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もう一つの後悔

作者:

久しぶりの投稿です。


『後悔』

http://ncode.syosetu.com/n7635ca/




こちらの、別視点編となっております。よろしれけば、そちらもどうぞ。

 私が選んだ高校。それは、家から近く、ある程度のレベルの学校。だからなのか、幼馴染のあいつとも同じ学校になった。

 そんな高校生活の中で、私は好きな人が出来た。だから、その人に一生懸命アピールした。自分からは伝えられない気持ちに気が付いて欲しかったから。


 その一方で、逆に私なんかを好きになってくれる奴もいた。昔からずっと一緒。家族ぐるみの付き合い。そんな関係のあいつ。


 だからあの日、私は心のどこかで期待してた。好きな人がいると言いながらも、あいつの言葉を。



「あ、私今日こっちだから」

「あ……あぁ……」


 あいつの、どこか落ち着かない声。そんな声に罪悪感を覚えた。


「な、なぁ!」


 そして、私を呼び止める声。


「ん?なーにー」


 何も知らないふりをしながら、心の中で期待した。


「え、えっと……」


 もしかしたら、私もあいつの事が、どこかで好きだったのかもしれない。だから……。


「き、気を付けて行けよ」


 あいつの逃げの一言。それを聞いて軽蔑した。

 自分の気持ち一つも言えないのか、と。


「あー……うん!」


 そう思ってから気がついた。自分の事を棚に上げてることに。そして、あいつの好意を(もてあそ)んでることに。

 そんな自分が嫌になって、私は走った。まるで逃げるかのように。



 あの日から数日が経った。その間に、私の努力が功をなしたのか、アピールしていた相手から告白を受けた。

 もちろん私は、その告白を受け取った。


 今思えば、何故あんな事をしたのだろう。

 私は、付き合えた嬉しさにまともな思考が出来てなかったのか、あいつに酷いことを告げた。


「ねぇ!」


 教室移動中のあいつを捕まえる。


「ん?」


 そして、私は告げてしまった。あいつが今、1番聞きたくなかったであろう言葉を。


「出来たんだ」

「何が?」


 あいつは、顔を青くしたがら続きを促す。


「彼氏」


 言ってしまった。もう、後には引けないその言葉。


「それだけ」


 もし、過去に戻れるなら、この時の私を全力で止めたい。そう思える。


「バイバイ」


 手を振り、私はあいつから離れる。


「まっ……まって……待ってくれ……」


 あいつの、悲痛に満ちた声が聞こえる。でも、私は聞こえないフリをした。彼氏でもない相手のことなど、興味がないかのように。


 その日を境に私の隣を歩くのは、あいつではなくなった。



「今日もつっかれたー」


 気が付けば、私も25。大学時代の楽しい思い出も、高校時代の辛い思い出も、もう過去のこと。

 そう。過去のことだと決め付けてた。だから、不意に聞こえてきた懐かしい声に、動揺が抑えられなかった。


「はぁ……疲れた」


 実家が近所のはずなのに、もう長いこと顔を合わせることがなかったあいつ。いや……きっと、私が遠ざけていたんだと思う。自分のした事と向き合うのが怖かったから。


 視線で探せば、私と同じようにスーツ姿のあいつを見つけた。ただ、その隣には1人の私と違い私達より若い子がいた。


「先輩。それ、毎日言ってますよー」

「分かってるよ……」


 会社の後輩らしい。

 あいつを心から慕っているのが分かる。そして、彼女の目には尊敬とは別に、1人の異性としての感情も感じられた。


「ねぇ、先輩見て下さい!」

「なんだよ」


 見ていて、こちらが微笑ましくなる程のはしゃぎ具合い。


「あーあ……」


 どこで間違えたのかな。思い当たる節があり過ぎて、自分が嫌になるなぁ……。

 気付けば、2人の姿はなくなっていた。それが、さらに自分を惨めな気持ちにさせていく。


 だからなのか、自分の気持ちに素直に向き合える。私はあいつの事が好きだった。今なら分かる。今なら言える。だから伝える。


「ずっと……好きだったよ」


 誰もいぬその場で小さく呟き、後悔しかない過去を思い出しながら、私はその場を後にした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 過去作をうまく活かしているところ。 もどかしさがよく伝わってきます。 [気になる点] 過去作を読まないと関係性が判らないこと。 まぁ、これはこういう構造の作品全体の弱点でもありますが。 …
[一言]  気づいたときには遅いのかもしれません。
2016/09/26 13:32 退会済み
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