第四話 紫電
朱夏と土御門本殿を車で目指す
晴明は目隠しされていた。
「土御門本殿って何処にあるんですか?それとこの目隠しって一体?」
「場所は秘密なの。ちゃんと土御門の一員になるなら別だけどさ」
「なるほど、でも目隠しされて連れて行かれるってドラマみたいだ!」
何故か楽しそうな晴明。
「ーーー朱夏様、本殿から連絡です。鬼引きに向かって欲しいと」
「このタイミングで!?晴明君もいるのよ!?」
「ーーー私達が一番近く、神宮寺晴明様も一緒にお連れして我が土御門の役割を理解させよとの事です」
「修行もまだ始まってないのよ!?楼閣様は一体何を考えてるの!?」
「ーーーですが、命は降りました。拒否なさるおつもりですか?」
「はあ。わかった、わかりましたから!もう爺は!」
「ーーーでは現場に寄りますね、スピードを上げますので舌を噛まないでください」
車はスピードを上げ、現場に向かって行く。
「ぐえっ!」
「晴明君!舌を噛まないでね!爺はめちゃくちゃ飛ばすから!」
ぐんぐんスピードを上げあっという間に目的地の緑地公園に着く。
「ーーーでは朱夏様、晴明様ご武運を」
爺と呼ばれた人物は、黒塗りの鞘に入った刀を渡す。
「もう、爺がやればいいじゃないの全く」
緑地公園に人影は無く、小鳥の鳴き声すらしない。
空は晴れているのに、何故か暗い雰囲気を漂わせている。
「いるわね。小鬼ね。直ぐ終わるから晴明君見ててね」
公園の奥に、見慣れない緑色をした小さい化け物が三体居る。頭には角が生え、醜悪な顔付き。
まるで漫画やアニメに出てくる、ゴブリンの様な化け物。
「ひっ!おばっおばっけけ!」
「あれはお化けじゃなく小鬼よ。人を拐い、人を喰う生き物よ。人類の敵よ、私達土御門の陰陽師は弱き人を護る為に戦っているの。私の戦いを良く見ていて」
そう言うと鞘から刀を抜き、小鬼と呼ばれる化け物の方へ走って行く。
「《武神卸、武甕雷の術》」
朱夏は激しい雷光を纏い、朱夏の移動速度が跳ね上がる。
瞬く間に小鬼に詰め寄り、先ず一匹の小鬼を両断する。
一匹が一瞬にしてやられたと言う事実に他の小鬼達が騒ぎ出す。
『ぐぎゃっ!!ぐぎゃっ!ぐぎゃっ!』
小鬼が、朱夏を殺そうと飛びかかる。
「シッ!」
小鬼を空中で突き刺す。
「甘い!」
『ぐげえ』
小鬼を刺し殺し、もう一匹の小鬼を見る。
だが残った小鬼は朱夏を脅威とみなし、標的を晴明に定め襲い掛かる。
「ひえっ!こっちに来た!嫌だ!来ないで!」
晴明は腰を抜かし動けない
「嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!」
『ぐぎゃっ!!ぎゃぎゃ!』
小鬼はまるで晴明を笑っているようだった。
「くっ!晴明君今行くわ!!!」
朱夏は晴明を助けるために走り出そうして止まる。
「なっ何あれ!?」
朱夏は見た晴明の手に宿る並々ならぬ巫力を。
「嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!来るなあああああああああああ!!!」
半狂乱になりながら突き出した晴明の手に大きな音を立てて紫電が走る
バチッバチチチチチチチチチチ
晴明の皮膚が紫電により捲れていく。
「ふうっ!ふうっ!ふうっ!」
晴明の息が荒くなる。
小鬼はそんな晴明に構わず、どんどん晴明に接近していく。
この雷なら小鬼を倒せるかもしれない。
「くっくらえええええええ!!!!」
バチチチチチチチチチチチチチチチチ!!
『ギェエエエ!!』
小鬼の醜い悲鳴が響く。
晴明が手から放出した紫電が小鬼を引き裂き
焼き殺した。
「晴明君!大丈夫!?怪我は!?」
晴明はその場で倒れる様に気絶していた。
腕には火傷の痕がついていた。
「皮膚が焼ける程の雷を手に纏う何て無茶苦茶よ!
さっきのは術?術だとしたら呪文は?あの巫力は?凄い凄すぎる!私以上よ!でも一撃撃って気絶何てピーキー過ぎるわ、何とかコントロールしてあげないと。あっそれより爺!爺!晴明君に手当てをして!」
「ーーー承知しました」(これが葛葉に選ばれた護り子の力の一端とは。何とも凄まじいですな)
爺は手際良く、晴明の手当てをしながら考えていた。
(楼閣様や朱夏様の力になって頂けたら、幸いですな。あの巫力が本人の物か、葛葉の物かは測りかねますが)
「ーー-これは・・・」
手当てをしていた手を止め思わず言葉を無くす爺。
晴明の手の傷は異常な速度で塞がり始めていた。
「どうしたの!?爺!!爺!!」
「ーーーもう手当ての必要がありません」
「えっ!嘘!」
朱夏は晴明が助からないと思い、顔を真っ青にした。
「ーーーいえ、その逆です朱夏様、もう傷が塞がり始めているので、後数分もすれば完全に治ると思います」
「そんな事有り得るの!?いくら巫力が凄くても」
「ーーー私にはわかりかねますが、楼閣様なら何かわかるのではないですか?」
「そうね!どの道、土御門本殿に行くんだし聞いてみるわ!」
晴明を背負って車へと歩き出す朱夏
「ーーー私が背負いますが?」
「いえ!駄目よ!私の大事な弟子何だから!彼を傷つけないって約束をご両親と約束したのに、破ってしまった罰よ。私がカッコつけないでもっと早く倒していれば!」
ぐっと刀を握る手に力が入る。
「私も強くならなきゃ、先生として弟子を護れる様に」
背中に感じる、晴明の暖かさを背に感じ朱夏は改めて強く、強く誓った。