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童話『アンチャンの小人たち』(改訂版)  作者: Kobito


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10/12

第十話 ぼく生きてたよ!

 念のために、小人たちは走ってひょろ長のクヌギのところまで行ってみました。

 だけど、村のあったあたりは、やっぱりレンガですき間なくおおわれていて、かろうじてクヌギの木の根元だけが、円く土の地面を残してあるだけでした。

「なんだってニーンマ(人間)はこんな勝手なことするんだ。おおい、居るかぁ!」

 ムスビが、レンガを手で叩いて呼びかけ、うつ伏せになって地面に耳を付けてみました。

 すると、なんと、「おーい!ここだよぅ!」と、かすかな声で、返事した者があるのです。

 それも、どうも聞き覚えのある声で、みんなには、ケラの声のように思えてしかたがありませんでした。

「ケラかぁ?お前も閉じ込められたのかよう。よし、いま出してやるからなぁ!」

 ムスビはレンガのふちをつかむと、うんうん引っぱりながら、「おい、みんなも早く手伝うんだよぅ!」とどなりました。

 そこで、他の小人たちも大あわてで、レンガのまわりを取り囲むと、力いっぱい引っぱりはじめましたが、ケラの声は、「そこじゃないよぅ。ここだよぅ!」と、さっきよりもはっきりした声で聞こえてくるのでした。

「ここってそこだろう!」

「そこじゃないったらぁ……、ここだよう!ここだよう!」

 声がだんだん近づいてくるので、おかしいと思ってみんなが顔を上げて川下の方を見ると、レンガ道の向こうから、ケラが夢中で手を振りながら、何だか見たことのある大人の小人を連れて、いっさんに走って来るのが見えました。

 ユニオが真っ先に駆け出したので、みんなも「生きてたのか!」と言ってケラに走り寄りました。

 ケラはユニオに抱き付いて、「ぼく生きてたよ!」と言うと、うしろから走ってきた大人の小人を指さして、「スッカラン村のアシホさんだよ。さっき、ぼくの命の恩人になったの。」と言いました。

 その人は、以前みんながスッカラン村に来た時に、ペコン(どんぐりで作った打楽器)を叩いて歓迎してくれた、楽器作りがとても上手な人でした。


 挿絵(By みてみん)


「この子が空から降って来た時にゃ、みんな本物のミー(神)だと言って大騒ぎになったもんだ。だけど、話を聞いてみると、アンチャン村のタクの息子だと言うじゃないか。それで、みんなは大いそぎで歓迎の準備にとりかかることにし、おれは昔の村のあとに来ているかもしれない、おまえさん方を探しにやって来たってわけさ。」

「スッカラン村はこの石の下に埋まってるんじゃないの?」

 ムスビがたずねると、アシホさんは、

「まさか、埋まってないよ。ずいぶん前に、ニーンマが川下から、この四角い石で河原の草地を埋めたてはじめたから、みんなで話し合って、村を安全な場所へ移しただけさ。いま村は、あのウヌイ(クヌギ)の木の下にあるよ。」

と言って、そこからちょっと離れた土手の斜面に生えた、土手下のひょろ長のクヌギよりももっと小さな、幼いクヌギの木を指さしました。

 そして、みんなを土手の方へ連れて行きながら、

「村の人たちがお前たちの冒険談を聞きたくて、耳を長くしてお待ちかねなんだ。早く行こう。」

と急かしました。アンチャン村の子供たちは、旅の疲れもすっかり忘れて、「そうだ!ぼくらは川下りを成功させたんだ!」と言って跳びはねて喜びました。


つづく




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