第十四話 心を燃やせ
純白の光を帯びた、刀。鞘は無く、鍔すら無い。
一振りで結界を破壊する威力と神々しい光。
「独、今行くよ!!」
刀を持ち走り出す、友人を助ける為に全力で。
「破っ!!」
一振りで、ゴブリン10体を纏めて斬り裂く、ゴブリン達の血を身体中に浴びる。
晴明の刀には一切の血や汚れはつかなかった。
ぶっ格好な構えでゴブリンを右薙、右斬上、左斬上、左薙、逆袈裟と連続して斬り技を放ち斬り伏せていく。
「独!大丈夫!?」
「ああ!まだまだいけるぜ!」
肩で息をしながら、独は答える。
後方に控えているゴブリンは明らかに前方に居た者とは、体格も威圧感も違う。
「独後ろのがボスだ!」
「おう!行くぜええ!!新技、焔斬!」
火真剣に巫力を込め、振るう。焔の斬撃が焼き斬りながらボスへ向かう。
「・・・ニヤ」
嘲笑い、ボスは持っていた大剣を振るい焔斬をかき消す。
「えっ!?まじかよ!!くそっ!」
「僕が行くよ!破っ!」
ボスに斬りかかるが、難無く大剣で防がれ後方へ弾かれる。
「グウアアアア!!!」
ボスの咆哮を聞いた瞬間に、2人の動きが金縛りにあったかのように、強制的に止められる。
「ぐっうっ動けねえ」
ボスは手前にいた独を狙い、大剣を振り下ろす。
(独が死ぬ?このままじゃやばい!どうしたら)
「ーー私の声が聞こえるか?聞こえるな、これを今すぐ唱えろ!心を燃やせ、敵を穿て、心身を掛けて、両断せよ!!」
今まで聞いた事がない、優しい女性の言葉が聞こえた、何故だか勇気が出る。
晴明はその女性の言葉を力強く吠えた
「心を燃やせ!敵を穿て!心身を掛けて!両断せよ!九字神刀、鬼殺斬!」
金縛りが解け、身体の自由が戻った。
更に九字神刀の刃が大きくなり、鬼殺斬の掛け声と共に敵を両断する。
「やった!やったあああああ!!」
勝利の咆哮をあげる晴明に飛びつき、晴明の頭を撫でまくる独
「晴明、お前それなんだよめちゃくちゃ強いじゃんかよ!」
♢
地球では無い別の世界の洋館、晴明達がゴブリンと戦い出す少し前の時間。
「悠、それでさ葛葉さんが選んだ子ってどうなったん?強いの?」
「弱いよ?鷹島さんよりかなり弱い」
「まじかあー、何か含みがある言い方だなおい!その子大丈夫か?もう選ばれちゃったんだろ?」
鷹島と呼ばれた一見チャラそうな茶髪の青年、服は黒いローブをまとっている。
悠は困った様に肩をすくめ鷹島を見る。
「曰く晴明君は特別なんだって。出来るなら地球で天寿を全うして欲しいらしいけど、晴明君は何れ異界に引き摺り込まれちゃうんだって。その前にせめて自力を上げなきゃならないんだってさ」
「あー悠質問だ、お前が式神やら十二神将の誰かを側に付けてやればいいんじゃないか?神ならゲートいらんだろうし」
「それが無理なんだよねー。色々制限があるみたいなんだよ、それに多分僕よりも強い奴が控えてるみたいだし」
「悠より強いってそれ無理ゲーじゃない?」
苦笑いを浮かべる鷹島
「そもそも僕自体は晴明君に特に思い入れは無いしね。死のうが生きようが彼の自由だよ、だけど彼は良しとしないんだよ。自分でやれば良いのにさ」
頬を膨らませ拗ねる悠
「拗ねんなよ、最悪あの英雄が来てくれんじゃ無いか?弟子と一緒に」
「それはどうだろう、僕はあの人嫌いだ。いつも子供扱いするし、暑苦しいし」
「こら悠。大和さんにそんな事を言うもんじゃないぞ?私達は彼のおかげで命拾いしたんだ。命の恩人を無碍に扱うんじゃない」
凛とした声で悠を叱る、女性。黒い髪ポニーテール160センチスラリと長い足、引き締まった身体。
「空島さん帰ってきたんだ!おかえりなさい!どうだったSランククエストは?」
「ただいま、簡単なクエストだったよ。モンスターの討伐だけだしな。それより悠露骨に話を逸らすんじゃない」
ピシャリと言う空島にひらひら手を振る鷹島、悠は指摘されふてくされた。
「華お帰りー。今は晴明君だよ、星龍が亜空の試練の間に落としたみたいだけど大丈夫かな?悠専用に作ったからそこそこエグい仕様だぞ?悠は直ぐにクリアしやがったが」
悠の頭をグリグリする鷹島
「鷹島さん痛いって。僕はまあある意味二人三脚だったしね。大丈夫じゃないかな?星龍も居るし。亜空で死なせはしないよ多分」
「晴明君か、私も会ってみたいな。鷹島は亜空に行けば会えるんだろう?」
「ん?星龍が居ないと今は無理。あれそんなに便利な空間じゃないし、それに星龍の魔力がゲートキーになってるからね」
「何だじゃあ私は無理か」
「声をかけたり様子見位はできるよ見る?」
「ああ!是非見せてくれ」
鷹島は壁に亜空の状況を投影する。
「何だあの剣の振り方は!誰も教えてないのか!ああ!危ない!そこだ避けろ!良いぞ!今の体捌きは上出来だ!」
「華、うるせえよ!興奮すんな!」
「あっピンチだ!昇!私の声を向こうに伝えさせろ!」
「あーうるせっ!わかったわかった。はいどーぞこのマイク型魔道具に向けて話せ」
「あー!テステス、本日は晴天なり、本日は晴天なり、私を世界一の武人なり。良し良いぞ!私の声が聞こえるか?聞こえるな、これを今すぐ唱えろ!心を燃やせ、敵を穿て、心身を掛けて、両断せよ!!」
「晴明君、咆哮から抜け出せたね、空島さんその掛け声って何かの呪文なの?」
「おー!!やった、ボスが真っ二つだ!ん?今のか?私の好きな戦隊ヒーローの必殺技を撃つ為の前口上だぞ!」
空島はドヤ顔していたが鷹島は唖然としていた。
「おまっあのピンチの状況に何を言ってるんだよ!よりにもよって戦隊ヒーローって」
「私の言葉を彼は叫んで、動けたんだから良いじゃないか?」
ギャーギャー2人は言い合っていた。晴明は遠い目をしながら呟いていた。
「はははは、晴明君良く動けたね、良かったよ(今度会ったら謝ろう)」