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第五話 夢、覚めぬうちに

第五話

 蒼疾は夢を見ている…………

―――――

 折れた鉄パイプは悲しく音を立てて動かなくなる。

「んだ?お前?」

 不良がぎょとして見る先には紅い光を放つ男が立っていた。

「俺か?俺は…………お前らに絶望を届けに来た天使だ………右手、右足……どこから折られたい?おっと、パイプを折ったのはデモンストレーションだ」

 そういって今度は指を鳴らす。すると、不良たちが持っていた武器がすべて折れてしまった。

「どうだ?スプーン曲げて使えなくするよりも面白いだろう?」

 にやりと不敵に笑い、舌なめずりをする。

「お、お兄ちゃん?」

 蒼疾は振り向き、別に感情のこもっていない顔をする。

「あん?お前、椿だったのか?おっと、お前の知っている兄貴は俺が気絶させたからな〜………」

「知ってる、お兄ちゃんは二重人格者だってことを………」

「ああ、そうだったな………ま、そんなことはどうでもいいや………邪魔だからひっこんどけ」

「う、うん…………」

 近くのゴミ箱に隠れたのを確認すると蒼疾は一歩踏み出し………

「お?」

 不良の目の前に立っており、一人の不良はその場に倒れ付した。

「………妹を可愛がってくれたおかげだ………カクゴジャタリナイ、イチヤカギリノアクムヲミセテヤル」

 不敵に笑うと蒼疾は襲い掛かってきた相手たちを一撃のもとに倒していく…………近くでは風華が踊るようにして相手を倒していっているが、それよりもすごかった。

「ひぃっ………」

「………ラスト、残念だったな〜最後の奴はいたぶって気絶させてやるぜ?まずは足をこしょぐってやろう」

 縄でぐるぐるにされて動けなくなった不良は靴を脱がされ、くすぐられたのだった。

「ぎゃ、ぎゃはははは…………」

「どうだ?苦しいだろう?苦しいよな〜?その苦しそうな顔、最高だぜ〜?」

 嬉々とした表情で不良の足の裏をくすぐっている蒼疾………だが、すぐに相手は涙を流しながら気絶してしまった。

「ったく、面白くねぇ奴だ………おっと、そろそろあいつが意識を回復するか………」

―――――

「うわぁぁぁぁ!!」

 絶叫しながら目を覚ます蒼疾。

「おっと、今お目覚めかい?相当うなされていたみたいだけど………」

「あ、風華さ………」

 風華は何も纏っていなかった。そういうのを見慣れていなかった(いや、本とかでは見たことがあるのだが)蒼疾はあわてて目を瞑る。

「す、すいませんでした〜っ!!」

「あ、ちょっと蒼疾!」

 走り出した蒼疾はあわてて部屋を出ようとしたのだったが………

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁああっ!!」

 朝っぱらから彼は地上四階から飛び降りるハメとなったのだった。

―――――

「…………アンノウン・エンジェルって丈夫なんですね?」

 怪我も何もしなかった自分の体を触りながら手渡された朝食のトーストを口に入れる蒼疾。

「まぁね、馬鹿みたいに強いわよ〜それこそ、三人ぐらいいれば世界を征服できるレベルね〜」

 成る程、それならば不良が街単位で襲ってこようがらくらくと対処できるわけである。

 トーストを塗りながら露出の多い服を着る。その体型から色気を感じるというより元気のいい娘みたいな印象を受ける。

「え、えっと………もう一回どういったものか聞いて構いませんか?」

 着替えをしている風華を極力見ないようにしてトーストを口に無理に頬張る蒼疾。その顔がちらりちらりと風香を見ていたりする。

「アンノウン・エンジェル………もうめちゃくちゃ前に神様が天使と悪魔の争いを止めるために新たに作り出した存在ってことになってるわ………戦闘能力は計り知れず、戦うためだけって言ったらおかしいから戦いが得意な天使ね。あ、だからと言って自分から争いは起こさないのが多いわね………あたしもそういう温厚な性格よ」

 自ら不良どもをボコボコにしているのが温厚なのか?と思ったのだが蒼疾は話の腰を折るのをやめた。

「アンノウン・エンジェルがどういった経緯で出来たかは知らないけど………普通の天使がなれたりもするそうよ?まぁ、これはあたしたちには関係ないけどさ………」

 ここでこの説明はおしまいっといって蒼疾にたずねる。

「大丈夫?復習できた?」

「え?ま、まぁ………」

 本当のところは着替えをちら見していたのでぜんぜんなのだがその点は昨日はなしてくれていたときに完璧に覚えた………というより、前から知っていた感覚だった。

「それで、次は天界のことだったわね?」

「ええ、そっちは全然です」

 どういったものかさっぱり理解できない。

「天界ってのは神界、天界、人間界、魔界、魔王界の五つの界の一つね?どこにあるのかわかんないんだけど、白いトイレに向かって天使が話しかけると扉が開くのよ?逆もまたしかりね」

 とても簡単に扉が開くというのがおかしいことだったのだが、なるほど、この方法ならば人間が迷い込んだり、天界に行った人間がこちらには戻ってこれない。

「あたしが天界について知っていることはこの程度ね」

「………まぁ、充分だとは思いますけどね」

 そう言って蒼疾は立ち上がる。

「家に向かうの?」

「ええ、まぁ………短い間でしたが、お世話になりました」

 下げた頭を上げると、座っていたはずの風香も立っていた。

「………あたしもついていくわ」

「え?」

「………ちょっと、気がかりがあってね」

 さ、行くわよ?と彼女は言うときょとんとしている蒼疾の腕を掴むと風香だと本日一回目、蒼疾だったら本日二回目の飛び降りを決行したのだった。

―――――

 静かな家の前に立ち並ぶ二人………

「家、空き家になってますね」

 売りに出されている我が家を前にして愕然としている蒼疾。

「まぁ、一年以上経ってるからね」

「………僕の感覚としては一日二日ですよ………」

 まぁ、そうねと彼女は呟いて携帯を取り出す。

「ふんふん、成る程………」

 携帯でどこかにかけて話をしているようだった。隣では膝を突いて愕然としている蒼疾は何も考えることが出来なかった。

「………さ、蒼疾………はいるよ」

「はいるって?」

 死んだような目をした蒼疾を無理やり立たせ、顔を掴む。

「ここに!」

「は、はいっ!!」

 よろしいと呟いて従えて家の中へと入る。


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