第二話 ウヌイの葉っぱは何人乗り?
さて、浅瀬に葉っぱの舟を浮かべた小人たちは、沈んだり、底が抜けたりしないか確かめるために、岸辺の小石の上から一人ずつ飛び乗りました。
太っちょの子供は、松の種に松葉をさしたかいを持って、舟の真ん中に陣どりました。この子はみんなの中ではちょっとした大将で、名前はムスビといいました。
さっきお祈りを唱えた、やせっぽちの子供は、船尾に座って、「やれやれ。」といいました。彼は看板屋のタクの息子で、ケラという名前です。ケラに寄り添って、さっきからにこにこ笑っているのは、ユニオという子で、彼はケラの四つ違いのお兄さんです。色白で、めったにしゃべらない、とてもおとなしい子です。
そして、船首に並んで立っているのは、黒髪を伸ばした背の高い男の子の方がウタオで、亜麻色の髪の小柄な女の子の方がツキヨといいます。ウタオは、お父さんに作ってもらった自分のポロン(三味線のような楽器)が自慢で、お祭りのときには、それをみんなの前で弾いて聴かせます。ツキヨは、子供の中では一番の歌い手で、やっぱりお祭りのときは、ウタオの伴奏に合わせて、みんなの前で歌います。小人たちはみんな音楽が大好きなので、二人の歌や演奏が始まると、めいめいに葉っぱで作ったうちわを持って踊り出します。
今日は、ウタオがポロンを持って来ていないので、ツキヨも歌わないかも知れませんが、川下りは用心が必要ですから、こうやって手ぶらで来たとしても、仕方がありませんね。
では、話を舟の上に戻しましょう。
舟のまん中に陣取ったムスビが、かいで岸の小石を突きながら、「帆をあげろ!」と言って、舟を流れに押し出しました。
ケラが、舟の上をくまなく見まわしてから、「どこに帆があるのさ。」と聞きました。ツキヨが「帆を張ったって思った方が気分が出るでしょう。」とこっそり教えたので、ケラはなるほどと思って、手を手繰って綱を引くふりをしながら、「帆を五枚も張ったぞ!」と言いました。
舟はするすると流れをくだって、ススキの葉のトンネルをくぐり、白い花がたくさん咲いたハコベの林のそばを通り、やがて村の外れのカラスムギの森の近くまで来ました。
森の傍らに、先日の雨で生えたらしい、一本のひょろ長いキノコが立っていました。一人の小人が、その幹を貝の刃で切り取って、タンポポの皮で編んだかごに集めていました。
小人は川下りをする一行を見付けると、岸辺の石にのぼって、手を振りながら、
「川下りしてんのかぁ。」
と聞きました。ウタオが、
「そうさぁ。スッカラン村まで行くんだぁ。」
と答えると、
「おれも乗せてってくれよぉ。」
と、川岸の小人が頼みました。でも、その時には、舟はもうずいぶん下流に流されていましたし、
「ウヌイの葉っぱは五人乗り!」と、一行から、声をそろえて断られたので、川岸の小人は、「次は六人乗りの葉っぱにするんだぞぉ。」と叫んでから、残念そうに、舟が遠ざかるのを見送りました。
つづく