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第10話


「えーと……」

大きな尻尾を揺らし、シズリーは

「確かこの辺りのはずなんだけどな」

10年前の記憶を頼りに、ゲラタムの広い街並みを歩き始める。



『音楽の街』

と言われるだけあって、街の中心部はワンブロックごとに流れている音楽が変わる。

聴覚で、心を軽快に楽しませてくれているのである。


そして、街の中の至る所には音楽に関連するモチーフが散りばめられていた。

視界から入る景色からも、このゲラタムに来た者を楽しませてくれる。


しかし、シズリーはこの街並みに少し違和感を覚えていた。

「もともと人は多いけど、忙しない気がするのは明日の準備………ってところかな」

彼は呟いて歩み止め、周りを見渡す。


落ち着いて見渡せば、行き交う人々は人間と混合種。

ヘリクサムより混合種が多い気がするのは単純に人口が多いからなのか。


それとも

(人型精霊を…同胞を助け出すためなのか……)

苦々しく胸中で呟いて彼は視線をずらす。


すると、彼の瞳に見覚えのある小さな路地が目に映る。

(そうそう。確かこの先だ)

確信した彼は、その場を後にし、路地裏へと歩み始める。



賑やかだった中央部の街並みとは一転し、軽快に鳴っていた音楽は、デクレシェンドのように遠のいていく。

彼がふと気がつく頃には、ヘリクサムの住人の居住区域に来ていた。


音楽ではない、人々の声が生活音が響く。



しかし、彼はそんな様子に目もくれず歩みを進めていく。

(こんなに中心部から外れていたかな?)

疑問に思いつつ5分ほど歩みを進め、彼なりに、あと3分歩いたら引き返そうかなどと考えていたのだが、

「見つけた」

口元に笑みを湛えお目当ての場所を見つける。


視線の先にあるのは、営業しているかも分からない、古ぼけた、薄暗い小さな路面店だ。


ゲラタムの街の中では余りにも異色を放つこの路面店。

しかし、この場所こそ彼の求めていた場所。



「相変わらず……重たいな……」

ドアノブを掴む右手に力を入れ、シズリーは扉を押し開ける。

ギギギギ……と鈍い音を出し、開けることを拒むように扉はじわりじわり開いていく。



店内に入ると、少しだけ埃が舞い彼は顔をしかめる。

シズリーの目にはクラリネットやトロンボーンなどの多種多様な楽器が映る。

見た目はさほど広くもない店内だが、奥へ奥へと細く長く広がっている。


入り口から、薄暗い店内の奥の方へと歩みを進めていけば、動物をモチーフにした陶器の薬入れやアクセサリーケース。


そして、それらが一転するかのように

(相変わらずか……)

ナイフやライフル銃など、物騒なものが陳列されていた。


「邪魔するよ」

商品をザッと見渡し後、彼は店奥へと声をかける。

すると、

「………久しい顔だな」

シズリーよりも少し背の高い男が顔を覗かせる。


その男の声と顔を見て

「……カスール・マトラー?」

ゲ。と明らかに嫌そうな顔をするシズリーに

「嫌なら出ていけ。今週は俺以外いねぇよ」

毛先にかけて赤く染め上げられた、黒髪ベースのウルフヘア。

鋭い金色の瞳をした男が更に瞳を鋭くしシズリーを睨む。

年齢は如何程か。


彼の左手には、彼の風貌には到底似合うとは言い難い、小さなウサギの形をした陶器が握られていた。

右手には小さな布。

彼は、この陶器のウサギを磨いていたようだった。

「……相変わらず、少女趣味なんだ…?」

シズリーは、到底その男からは連想できないアイテムに笑いを堪えて問いかける。


「………うるせぇ!!」

図星なのか、はたまた羞恥からなのか、苛立ちを見せた男はウサギの陶器をシズリーへと投げつける。


「ぁ!!ウサギさん可哀想!!」

叫び、シズリーは投げつけられたウサギをキャッチする。

「……はっ。お互いウサギさんって柄じゃねぇだろ。仕事だ仕事」

「でもお前、小さい物とか可愛い物、好きだったよな?あと、モフモフ?」

シズリーはからかいながら、陳列棚へとウサギの陶器を並べる。


その様子を一睨みした後、カスールは彼の前へと歩みを進める。

そして、

「………で?混合種のお前が今更何の用がある?」

低い声色で、彼はシズリーへと問いかける。


自身よりも背の高い男を見上げながら

「ココは、混合種だからこその店だろう?」

と言うシズリーの答えにカスールは、

「……まぁな。人型精霊が細工したものばかりだ。これとかな」

淡々と答えシズリーの陳列棚に置かれた、先ほどのウサギの陶器を指差す。


その陶器を一瞥したのち、

「細工と言えばさ、10年前は恩に着るよ。沢山細工してくれたんだろう?1年に一度、報告もキチンとしてくれるし」

彼は肩をすくめる。

「自惚れるな。お前がどうなろうが知らん。万が一、お前が異世界(シャルバラ)に帰ることになっても俺自身が罪に問われないようにしただけだ」


その答えに

「それってつまるところ、俺に追手がつかないようにしてくれた。ってことだろ?」

微笑むシズリーに、カスールは

「その通りだが、お前の事なんて二の次だ」

構ってられるか。と言わんばかりの顔でカスールは吐き捨てる。


「やっぱりね。流石ポーターの権力者であり、後継者。彼の息子ともなると一味も二味も違う」

どこか嬉しそうに言うシズリーに

「親父と比べられるのは好きじゃない」

カスールは忌々しく呟く。


「……それは、自分がまだ足元にも及ばないと思っているから?10年前、たった8歳のお前は……俺を……っと」

言いかけるシズリーの額に一枚のカードが当てられる。

「……それ以上続けてみろよ」

金色の瞳でカスールはシズリーの緑色の瞳を睨む。


(10年前と変わらず……転送にはカードか)

彼は胸中で呟く。


そして

「……別に普段なら転送されても構わないんだけど、やることができてしまってね」

「………やること?」

真面目な顔をして話す彼に、カスールは耳を傾ける。

「収納型のオルゴールが一つ欲しい。コチラでもアチラでも使えるやつ。ゲラタムにあるこの店だ……オルゴールくらい……あるだろ?」

「……あぁん?」

怪訝そうに見つめる彼にシズリーは

異世界(シャルバラ)に帰ることにしたんだ。でも荷物がね。だから収納型オルゴールが欲しい」

この言葉に、カスールは銀のピアスが付いている左眉をピクリと動かす。


「……要請されてねぇぞ?」

「ポーターを使う気はない。例の入口を使って帰る」

「はぁ!?冗談じゃねぇぞ!帰るのに俺達(ポーター)を使わねぇとか何考えてんだ!!」

カスールは声を荒げ、シズリーの胸ぐらを掴む。



あまりの声量に、油断したシズリーは、耳がおかしくなりそうになりながらも

「また、細工をして欲しい。10年前のように」

「……いくら、リー家の息子だからって変な理由だったらぶっ飛ばすぞ」

そう言って、胸元からカスールは手を離す。

「構わないよ」

「くそったれが……決意は固いってことか……」

彼は呻くように呟き、こめかみを押さえる。


「まぁね。ちょっと人間じゃない訪問者が現れてね」

「……同じ混合種じゃねぇのか?」

顔をあげ、カスールは先を促す。

「……人間。だけど人間じゃない」

緑色の瞳でシズリーはカスールを見つめる。

「なんだって?」

訳が分からない。という顔をして彼はシズリーを見る。

「………実は…」

シズリーはヘリクサムでの訪問者、リリアとテアの話を始めた。



いつもご閲覧ありがとうございます。



さて新キャラが出てまいりました。

カスール・マトラー

です。


どうぞ、彼をお見知り置きを。


今夜は七夕ですね。

皆さまは何をお願いされたのでしょうか(*´꒳`*)


さて、次回更新

明日18時を予定しております。


引き続きよろしくお願いします。


「10円ハゲになる!それ!危ないからしまってよ!」

です。

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