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第一話 小人たちはなぜ川下りが好きか

 挿絵(By みてみん)


 小人たちは、葉っぱに乗って、川を下るのが大好きです。

 なぜかというと、人間にとっては、昼寝にもって来いのおだやかな流れでも、小人たちにとっては、荒波あり、渦巻く早瀬はやせありの、まったく油断のならない大冒険になるからです。

 小人たちが、どんなに向こう見ずな性格だか、あなたにも分かるでしょう。


 ということで、今日は、川端かわばたのクヌギの下の、アンチャンという村の、小人たちの川下りのようすをお話しすることにしましょう。

 なぜ、アンチャンの小人たちを選んだかというと、昨日の夜、子供たちが、並んでクヌギの根に座って、オプオプについて、話していたからです。あ、オプオプというのは、小人の言葉で、“魚”の事です。ほら、こいやなんか、パンくずを投げてやると、水面で口をオプオプさせるでしょう。だから、オプオプです。


 今日、この川辺に居れば、きっとその子供たちの川下りが見られるはずです。

 ほら、やっぱり、来ましたよ。乾いた茶色いクヌギの葉っぱを、五人がかりでかついで、河原の小石や、棒切れやなんかを、つっかえつっかえ乗り越えて行く、あれが、アンチャンの村の子供たちです。


 あ、一つ、言っておきますが、皆さんは、落葉を担いだ小人たちなんか、ふだんあんまり見かけないとは思いますが、それは、当たり前の事です。

 小人は、目が良いし、鼻も利くし、耳もさといので、人間が近くに来たら、すぐに気が付いて、取るものもとりあえず、どこかにかくれてしまいます。

 たとえば、かにやとかげだって、人の足音が聞こえると、一目散に逃げてしまうでしょう?それと同じです。それに、小人たちの方が、蟹やとかげよりよっぽどかしこいので、ちょっと探したくらいでは、人間には絶対に見つからないのです。


 その小人たちが、せっせとクヌギの葉っぱを運んで、川のふちまで到着しました。

「おい、早いとこお祈りをすませよう。」

 身体の大きな(といっても半寸くらいですが)、太っちょの小人が言いました。

 そこで、身体が小っちゃくてやせっぽちの小人が、うやうやしく両手を天にさし上げて、早口に、

「プチ(太陽)の神、ナレ(地面)の神、フイ(風)の神、メロ(水)の神、ウヌイ(クヌギ)の神、オプオプ(魚)の神、……そのほかの神、どうか僕らを助けて、目的地まで無事に送り届けて下さいますように!」

と唱えました。

 ご覧のとおり、小人たちは、意外と信心深いのです。例えば、彼らのことわざに、『旅人をミー(神)の使いと思え。』というのがあります。遠くから来た者は、今までになかった新しい知識をさずけてくれる、ありがたい存在だから、大事にしなさい、という意味だそうです。

 そこで、川下りなどで、小人が遠く川下の村落にたどりつくと、村人たちはその者を大変に歓迎して、お祭りをもよおしたり、ご馳走を振る舞ったりするのだそうです。

 だから、小人たちは、こぞって川下りをするのです。

(小人たちは大のお祭り好きなので、本当は、何でも理由を付けては、大騒ぎしたがってるだけかもしれないのですが。)


つづく



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