Aチーム
翌日の朝練、北村コーチから冨田と俺ともう1人1年生でPF/Cの永野竜馬が、放課後からAチームに合流するように言われた。
「やったな」
冨田が俺に話しかける。
「永野もよろしくな」
永野はインターバル走で上位だった上に180cmとサイズもある。Aチームの練習にもついていけるとの判断だろう。
なんにしてもこれで冴島と勝負が出来る。俺は闘士を燃やしていた。
放課後になり、Aチームで3人が紹介される。Aチームはこれで15人。この中からレギュラー、スタメンが選ばれる。俺はSGをやるつもりだが、目指すは打倒冴島。冴島を睨みつけると、冴島は爽やかな笑顔で返した。
「現在、スタメンが決まっていないのはSGとセンターだ。1年生はそのつもりで練習に臨め」
鈴木監督が言う。PGは蛇川、SFは冴島、PFは179cmでキャプテンの佐倉翔平。あとのポジションに抜きん出た選手はいないらしい。
そしてもう1つ、土曜日に男女合同の練習試合がある事が告げられた。5月の大会前最後の実戦らしく、この試合の出来でスタメンが決まると言っても過言ではない。チームに気合いが入る。
Aチームの練習も基本はBチームと変わらなかった。ただ、スピードやパワー、技術は段違い。Bチームより人数が少ない分ペースも早く、ついていくので精一杯だった。特に冴島、この男は別格。2年生唯一のレギュラー確定選手だ。誰も止められないし、誰もかもシャットアウトする。
「おう、大丈夫か?大和」
俺が膝に手をついて息を切らしていると、冴島が話しかけてきた。
「大丈夫っす」
短く返し、タオルで汗を拭う。
「あんま無理すんなよ。意味ねえから」
言葉の真意はわからなかったが、相手にされていないというのは伝わった。
「負けねえっすから」
「ん?」
小声で呟き、練習に戻る。
7時になり練習が終わると、冴島はすぐにウェイトルームへ向かう。今日はウェイトトレーニングを義務付けられている日ではない。それでも冴島はトレーニングを欠かさない。鋼の肉体はウェイトで作り上げられている。
俺は冨田と山里と1on1ディフェンス練習。必死について行き、昨日よりはマシになる。山里のパスミスだが、何回かカットすることも出来た。最後にディフェンスドリルをこなし練習を終える。
「ディフェンス良い感じだな、明らかに良くなってる」
冨田が俺を褒める。
「今までここまで意識してなかったからな。意識してりゃどんどん上達するぞ」
俺はいつもセンターとマッチアップしていた。PGの冨田と練習するおかげで横のディフェンスはどんどん上達していると自信を持って言える。まだまだ本気の冨田には敵わないが、スタメンになれる気がする。