エピローグ 〜レナちゃんとやさしい動物たちのその後〜
「おばあさん、そのあとその子はどうなったの?」
真っ赤なバラの咲き誇る庭のテラスで、午後のティータイムを孫娘と楽しんでいたおばあさんは、催促されるままにその続きを語ります。
「風邪をひいてね。高熱で寝込んでしまったのよ」
「かわいそう」
「そうでもないよ。その子のそばには、ふたりのお友達がずっと付き添っていたからね」
「亀と鷲のこと?」
「ええ。ふたりは、女の子が大人になってからも、しっかり支え続けてくれたのよ」
「へえ」
その時、ピンポンという音が鳴りました。
「あ、おかあさんだ!」
叫ぶと、孫娘は椅子から降りて玄関に向かいます。ほどなく、玄関からははしゃぐ孫娘の声と、それにこたえる明るい女性の声が聞こえてきました。
その声を微笑ましく思いながら聞いていたおばあさんは、立ち上がると庭の片隅に積まれた石がある場所まで歩み寄ります。
「カメさん、ワシさん、あの時はありがとうね」
おばあさんは語りかけました。よく見ると、ひときわ大きな石には、「ワシさんのお墓、カメさんのお墓」と書いてあるようです。
「私が25歳の時だったわね。ワシさんが死んでしまって、その数ヶ月後にカメさんもあの世に旅立ってしまった。最初はあんなに仲が悪かったのに、いつの間にか大の仲良しになって…。死ぬ時まで一緒だなんてね」
おばあさんは、空を仰ぎ見て言いました。
「カメさんとワシさんが死んでしまって寂しかったけれど、その後すぐに私は結婚したの。よい旦那様に恵まれたわ。私は一人娘だったから、婿としてこの家に入ってくれてね。そんなあの人も二年前に死んでしまった。次は、私の番かしらね」
そこへ、ぱたぱたぱたと、軽快な足音が聞こえてきました。
「おばあさん!」
孫娘です。その隣には優しそうな女性が付き添っています。
「今日ね、私の誕生日だから、お母さんが誕生日パーティーをやろうっていうのよ。おばあさんも出席してね」
そう言って笑う孫娘。おばあさんは、ちらりと墓石に目を向けました。すると、ふいに天からひと筋の光が差し、石のひとつひとつがきらきらと輝きを放っているようでした。おばあさんには、それが、カメさんとワシさんがにこにこと笑っているように見えたのです。
「そうね。私は、もう少しだけ、あの子の成長を見届けてからいくとしようかしらね」
ひとりごちると、首を傾げている孫娘のもとに歩み寄り、麗娜おばあさんはその小さな手をとったのでした。