第2章 追放の旅路
第2章 追放の旅路
男の子には、悲しい気持ちはどうしようもなかったが
3人の兵士たちの表情も、それぞれに重々(おもおも)しく暗かった。
村を出て国境へ向かう道中は遠かった。昼は歩き、夜は町や村にとどまって宿に泊まった。
まだまだ子供の男の子には、ずいぶんとしんどい旅だった。
兵士たちの隊長はいささか年を取っていたが、年齢を感じさせない足取りであった。
隊長は、しばしば男の子に対し、足が痛まないかどうかや疲れ具合を尋ね、声の調子や様子を見て、時には旅の日程を切り上げて、手前の村で早めに宿をとることもあった。
そして、一行は、森を抜け、大河にかかった橋を渡り、湖を超えた。
道中、中年くらいの兵士は、男の子に呟いた。
きみを逃がしたら自分たちやその家族がひどい目に合わされるだろう、ひょっとしたら、きみの村の人たちまでひどいことになるかもしれない、と。
隊長は、中年の兵士に、手の平を示し、「おい」と声をかけて、それ以上の話を制止した。
いよいよ国の端までやってきた。
暗い森の中を進んでいくと、小川が流れていた。小川は太陽の光を浴びてきらきらと輝いていた。
隊長は男の子に重々(おもおも)しく告げた。
この森をあちらにずっと歩いていけば人間の国につけると言われていると。
そして、私は行ったこともないから分からんがな、と静かに付け加えた。
他の兵士たちも固い表情で男の子を見つめている。
男の子はくるりと回って兵士たちに背を向けると、そのまま言われた方向に向かって力強く駆け出していった。川の手前には、左右に、二本の木が、途中でくっついてまた離れる、×(ばつ)のような不思議な姿をして立っていた。
男の子は、その木々(きぎ)の間を通り、小川を飛び越えてその先に続く森の中、見慣れない木々(きぎ)の木の葉からこぼれ落ちる日の光を浴びながらさらに進んでいった。
すると不意に開けた場所に出た。