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第四話 叫び声は奇声じゃないのか!

第四話

 叫び声がした方向へ嬉々とした風華と死ぬような思い(飛び降り)をした蒼疾は疾走する。

「っと、間に合った…………蒼疾、奇声を発した子を助けろ」

「え?」

「無双じゃぁぁぁぁ!!目指せ!最高コンボ!」

 紅い剣のようなものを振り回しながら不良たちを蹴散らしていく風華。その顔はとても嬉しそうだった。

「え、えっと…………」

 基本的に言われたことをやってしまう蒼疾はまだ会って間もないというのに風華の言ったことを実行したのだった。

「さ、僕の後ろに来て!」

「え?お、お兄ちゃん!?」

 そんなことを言われたような気がしたのだが、蒼疾は叫び声を発した女の子を後ろへとかばう。

「こっちの男のほうが弱そうだぞ!」

「くっ…………」

 不良の半分ほどが蒼疾のほうに殺到してくる。

「く、来るなら来てみろ!」

「足が震えてるぜ〜♪………くたばりなぁ!!」

 鉄パイプを振り上げ、不良は優越感に浸っていたのだが…………………

「………覚悟するのはそっちのほうさ………いやだねぇ〜こんな、くだらない相手をするのは………覚悟、決めてくれよ?俺、手加減できないから…………」

「あ?」

 振り下ろされたはずの鉄パイプは男が握っているところからすでに地に落ちていたのだった。

――――――

 多勢に無勢なのだが、例を例えるならばフル装備機会兵士に素手の人間たちが押し寄せているような感じだっただろう。その圧倒的な戦力は涙ものだった。

「…………あれ?」

 蒼疾も意識を取り戻し…………恥ずかしい話だが、蒼疾は気を失っていたのだった。

「蒼疾、助けた子は?」

 不良の服をなれた調子で剥いでいきながらそんなことを尋ねてくる風華。

「えっと………その、すいません………気を失っていたみたいで………」

「………気を失っていた?あたしより嬉々として相手をボコボコにしていた蒼疾がよくいうわね〜………ま、力に振り回されてるんだろうけどさ」

 風華はくすねた財布をまとめて袋に入れると指を鳴らす。

「!?」

 転がっていたはずの不良たちはすべて消えてしまったのだった。

「これは?」

「ちょっとしたマジック」

「どこに消えちゃったんですか?」

「あれ?さっき言わなかった?交番か警官がいるところ」

 あ〜すっきりした〜と言って再び蒼疾の近くに立つ。

「蒼疾、血、出てるわよ?」

「え?」

「ほら、ここ………」

 ハンカチでほっぺを拭ってもらい、その仕草がいやに脳に焼きついた蒼疾だった。

「で、あの子はどこにいったのかな〜………おーい!もう君に危害を加えるような悪い子達は始末してあげたから出てきても大丈夫だよ〜」

 下心ありありな声を出しながらゴミ箱の中を探したりする。

「あり?いないな〜」

「それはまぁ………そんなところにはいないとおもいます」

「蒼疾も早く探す!あんたがちゃんと見てなかったから悪いの!」

「…………はい、わかりました」

 上からものを言われるとこんな風になってしまう自分を叱責しながらも半ばあきらめた調子で蒼疾も捜索を開始したのだった。

―――――

「いた?」

「いえ、いませんでした………あの子、大丈夫ですかね?」

「ま、大丈夫なんじゃない?ここから出て行った可能性が大きいから」

 どうでもよさげにそんなことを呟いて彼女は蒼疾のほうを見る。

「で、どうするの?」

「どうするって?」

 何がどうしたのだろうか?そうおもいながら蒼疾は考えた。

「あのねぇ、自分の家に行きたいんでしょ?」

「あ、そうでしたね………けど、もう深夜ですし………」

 不良たちも寝静まったのか(どっちかというと二人にボコボコにされた後に警察署に連れて行かれたのが大きい)静かになってしまった町の出入り口で彼らは話し合う。

「ま、邪魔になるわよね〜…………今日はあたしの家に止めてあげるわ……さっきのところだけどね。ベッドはあたしと共同。どう?嬉しいわよね?」

「…………ええ」

 何よ、その態度は?と笑いながら叩かれてこけそうになる蒼疾。

「えっと、お世話になりますね。風華さん」

「気にしない気にしない…………ま、天界の連中の話もしてあげたいし、さっきのことも詳しく教えたいからね………」

 どうやら蒼疾の聞きたいことはお見通しらしく、ちょっとまじめな顔で蒼疾に告げる風華。

「………風華さん」

 感激の念にとらわれた蒼疾だったが、次の瞬間には彼女の顔がにやーっとした顔に変わっていた。

「勿論、この魅力的なあ・た・しのボディーもじかに教えてあげるわ♪」

「…………」

 風華はそういって体をくねらし、セクシーなポーズを蒼疾へと向ける………だが、お世辞にもナイスバディーとは言いがたいその体を見ることなくアスファルトに咲いている花へとむける蒼疾。その表情はちょっと同情しているような感じだった。

「何よ、その物足りないって顔は!」

「え?い、いってませんよ!」

 思っただけです!といおうとしてあわてて口を閉じる蒼疾。そんな蒼疾を睨みつけていた風華が口を開く。

「まったく!失礼しちゃうわね〜………ま、今日は許してあげるわ。疲れたし」

 そういって蒼疾の腕を掴むとねぐらである先ほどの部屋へと向かっていったのだった。

「………そ、そんな………おにいちゃんがここにいるなんて…………」

 そして、そんな二人のやり取りを見ていた一人の女の子が呆然と立ち尽くす。彼女はそのままこの町を出て行き、町は完璧な静寂をようやく迎えることが出来たのだった。

―――――

「ま、蒼疾が知りたいと思っていることがほかにないのならあたしは眠らせてもらうわよ?」

 ふわぁ〜と大口開けてあくびを一発かますと隣の蒼疾を見る。

「…………ええ、ありがとうございます」

 若干暗い顔になってしまった蒼疾の頭をくしゃくしゃにして風華は笑う。

「ま、眠れないかもしれないけどさ、そのときはあたしの顔を見て和んでて?」

「ええ、すみません」

 じゃ、おやすみ〜と彼女は言ってすぐにいびきをかき始める。

「…………」

 蒼疾も彼女の隣に寝転ぶと静かにまぶたを閉じた。先ほどまで聞いていた話が頭の中を駆け巡っていたのだが…………となりで静かに寝ている風華を見ていると馬鹿らしくなってそのまま眠ってしまったのだった。


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