第十二話 【最終回】 メンボー!小人たちの宴はつづく
そして、無人島で新しい舟を見つけたケラが、風のいたずらで、小舟にぶらさがったまま空に舞い上がりそうになったくだりでは、まるで自分たちがそんな目にあっているように、「ひやー!」といっせいに声をあげました。
さらに、荒れ狂う魚道の急流をくぐり抜けて、とうとうレンガ道でケラを探し当てて、五人そろって新しいスッカラン村にたどり着くことができた、というところまでを話し終えると、みんなはやっと肩の力を抜いて、ぐったり椅子にもたれかかり、深いため息をつきながら、「無人島に流されたときには、もうだめかと思ったな!」とか、「さいしょのマールマールで、わしはすっかりあきらめてたよ!」などと、感心しきりで語り合いました。そしてその騒ぎがおさまると、みんなは、「もう一回聞かせておくれ!」と、机やお皿をドンチャン叩きながら、声をそろえて何回も何回も言うのでした。
ですから、アンチャン村の子供たちは、同じ話を繰り返し三回も、スッカラン村の小人たちに、話して聞かせなければなりませんでした。
やがて、三回目の冒険談も語り終えて、ムスビがきっぱり、「これで、おしまい!」と言うと、村人たちはようやく満足したようすで、小さな冒険者たちに、さかんな拍手や、「メンボー!」という、かっさいの言葉を、割れんばかりに送りました。クンダリさんも立ち上がって、「いやはや、この上なくすばらしい冒険談をご馳走になったじゃ。そして、おまえさん方も、わしらが腕によりをかけた、心づくしのご馳走をたらふく食べて、すっかり大満足と言ったところじゃろう。そこでじゃ、今から歌と踊りと、とりわけゆかいな音楽で、腹ごなしをしたいと思うが、ご都合はいかがかな?」と聞きました。
もちろん、アンチャン村の子供たちに異存はありません。
「さあこれを使うんだよ。」
アシホさんがウタオに、栗の実の皮で作った、ポロンにそっくりなモロンという楽器を貸してくれたので、ウタオは大喜びで、歌い手のツキヨといっしょに、スッカラン村の楽手たちが座る小枝の長椅子のまん中に加わりました。
「ぽいぽぽいぽい!」
アシホさんの掛け声で、息の合ったさわがしい演奏が始まりました。さわがしいといっても、人間にとっては、せいぜい小さなかねたたきの合奏くらいでしたが、小人たちはその時々の気持ちを音楽にするのがとても上手なので、こんな風にうれしい日に奏でるなら、踊りの大好きな小人はもちろん、はずかしがり屋の小人も、おすまし屋の小人も、のんびり屋の小人も、つられて踊り出さずにはいられないくらい、格別に面白い演奏になるに決まっているのでした。
やがて、小枝の上に立ったツキヨが、一番星のかがやく藍色の夕空を見上げて、鈴のように澄んだいい声で、こんな歌を歌いはじめました。
『大きなもののかえりみぬ
野の片隅に
蘇りぬ
うつくしや
うつくしや
小さきものの造る郷!』
ウタオがモロンを爪弾いて、ツキヨの歌声を美しく飾ったので、みんなは、「ぽいぽぽい!」とか「メンボー!」とか、感に堪えないといった合いの手を、さかんに入れました。
音楽や踊りは、川向こうから顔を出したまんまるな月明かりに照らされて、ますます陽気に、ますますさかんになって行きました。
やがて、夜が更けて、空に大小のきら星がまたたき出すと、眠たくなったケラは、踊りの輪から少し離れた、静かな木陰に行って、枯れ枝に腰かけて、大きなあくびを一つやりました。
すると、ケラよりも小さな子供たちが、五、六人集まってきて、ケラの前に並んで座りました。
「さあ、いい子はもう寝なきゃいけない時間じゃないの。」
ケラは自分のお母さんのまねをして、子供たちに言いました。
ところが子供たちは、
「眠る前に、もう一度、お空を飛んだお話をして!」
と、声をそろえてケラにせがみました。
ケラは仕方ないなと言うように、ふんふんとうなずくと、これまでアンチャン村や、スッカラン村のみんなの前で、さんざん話した空でのできごとを、もういっぺん、子供たちに、話して聞かせました。
「ぼくをぶら下げた落葉は、どんどんどんどん空を飛び続けて、ジャージャーのずっとずっと上を通り過ぎても、まだ飛び続けた。それで僕は、どうせみんなにはもう会えないのだし、前から見たいと思っていたカラ・メロ(海)まで行ってみよう、と思ったのさ。すると、落葉は、そんなところまでは行きたくなかったとみえて、だんだん空から下りてきて、ちょうど、スッカラン村の人たちがチーオプ(めだか)漁をしていた、川っぷちの浅瀬の中に落っこちたんだ……。」
子供たちがどんなに肩を寄せ合って、また、どんなに目を輝かせて、ケラの話に聞き入っていたか、あなたにも見せてあげたいくらいです。
本当に、小人たちときたら、三度の飯よりも、こんなに、向こう見ずな事が、大好きなんですからね。
おしまい




