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第9話


「よし。荷物はこれで全部だね」

満足げにシズリーは腰に手を当て部屋に広がる荷物を見下ろす。


「そうね」

シズリーとアイレンは、荷物を受け取り宿の部屋へと戻っていた。

荷物といってもたいしたものは無いのだが……。



戻ってきて早々。シズリーはアイレンへと

「アイレン。俺少し出かけてくるね」

出かけることを告げる。


突然の発言に、

「え?何処に?」

アイレンは問いかける。

「ぁれ?もしかして寂しいの?」

「ちっがっう!」

即座に彼女は力を込めて否定する。


「そう?じゃぁ、留守番しててよ」

そう言って、彼は身を翻し部屋から出ていこうとする。

「ちょ!待って!鍵は!鍵はどうするのよ」

赤い髪を揺らし、彼女は混合種の彼を引き留める。


そんな彼女の様子も気に止めることなく彼は、

「テーブルの上に置いてあるよ。一時間くらいで戻るけど、出かけててもいいからね」

ウィンクして、階段へと向かう。

規則正しい足音が、小さくなっていくのを黙って見送ったアイレンは、部屋の中へと戻る。

(すぐ戻ってくるとは言ったけど……まさか、行きずりの女を捕まえてくるんじゃないでしょうね……)

モヤモヤとしながら、彼女は荷解きを始める。



しかし、その手はすぐ止まった。

「……依頼書…」

荷物の中からほんの少し顔をだす封書に目が行く。

(この街の長……ソイド・カルーシャがターゲットっていうのは読んだけど……)

彼女はライアから受け取った手紙を読み進める。

ゆっくりと読もうと思った時には、既にシズリーがいた。

寝る時間は別々だったけれど、幌馬車の中は薄暗く読めなかったのである。


(日時は明日の祭典の間……予想通りね………でも……余りにも単純すぎやしない?)

あまりにもざっくりとしか記されていない依頼書に彼女は疑問を持つ。


彼女は淡々と読み進める。

普段であれば最後の文章に報酬金額を記されて終わるのだが……

(ぇ?……殺しが目的じゃない?)

彼女は目を疑う。


彼女が請け負うライアからの依頼は、今まで暗殺しかなかったからだ。

そして、その手紙には更に続きがあり、その内容を読んで彼女は驚愕する。

(詳しくは……って、はぁ!!?)

彼女は依頼書を握りしめ、その場で立ち上がる。

部屋にかけられた時計を見たその時だった。



ーーーチリンッ―――


「っ!?」

聞き覚えのある鈴の音が耳を掠め、彼女はドアへと勢いよく振り返る。

息を殺し、耳を澄ませばドアの外から聞こえる声は二つ。

男と、少女の声だ。


その声を聴き

(………やっぱり……そういうことなのかしらね)

脳内で、まさかと思いながら彼女はゆっくりとドアへと近づく。



腰のポーチからナイフを取り出し、右手で握り瞼を伏せる。

一つだけゆっくりと、呼吸を吐き出し勢いよくドアを開け放つ。

(さっき鍵を締めなくて正解だった!)

自身の行動に感心しながら彼女は赤い髪を揺らし、ナイフを下から上へと袈裟懸けに翻す。

銀色の残像が、彼女の瞳を通り過ぎ慣れきった手付きでそのまま刃が振り下ろし獲物を捉えようとした。



しかし

「……随分、手荒い歓迎だな。アイレン・ストレシア」

手首を掴む、予想通りの人物にアイレンは

「……ちっ」

小さく舌打ちをする。


緑の髪を揺らし、左目で金色の瞳を睨みつけるのはライアだった。

「俺に敵うとでも?」

ギリッ……と彼女の右手首をライアは握る。


(……っ…!)

痛みによって、彼女の右手は力が抜ける。

カシャン。と乾いた音を立て、ナイフが床へと落ちる。


それを見て、ツインテールを揺らしナイフを拾い上げ

「手荒なのはライアだよねぇ。ハイ。返すね?」

ニッコリと微笑んで自由の利く左手にナイフを握らせるのは

「………リリア…」

金色の瞳を鋭くし、アイレンは呻き忌々しげに目の前の少女の名を呼ぶ。



それとは対照的に

「!!この間初めて会ったのに覚えていてくれたの!?嬉しい!」

驚いた顔を見せ、直ぐに嬉しそうに笑う。



(……忘れるわけないでしょうよ)

胸中で毒づいて彼女、アイレンはリリアを一瞥した後、ライアを睨む。


そして、

「なんでアンタと、彼女がセットなのかしら?」

彼女の疑問を無視する形でライアは

「依頼書は読んだか?」

尚も彼は、アイレンの右手首を掴み、見下ろしながら問う。

握りしめる力は弱められてはいるがー。


「さっき、読んだわ………ただ……」

チラリ。とアイレンは金色瞳でリリアを見つめる。

「リリアの人型精霊を使った。リリアまで来るのは計算外だがな」

「計算外?」

アイレンは、眉根を寄せる。


「ライアってば私の扱い酷くない!?」

チリンチリンッと、鈴の音を響かせてリリアはライアを見上げる。

フリルのスカートが揺れ動くのをアイレンは黙って二人を一瞥する。


「俺だけで来ると言っていたのに付いて来たのはリリアだろう?」

彼は、ため息をつき、アイレンの手首を掴んでいる手とは反対の手で彼女の頭を軽く小突く。


その様子を見ながら

「いい加減、離して欲しいんだけどね」

半眼でライアを睨み、彼女は文句を垂れる。

「悪いな」

一言だけ発し、彼はアイレンの手首を緩める。

「本当にね」

悪態をつき、アイレンはパシッと、勢いよく手を振り払う。


強く握られ赤くなった手首を見たのち、

「………ライア。アンタには聞きたいことがある」

目の前の、シズリーとはまた違う深い緑色の瞳を見据える。


「なんだ?依頼の件か?」

その問いにアイレンは首を横に振る。

「その小娘…リリアとの関係よ」

「………何処まで、何を知っている?」

問いかける彼に、腕を絡ませるリリアを見ながら

「さぁ?推測でしかないのだけれど……そこそこ仲がいいところまでは分かったわ」

彼女は部屋へと招き入れる。


「入って、教えろとの解釈でいいのか?」

「そうね。ここじゃ、いつ一般人に見つかるか分からないし」

嘆息して答える彼女に、

「混合種は?」

ライアは問いかける。

「シズリーのこと?アイツは出かけてるわ。ほら、早く」


急かすアイレンに

「ねぇ!私を無視しないでよね!!」

チリチリンッと鈴の音を鳴らしリリアが頬を膨らませる。

「……アンタに用はないの。あくまで私はライアと話がしたいのよね」

リリアの無邪気なオッドアイを、金色の冷徹な目で見ながら彼女は部屋へ入るな。と制止する。



「はぁ!!?あのね!ライアはッ……ふがっ!!」

威勢よく食らいついてくるリリアの口を塞ぎ

「計算が狂った以上、リリアにも今回の依頼は協力を仰ぐつもりだが?」

ライアがアイレンを見下ろし問いかける。


「……分かったわよ。どうせ私に拒否権なんて無いんでしょう?」

やれやれとため息をつき、アイレンは渋々二人を部屋の中へと招き入れた。

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