第十七話 地獄
「ここは何処だ、俺は一体どうなったんだ」
真っ白な世界に独は居た。自分の身体は知覚出来るがあたりは白一色。
「君は私の神紋を持つ愛子じゃないか、どうして急にこちらへ来た? 」
何処からか聞こえる、優しく清んだ声。
「あっ俺は」
「良い。心を見させて頂く」
「ふむ悠と葛の葉の差し金か、無茶をしよる。私の神紋でなければ、良くて失明か心神喪失、悪くて命を落としていたぞ」
「マジすか・・・確かに気絶する前眼がめちゃくちゃ痛かった・・・・」
「血の涙が出ておるよ。愛子をこんな目に合わすとは文句を言わなければならないな」
「あの、失礼ですが貴女の名前は? 」
「八大龍王又の名を善女龍王だ。私の姿は未だ見えぬだろう。修練を積み、いつか君の方から私に会いに来て欲しい。私の力は存分に使うと良い」
「あっありがとうございます! 」
「いついかなる時も私は君を見て君を護っている事を努努忘れないで欲しい」
♢
「くっここは? 」
「やあ、独君。良く帰ってきたね、お帰り」
悠が笑いながら声をかけて来る
「悠さん! 俺八大龍王様に聞きましたよ! 俺死ぬ所だったて! 」
「それが何か? ノーリスクで力を手に入れられる訳ないでしょ? 」
あっけらかんとした態度で話す悠
「独君はこれから、空島さんとマンツーマンで亜空で修行ね。死ぬかもしれないけど頑張ってね」
「ちょ! 」
独は問答する間もなく亜空に放り込まれた。
「悠さん・・・・ちゃんと説明した方が」
晴明がおずおずと悠に尋ねる
「もう僕がこちらに居る時間が無いんだよ、残念ながらね。それと晴明君にはスペシャルハードな試練になっちゃうのは許してね? 」
「スペシャルハード? 」
「そっ八大地獄に行って閻魔様に認めて貰うツアーだよ。葛の葉の意見や力は挟ませないからね」
「では、行ってらっしゃい。元気でね、二度と会う事が無い様祈っているよ」
悠は悲しい顔をしながら晴明を地獄に落とす。
「葛葉、済まないね閻魔には話をつけてあるから。とりあえず地獄に肉体と魂毎隠せばまだ異界には見つからない筈だよ」
「あらあら、でも悠良いのかしらあ? 魂にヒビが入り始めてるわよ」
「かなり無理してるからねえ、だけど僕はまだ死なないよ」
「気をつけなさあい、でもありがとう悠・・・」
葛の葉は御礼だけ良い悠の側から姿を消した。
「彼を異界に引き渡すのはまだ早いからね、さあこれからだよ、晴明君。願わくば君が平穏に暮らせるように」
♢
晴明は寂れた場所に佇んでいた。空は曇天、大地は荒れ果てていた。
「ここが八大地獄? 」
「正確には等活地獄だよん」
晴明の側に小さな式鬼が現れた。
「攻撃しないでねん? 悠様の使いで地獄の案内をするだけだから」
「ここはどんな罪が・・・」
「殺しだよ、君も沢山魔物の命を奪ったでしょ? だから先ずここからスタート。獄卒達との殺し合いに勝てば次の地獄へ。負ければ永遠の死が訪れる簡単だろ? 」
「殺し合いって人を殺すの? 」
「そう言う地獄だし、今更気にする事? あれだけ魔物をゲームの様に倒したんだからさ。ここもゲームだと思えば? 相手は幽霊だし」
「いっいやだ! 」
「じゃあ死ねよ。悠様がわざわざ修行場に連れてきた意味もわからず、獄卒に嬲り殺されなよ」
式鬼の空虚な視線が怖かった。
「お前は本来死ぬ運命を、葛の葉様と悠様に助けられて今辛うじて生きてるだけだ、だからここで今死んでも問題無い」
「さあ! 獄卒達よ、ここに大量の魔を殺した張本人が居るぞ! 殺せ! 」
式鬼の声が響くと、辺りから目の無い白い着物を着た亡者と二メートルはある鬼が大量に現れた。
「「「殺す、殺せ、殺して」」」
「さあどうする? 囲まれたよ? 殺さなきゃ殺されるんだよ? どうする? 自害する? 」
「ひっ」
晴明はその場で身構えた。
「殺さなきゃ、殺される? 何でどうして・・・・・・」
「さあさあ、時間は無いよ」
「うああああああああ! 」
晴明は絶叫しながら九字神刀を出し構えた。
「やらなきゃ死んじゃうんだ・・・・やらなきゃやらないと」
晴明の心の中はめちゃくちゃになっていた
「このガキデタラメな巫力だな、悠様や葛の葉様が目をかける訳だ」
晴明は迫り来る亡者を斬り裂いた
「あ・・・・り・・・・が・・・・・・と」
亡者から感謝の声が聞こえた
「何で! 斬られて御礼を言うんだよ! わああああ!!」
晴明はどんどん群がる亡者達を斬り裂いて行く
「くそ! くそおお! 」
斬る度に穏やかな顔で御礼を言われる。晴明の精神は崩壊しかけていた。
「はあ、このまま壊れたんじゃ意味ないですからねえ。晴明さん亡者達には救いなんですよ、貴方に斬られたら殺し合いの地獄から消えられる。だから彼等を救うには斬るしか無いんですよ」
式鬼の声が届いたかどうかはわからないが、晴明の剣速が上がり鋭さを増していく
「ごめんなさい・・・・ごめんなさい・・・・・」
晴明は謝りながら斬り裂いていく、亡者達は消え獄卒達も又晴明に倒され消えていった。