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第13話

「あれ?誰か来てるかと思ったんだけどな……」

ドアを開け、何も知らないシズリーが顔を出す。

「………おか……えり……」

絞り出すようにアイレンはシズリーへと言葉を発す。



部屋には、彼女一人だけが立っていた。



彼女のいつもと違う雰囲気に異変を察知し

「どうしたの?何があったの?」

彼は足早に、アイレンへと近づく。

「………リリアと、依頼者が来たのよ」

赤い髪をクシャクシャとしながら彼女はベッドへと腰かけ、彼を睨む。



彼らの正体。

そして……、本当の父であるジェイクのことは目の前にいるこの混合種に聞いたほうがいいという話。

グルグルと彼女の脳内を様々な情報が駆け巡る。


リリアという単語に、

「………っ…怪我は!?」

彼女の前に跪き、瞳を覗き込む。

「………無い」

その答えに彼は安堵する。


「何があったか、聞いても?」

問いかけながら、彼女の隣に腰かけ乱れた赤い髪を直す。

黙って、己の髪を触れさせながら彼女は

「混乱しているの」

「混乱?」

アイレンは己の瞳を、緑色の瞳に絡ませて小さく頷く。

「ライアに言われたの」

「ライア?」

初めて聞く名に、シズリーは眉根を寄せる。

初めて彼が耳にした名前だからだ。


「私がまだ7歳の頃、接触し暗殺者として育てた……師であり依頼者よ」

その答えに納得がいった彼は、少しずつ言葉を紡いでいく彼女に耳を傾ける。

「彼ら……シーク・ドールだったわ」

(やっぱりか……)

彼は胸中で呟き

「どうして、分かったの?」

彼女に質問する。


動揺するでも無い彼の姿に

(……やっぱり、アンタは私に隠していたわけね……)

【シーク・ドール】の存在を認知していたのだと知り、彼女は両手に拳を握る。


「アイレン?」

その、握り拳を見たシズリーは眉根を寄せ彼女を見下ろす。

彼女は一つ呼吸を吐き出し

「いつから知っていたの?」

金色の瞳で、見下ろしてくる緑色の瞳を見上げる。


「いつから?」

「シーク・ドールという存在をいつから認知していたの?」

彼女は、瞳を鋭くし問いかける。

その問いかけにシズリーは

「1時間ほど前かな」

と、顎に手を添えカスールとの会話を思い出す。

「……嘘よ」

「本当だってば。シーク・ドールは名ばかりの噂でしか聞いていなかった。……でも」

「でも?」

「今、ちょうど人に会ってきてね。その人の周りの人間が……どうやら存在する確証を持ったらしい」

面倒なことになるかもね。

と、付け足してシズリーは肩をすくめベッドへと腰掛ける。


その様子に、彼女は嘆息してから

「彼の右目と、リリアの左腕にシリアルナンバーが」

とだけ告げる。

「……それは」

彼が何か問いかけようとしたのを

「自分たちから正体を明かしてきたわ」

アイレンは遮る。


きっと、この状況では彼女の話を聴き込むことが大切だろうと、彼は判断し

「それで?」

先を促す。


「………ジェイクが…アイツが死んでいるって聞かされたわ」

その答えにシズリーは

「なっ……」

目を見開き狼狽える。


まさか、その事実を今この段階で知ると思っていなかったからだ。


その狼狽える様子を決して見逃すことなく彼女は

「のうのうと生きているならと……思っていたのにね」

冷めた瞳でシズリーを彼女は見つめる。


生唾を飲みこみ、嫌な汗を感じながら彼は、

「それは……どういう意味?」

彼女に先を促す。


「少し前に話したでしょう?私には本当の父親…ジェイクがいて。当時迎えに来なかったことを恨んでいると」

「あぁ……確かあの日は、雪が静かに降る夜だったね」

「そう。今年の冬が終わる2月。シズリーの誕生日の少し前ね」

瞼を閉じてアイレンは答える。

その答えとともに、彼はその日を思い出す。


雪が静かに降りしきるあの日。

彼は寝るに寝られなくなり、雪の結晶でも見ようかと一人ヘリクサムの町へ繰り出した。


一本の路地裏を歩いた時ー。

地面が白銀に染まる中、返り血を浴び佇む彼女を見つけた。


『今日も収穫が無かったの……』

悲しげに呟かれたあの日。

彼女の前に転がる無惨な抜け殻。

ナイフに付着した血液が、白い雪の上に花弁のように舞い落ちていた光景が鮮明に蘇る。


「……自身の手で殺すために、暗殺業をしてるって聞いた」

合っているよね?と彼は付け足す。

「そう。ジェイクは暗殺業をしていたと聞いていたから……その世界に入れば何か手掛かりがあるかもって。当時7歳の私は到底父親とも思えなかったんだけど……」

彼女は11年前のことを思い出しているのだろうか。

懐かしそうな瞳で話し続ける。


「きっと、唯一血の繋がった人間がいるっていうことが嬉しくもあったのね。本当は殺すつもりなんてなくて、どうしてあの日迎えに来なかったのって聞きたかっただけなのかもね」

悲し気に呟くその姿はまるで今にも消えそうなものに変化する。


遠くを見つめあげる彼女の姿はまるで、この世からいなくなりそうで。

儚げで。

彼は衝動的に、彼女を包み込みたい欲望にかられる。

(………俺には、そんな資格ないだろ)

胸中で悔しげに呟き、自制する。


「さっきも言ったけど……迎えに来なかったことは恨んでいる。でも、死んでいたらこの想いはどうすればいいのかしら」

「アイレン……」

「私が恨みを込めて殺せればなんて思っていた。殺さなかったとしても、会えたらきっと……こんなマイナスの感情なんて無くなるって思ってた。……なのに……殺されてるなんてね」

彼女の言葉を黙ったまま聞き続ける彼に彼女は続ける。


「それとね、シズリー」

「何?」

「リリアから、貴方からジェイクのこと聞いたらと言われたわ」

アイレンの言葉に、シズリーは重い口を開く。


「………時期をみて話すつもりだった」

「時期?」

「ジェイクさんが亡くなっているのは知っていた。もう……13年前アイレンが5歳のときになる。でも、アイレンと彼が親子関係だと知ったのは、アイレンが18歳になったあの晩が初めてだ」

「……え?」

意外そうに目を丸くするアイレンに、


「まさか、親子だなんて知りもしない。でも知ったその時から必ず彼が故人であることを教えようと思っていた」

「何故直ぐに教えてくれなかったの?」

彼女の問いに、シズリーは頷き立ち上がる。


そして彼女の手を取り

「マスターとの約束があったから」

シズリーは緑色の瞳を金色の瞳に絡ませる。


「父さんとの約束……?」

困惑する彼女の質問に一つ頷いて

「そう。あの人なりの理由もあって……俺のタイミングで伝えられればって思ったんだよ」

ポンポンと、赤い髪を手のひらで撫でる。

「タイミングって?」

眉根を寄せ、アイレンはシズリーを見つめる。


「ジェイク・マトラーの異世界での偉業ってところかな」

「偉業?でも、アイツが人殺しには変わりはないの。それに……私だって……」

手をとられたまま、アイレンは金色の瞳にうっすらと液体を溜める。


「人を殺していた……まぁ暗殺業ってのはあながち間違いではない。でも、そこにはジェイクさんなりの……異世界(シャルバラ)を守ろとした理由があったんだよ」

彼女の涙を親指で、優しく拭いながら彼は問いかける。

「……アイレンの涙の理由は、ジェイクさんに会いたかったのに会えないから?それとも、血縁者が……所謂天涯孤独だと知ったから?」

「……え?」

優しくアイレンを抱きしめてからは続ける。


「ジェイクさんは故人。それは紛れもない事実。でもね、もし後者なら、間違いだ」

「間違い?」

彼女の問いかけに優しく微笑んで

アイレンには……兄がいる」

と、シズリーは答える。

「………兄?」

彼女の問いかけに彼は耳元で優しく囁く。


まるで、小さな子供をなだめるように。

「そう。ポーターの最高権力者。カスール・マトラーだよ」

「権力者……?それって…」

シズリーの腕の中から彼を見つめあげる。

「そう。俺はちょっと苦手なんだけどね」

苦笑いをして彼はアイレンの瞳を見つめ返す。


「どう?少しは元気でそう?」

「………なんとも…」

「足りないなら、もっと力強く抱きしめてあげるけど?」

茶化す彼の言葉で、彼女は

「………っ!!!いつまで抱きしめてんのよ!」

「ぐえ!」

我に返り、シズリーを張り倒す。

「……本当、優しくしたりからかったりなんなのよ」

(いつもみたいに、飄々としていてよ)

ギュッと、服の裾を握る彼女を見ながら

「性分なんだ」

彼は、ベッドに張り倒されたままの格好で呟く。


その呟きは、彼のもので間違いないのだが、彼でないような気がして

「………いつまで、その恰好なのよ」

アイレンは彼の腕を掴み立たせようとする。

しかし

「キャッ……!!ちょっと!!!」

「仕返し……かな。優しくしていた俺を八倒したんだからね」

ニヤニヤとし、彼女のことを強く引き寄せ組敷く。

「~~~~ッ!!!ばっかじゃないの!!!」

顔を紅潮させ彼女は、バチンッ!!と景気のいい音を立て彼の左頬を引っ叩く。

「い………ッて……」

「当然の報いよ」

ふん。とそっぽを向いて、アイレンはベッドから立ち上がる。


そんな姿にシズリーは自然と笑い声が漏れる。

「はははっ」

「……なに笑ってんのよ」

苛立ちながら、ギロリと彼女が睨むと

「ん?らしいなってね。弱っているアイレンは、なんだからしくない」

「はぁ?」

「だからって、無理に溜め込んで欲しいわけでも無いんだけど」

「誰のせいよ」

「俺だよね」

胡坐をかき、シズリーは笑う。

「わかっているなら、もう少し態度ってものが!!」

「そうだね。姫様。じゃ、お詫びに今からカスールのところでも行きますか?」

彼は、ベットから降り立ち、提案する。

「え?え?」

固まる彼女の手を強引に繋いで

「まずはさ、アイツに会ってやってよ」

微笑み、肩を抱き部屋の外へと促したのだった。

本日もご閲覧いただきありがとうございました(*´∀`*)


連日暑い日が続いております。

皆様ご自愛くださいね(*´꒳`*)


さて次回更新は

7月14日となります。



私とベリーさんのアイドル←

テアの登場です←


「なんで俺ばっかりこんな目に…」

です


前半シリアス

後半はいつも通りな感じです。


それでは(*゜▽゜)ノ

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