑う楼閣に朱夏は眉を顰めた。


「晴明君の意思が大事ですからね!」


「晴明君どうする?うちんとこに来る?」


「あのそのあの、僕はここに・・」


「ええよ。来てええし、居てええよ。さっき話した通り護る為に力を使うなら学ばしたる。どうや?約束できるか?」


楼閣は笑いながら、晴明に自分の小指を差し出した。


「はっはい。頑張ってみたいです」


晴明は楼閣の小指に自分の小指を絡める

楼閣は歌う様に言った。


『指切り かねきり 高野の表で血吐いて来年腐ってまた腐れ 指切り拳万 嘘ついたら針千本飲ます』


晴明が知っている、指切りげんまんとは違う歌詞で。


晴明と楼閣は古い古い約束の歌で指切りをした。


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