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再び巡り会うその日まで  作者: 10雪菜01
番外編ーシーク・ドールの場合ー
38/44

第1話

「失っ礼しまーすっ!!!」

俺は跳躍し、大きく振りかぶる。


ガキィィィンッ!!

という金属と金属のぶつかり合う音が、鼓膜を刺激する。


「甘いな」

涼しい顔をして、ライアさんは俺の打ち込んだトンファーを受け止め

「ぁあっ!!飛ばさないで下さいよ!!」

弾き飛ばされる。

俺のトンファーを弾き飛ばしたのは、ライアさんの獲物(ナイフ)だ。


宙を舞ったトンファーは、カランカランと虚しく乾いた音を立て、俺の後方に落ちる。

その、落ちたトンファーを俺は拾い上げるのだが

「なぜ、俺が飛ばしたか分からないか?」

幼子を見るような目をしてライアさんは問いかけてくる。

「全っ然」

俺は、その質問に勢いよく、首を横に振る。


幼子と思われても仕方がない。


だって、俺はまだこの世に創り出されてからたった3年だ。


「俺の手足となるんだろう?」

「そうですよ。絶対なって役に立ちたいんです」

俺はライアさんの瞳をまっすぐ見据える。

ライアさんは、創り出された俺を3年間、特訓だけでなく様々な点で面倒を見てくれた。

俺にしてみれば人間でいう親のような存在。

「なら、少しは頭でも考えてみることを始めようか」

「頭で?」

「そうだ。常々言ってはいるが、テアに任せたい仕事…いや、相手は異世界(シャルバラ)の次期皇帝、シズリーだ」

パチン。とナイフを折りたたみライアさんは答える。

「それが何か」

「あの混合種だぞ」

「……ぅん?そうですけど?」

未だに疑問符を浮かべる俺に

「此処までの間合いに入ってみろ」

瞳を鋭くし、ライアさんは瞬時に俺の前に立ち、俺の顎を持ち上げる。


首には、先程折りたたまれたナイフが押し付けられる。

「……ッ………」

金属の冷たさや、ライアさんの瞬発力に驚かないわけではない。

でも、それよりも何処までも深い、ライアさんの瞳に釘付けになる。


この瞳は今まで何を見てきたのか。

右目は眼帯で隠してはいるが、俺と同じシーク・ドールの証が刻まれている。


「この間合いで動くようにしろ」

淡々とライアさんは言葉を紡ぐ。

「だから、それが何でトンファーを飛ばされることになるんですか」

訳が分からない俺は、顎に当てられるライアさんの手を取り問いかける。


「……この間合いの間は確実に肉弾戦になるだろう。そうすれば、テアでも勝てるとは思う……だが」

「だが?」

「つまるところ」

そう説明しながらライアさんは再び俺のトンファーを遠くへ放り投げる。

「あぁもう!!さっきから何するんですか!!」

突然のことに驚きつつも、俺は急いでトンファーを拾い上げるために、ライアさんの懐から抜ける。

「だから甘い」

駆け出す俺の脚に、己の足を引っ掛けてきた。

(ゲッ!!?)

気付いた時にはもう遅い。


挿絵(By みてみん)



スパンッ。という景気のいい音共に、俺の両足首はライアさんの右足に持って行かれたからだ。


「ぶえっ!!」

べシャッと音を立て、俺は地面とキスをする。

いや正確にはキスすよりも早く、鼻をぶつけた。

地面といってもここは屋内。

組織内の訓練場。

土なんて優しい物でなく、硬い硬い大理石の床だ。


「こうやって、トンファーを飛ばされた場合、まだ実践の無い君だ。卑怯な手を使ってあの混合種は君と距離を測るだろうさ」

そう言いながら、ライアさんは俺との距離を開けていく。


正直鼻がもげそうなほど痛いのだが、どうやら折れてはいないらしい。

しかし、鼻を押さえる俺の手には

「いってぇぇぇ……あぁ、鼻血……」

血痕がこびりつく。

どうやら鼻の粘膜はしっかりと傷ついたらしい。

「鼻血なんて見てないで聞け」

「聞いてますって!!っとにも~」

「いいか。そうこうしている間に」

そう言葉を告げながら、ライアさんは右手を俺にかざす。



その姿を見て

「ぁっ」

俺はやっと閃く。

「そうだ」

「だから……」

「接近戦なら魔術を発動させる時間もない。だからこそ、隙を付いて一撃を……とそれも、ダメージを必ず与えられるものをと言っているんだが……かれこれ半年経つか?」

虚空を見上げ、ライアさんは右手の指を折月数を数える。

「……そんな経ちますか」

「みたいだな」

「ちぇー」

胡坐をかきながら鼻を押さえる俺に

「でも、生まれてきてすぐよりかは、随分成長したと俺は思うがな」

そう言って、彼は俺の頭に手を置く。


その言葉に、俺は笑顔がこぼれる。

(憧れのライアさんに褒められた。憧れだからこそ、きちんと役に立ちたい)

胸中で呟いてから

「早く、ライアさんに頼られるようになりますからね!」

二カッと笑いライアさんを見つめる。

俺の群青色の瞳と、ライアさんの深い深い緑色の瞳が混ざり合う。


「期待している。だが」

「だが?」

「その鼻血姿はどうにもな」

「ぅぐ……」

滅多に笑わないライアさんが微笑む。


その時だった

「テッアちゃぁぁぁぁぁぁん!!!!」

「ぐふっ!!!」

体当たりを食らわせながら、リリアは俺に抱き着く。

「やっぱり訓練場(ここ)にいたのね!!ねねねねね!テアちゃん!!」

「なんだよリリア!!俺今、ライアさんと話してんのに!!」

グイっと、彼女の肩を掴み、俺から引きはがす。

どこかに行くつもりなのか。

彼女は珍しく、パンツスタイルだ。


「もう~いけずぅ~」

胸元に両手を持っていき、彼女は体を揺らす。

チリチリと首元にぶら下がる鈴のチョーカーが音を鳴らすのを聴きながら

(おっぱいまで揺らしてるのはワザとなのかな?)

ばれない様に、たわわに揺れる彼女の胸元を一瞥する。


シーク・ドールといえど、俺も男。

(無自覚なのが悔しい!!!)

性欲という性欲は無いが、俺やライアさんには無い物だ。

一度でいいから触ってみたいという興味はある。


ぼーっと考える俺に

「どこ見てんの?」

頬を膨らませ、リリアが俺の膝に手を置き詰め寄ってくる。

柔らかそうな肌が目にまぶしくて

「…っ…別に」

俺は顔を背けるが、

「嘘だ~。(ここ)、見てたんでしょう?触りたいの?」

グイッと両頬を掴まれ彼女の顔の前に引き戻される。

「はぁ!?ちげーし!!」

「そぉ~?ま、いいけどね」

一人、リリアは納得すると、立ち上がり

「ライア、もう今日はテアちゃんの特訓終わり?」

彼女の質問に、ライアさんは時計を確認し

「あぁ」

と頷く。

「じゃぁ、テアちゃん借りてもいいわよね?」

「構わんが、何させる気だ」

「お洋服のお買いもの♡」

そういうが早いか、リリアは俺の前にしゃがみこむ。


「………また荷物持ちってことかよ」

「そういうこと♡」

「……ライアさんは来ないんですか?」

俺はリリアの奥に立つライアさんに問いかけるが

「悪いな。今日は夕方から用事があるんだ」

「用事って……」

俺の質問より早く

「アイレンの所?」

リリアが問いかける。

「あぁ」

「随分入れ込んでいるのね?」

「……ジェイクの娘だからな」

息抜きして来い。

と付け足して、ライアさんは訓練場を後にする。

その消えゆく背中に

「アイレン」

呟くと

「なに~?やきもちってやつ?」

「いや。俺、ライアさんにこんなに育ててもらってるのに、まだ実践にも連れて行ってもらえないのかって……」


ギュッと、悔しさで俺は拳を握る。

アイレンはまだ8歳の少女だと言う。

……いや、創り出されてから3年の俺からしたら5歳も年上だけど…

第一、俺はジェイクとやらを知らない。

俺が創り出されたとき、彼が亡くなり既に3ヶ月が経過していた。



俺だけがきっと、何も知らない。

弱い。

弱い。

だから

「早く追いつかないと…」

胸中で呟いたつもりが、音に乗せてしまっていた。

そんな俺に

「テアちゃんにはテアちゃんの速度があるの。大丈夫。大丈夫っ」

ね?

とリリアはオッドアイの瞳で俺を覗き込むから

「そう……かな…」

「そうそう!じゃ、行こうよ!!」

言うが先か、リリアは俺の腕を掴み立たせる。

「え?」

「お買いものっ!荷物持ちもしてもらうからね!!」

明るくふるまう彼女に何度助けられただろうか。

「分かったよ。でも、その前にシャワー浴びてきていい?汗でベタベタなんだ」

そう言って、俺は水色のタンクトップを広げ見せる。

「全然気にしてないけど、テアちゃんがそうしたいならっ♡じゃぁ、30分後にシャワールームの辺りにいるね」

「おう」

俺はリリアと並び、その場を後にした。



ご閲覧いただきありがとうございます。


シーク・ドールの番外編です。

次回更新

明日21時を予定しています。



また、ハロウィン間近なことと、長編に少し疲れて来たため←

息抜きで

R-18BL作品に取りかかりました。

こちらは全10話で終了です。

ハロウィンまで、そちらに比重が傾きます。

明日の更新以降は11月からとなります。



BL作品はムーンライトの方で連載してます。


タイトルは『ゴシックモンスター』

人外と、人間の学生の作品となります。

18歳以上で、尚且つBLが平気な方は覗いて頂けると幸いです。


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