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プロローグ 〜雨と風と雷と小さな女の子〜
その日は、朝から雨が降っていました。
真っ黒な雲が重く垂れ込み、時折、カミナリさまの太鼓の音が辺りにこだまします。
風も強くなってきました。
河原に吹く風はひときわ強く、びゅうと吹き荒れては、小さな女の子の横を吹き抜けていきます。
「もうむり…っ」
真っ赤なスカートをはためかせながら、女の子はその場にしゃがみ込んでしまいました。その手には、真っ赤な傘の柄を握りしめています。ですが、傘の骨はぽきりと折られ、もはやその役目を果たせるような状態ではありませんでした。
哀れな女の子の頬を雫が伝います。
それは雨なのか。それとも、切なさゆえの涙なのか…。
もうどうしたらよいのかわからず、大声をあげて泣き出しそうになったその時です。声が聞こえました。それも、助けを求める声です。
「だれ…?」
女の子はすっくと立ち上がると、それまでの悲しさも忘れて辺りに問いかけます。これでひとりじゃなくなるかもしれない…その思いから、女の子は懸命に声の主を探しました。けれども、なかなか見つけることができませんでした。