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第壱話 誓約の呪

神宮寺宅前


「佐藤さんこの家ですか?」


黒いスーツを纏った、黒髪ショートの女性が言う


「ああ。凄いなこりゃ、普通に暮らせてるのが驚きだ。葛葉に気付かれずにって訳にはいかないだろうな」


「ええ。二階の奥の部屋から凄い神気の高まりを感じますね、十中八九気付かれていますよ」


「面倒だな、神の力かあ。診て見ないと分からんが、持ってきた呪符じゃ足りないかもなあ。場合によっては一時撤退して、御伺いをたてなきゃな」


「佐藤さんがそこまで言う程ですか。私いります?いりませんよね?私自宅待機しています」


くるりと神宮寺宅に背を向け帰ろうとする女性


「おい。誰が帰って良いと言った?帰っても良いが」


佐藤はニヤリと笑い


「減俸処分プラスで降格処分何てならないと良いなぁ恵理菜。今月ピンチなんだろ?」


「死んだら怨みますからね!絶対絶対呪ってやる!」


憤慨する恵理菜を無視し神宮寺宅のチャイムを押す


ピンポーン


直ぐにドアが開き神宮寺夫婦が迎え出る


「お待ちしてました、すみません夜分遅くに御足労頂いて」


「ほんとでっあ痛あい!」


足を佐藤に踏まれ、ぴょんぴょんと跳ねる恵理菜。


「すみません、躾が悪くて。息子さんは二階ですか?」


「はい。あの何故息子が二階に居ると」


「まー企業秘密です。感じると言えばいいんでしょうけど」


「はあ。とりあえず中へどうぞ。」


「失礼します。」


「お邪魔します」


二人は神宮寺宅に入る。二階から猛烈なプレッシャーを受ける。まるで首根っこを掴まれ押さえつけられるような強力なプレッシャー。


「これは中々。早速ですが、息子さんを呼んで頂けますか?なあに彼も気付いていますよ。私どもが来た事に」


佐藤の言葉に首を傾げながら呼びにいく。


「晴明ー!」


晴明の部屋を開けると、布団を被り震えていた。


「嫌だよ。僕行かない、降りない、居ないって言ってよ」


「晴明、お前気付いていたのか?誰が来たのかわかっているのか?」


「絆を壊す人」


「絆?なあに父さんが何かあったら追い返してやる。だからな話だけでも聞きに行こう」


「嫌だよ、嫌だ」


駄々をこねる晴明に父はどうしたものか思案していた。


「お~う。随分とまあ怯えてるじゃないか、晴明君」


佐藤が父の後ろから晴明に声をかける。


「ひっ!」


「ちょっちょっと!私が呼びに行くまで待っててくださいよ!」


父が佐藤を押し返そうとするが、するりと佐藤は身を躱し逆に父を部屋から閉め出す。


「さて、話をしようか、晴明君君は私達が来た事にいつから気付いていた?」


佐藤の冷たく鋭い眼光が晴明を射抜く。


「あっあの、家の前で話していた時から、です。」


晴明は怯えながら言った。


「私達は気配を消していた。それこそインターホンを押す直前までね。晴明君外の光景も見えていたんだろう?」


「あっあのその」


「ああ怒っている訳ではないよ。これは大事な確認作業だよ。晴明君、すまないが背中を見せて貰えるかな?」


「えっ?」


佐藤は素早く晴明を押さえつけ、背中を捲る。


晴明の背中には葛葉の神紋が刻まれていた。


「ちっ!神紋がこんなにはっきりと浮かび上がっているのか。おい、葛葉と契約したのか?」


「契約?してない」


晴明には契約が何を指しているかはわからなかったが、確信があった。この暴力的な男性はきっと葛の葉との絆を脅かしに来たのだと。


「契約でもしなきゃこんなにはっきりと神紋は」


佐藤は言葉を言い終わる前に、何かに吹き飛ばされドアに叩き付けられる。


「葛の葉の力か凄まじいな。退魔の服で来て良かったぞ」


「帰って!葛の葉さんは僕を護ってくれたんだ!僕は葛の葉さんが大好きなんだ!」


「ふう。やれやれこれは骨が折れるなあ。恵理菜!手伝え!ドアの前に居るんだろ!」


ドアが開くと恵理菜と呼ばれた女性が入ってくる。


「もう、私の仕事はしましたよ?お母さんとお父さんにはお部屋で眠って頂きましたし?私この中に入るのきついんですけど」


「お父さん?お母さん?」


「大丈夫だ。怪我はさせていない、ただ眠って貰っただけだ。恵理菜、一番と二番だ」


「えーあの子達ですか?制御出来るの10分だけですよ?」


「10分あれば良い、式を組める」


「はーはいはい。僕痛い思いしたくないなら動かないでね?いきなさい、《一尾二尾》」


一尾二尾と呼ばれた、異形の化け物に晴明の身体は押さえつけられる。

佐藤は手を素早く動かしている。


晴明は直感的に佐藤を止めなきゃ不味いと思った。


晴明の口は晴明の知らない呪を紡ぐ


「晴明の名に置いて命ずる 《朱雀・玄武・白虎・勾陣・帝久・文王・三台・玉女・青龍 》災厄を祓い、彼の者達の動きを封じよ」


「ちっやばい!」


「きゃっ!」


二人は回避行動も虚しく、黒い縄に捕縛される。


「「あらあら~晴明に手を出すのはやめなさあい。土御門の命なのかしらあ?」」


晴明の口から晴明の声ではなく、女性の声が響く


「葛葉か!放せ!晴明君を依り代にして何をするつもりだ!」


佐藤が声を荒げるが、葛の葉は意に介さない


「「何をするつもりも、晴明ちゃんを護る為よお?貴方達は私と晴明ちゃんの絆を断ち切ろうとしてるみたいだけど、晴明ちゃんを泣かすなら」」


さっきまでの優しい声色が無くなり辺りに冷たい空気が張り詰める。


「「土御門の子孫達に償って貰う。誓え晴明に二度と手を出さないと」」


この場で大量の人間を殺すと、淡々と言い放つ葛の葉


「くっそ」


「「そう、誓わないなら先ずは」」


葛の葉が恵理菜へ視線を向けると恵理菜を縛る縄がどんどんときつくなる


「「見せしめにこの女を殺す」」


「ぎっぐるじいい、ばなじで、ばなじでよおお」


余りの締め付けのきつさにジタバタと暴れる恵理菜。縄は解けるどころかどんどんきつくなる。


「わかった誓う」


佐藤は苦々しい顔をしながら言った。


「「葛の葉の名に置いて命ずる 《朱雀・玄武・白虎・勾陣・帝久・文王・三台・玉女・青龍 》誓約の呪」」


佐藤と恵理菜に強烈な痛みが襲う。


「「良かったわあ。晴明ちゃんの身体で殺しはしたくなかったのよお。でもこれを破れば死ぬわよお。ねえ、土御門で晴明ちゃんに力の使い方を教えてあげてねえ。土御門の頭首の子には私から伝えてあげるわん。あの子の事だからみてるだろうけどお」」


クスクスと笑う葛の葉、佐藤と恵理菜に拒否権はなかった。


「わかった、頭首に話をつけるならそれで良い。この拘束はうぐっ」


「「貴方達はこれより、晴明ちゃんの家臣よお。口の聞き方に気をつけないとお死んじゃうわよお?」」


「ぐっ!わっわかりました。ご家族には追って土御門家から連絡がいくように手配します。」


「「はあい、じゃあもう2人共帰りなさあい。」」


二人は息も絶え絶えになりながら、神宮寺宅を出て行く。


「それにしても、晴明ちゃん凄いわあ。私の力抜きにあの男を吹き飛ばすなんてえ。これなら抗えるかしらあ」


葛の葉は晴明の顔を優しく見つめる

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