もう一つの後悔
久しぶりの投稿です。
『後悔』
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こちらの、別視点編となっております。よろしれけば、そちらもどうぞ。
私が選んだ高校。それは、家から近く、ある程度のレベルの学校。だからなのか、幼馴染のあいつとも同じ学校になった。
そんな高校生活の中で、私は好きな人が出来た。だから、その人に一生懸命アピールした。自分からは伝えられない気持ちに気が付いて欲しかったから。
その一方で、逆に私なんかを好きになってくれる奴もいた。昔からずっと一緒。家族ぐるみの付き合い。そんな関係のあいつ。
だからあの日、私は心のどこかで期待してた。好きな人がいると言いながらも、あいつの言葉を。
「あ、私今日こっちだから」
「あ……あぁ……」
あいつの、どこか落ち着かない声。そんな声に罪悪感を覚えた。
「な、なぁ!」
そして、私を呼び止める声。
「ん?なーにー」
何も知らないふりをしながら、心の中で期待した。
「え、えっと……」
もしかしたら、私もあいつの事が、どこかで好きだったのかもしれない。だから……。
「き、気を付けて行けよ」
あいつの逃げの一言。それを聞いて軽蔑した。
自分の気持ち一つも言えないのか、と。
「あー……うん!」
そう思ってから気がついた。自分の事を棚に上げてることに。そして、あいつの好意を弄んでることに。
そんな自分が嫌になって、私は走った。まるで逃げるかのように。
あの日から数日が経った。その間に、私の努力が功をなしたのか、アピールしていた相手から告白を受けた。
もちろん私は、その告白を受け取った。
今思えば、何故あんな事をしたのだろう。
私は、付き合えた嬉しさにまともな思考が出来てなかったのか、あいつに酷いことを告げた。
「ねぇ!」
教室移動中のあいつを捕まえる。
「ん?」
そして、私は告げてしまった。あいつが今、1番聞きたくなかったであろう言葉を。
「出来たんだ」
「何が?」
あいつは、顔を青くしたがら続きを促す。
「彼氏」
言ってしまった。もう、後には引けないその言葉。
「それだけ」
もし、過去に戻れるなら、この時の私を全力で止めたい。そう思える。
「バイバイ」
手を振り、私はあいつから離れる。
「まっ……まって……待ってくれ……」
あいつの、悲痛に満ちた声が聞こえる。でも、私は聞こえないフリをした。彼氏でもない相手のことなど、興味がないかのように。
その日を境に私の隣を歩くのは、あいつではなくなった。
「今日もつっかれたー」
気が付けば、私も25。大学時代の楽しい思い出も、高校時代の辛い思い出も、もう過去のこと。
そう。過去のことだと決め付けてた。だから、不意に聞こえてきた懐かしい声に、動揺が抑えられなかった。
「はぁ……疲れた」
実家が近所のはずなのに、もう長いこと顔を合わせることがなかったあいつ。いや……きっと、私が遠ざけていたんだと思う。自分のした事と向き合うのが怖かったから。
視線で探せば、私と同じようにスーツ姿のあいつを見つけた。ただ、その隣には1人の私と違い私達より若い子がいた。
「先輩。それ、毎日言ってますよー」
「分かってるよ……」
会社の後輩らしい。
あいつを心から慕っているのが分かる。そして、彼女の目には尊敬とは別に、1人の異性としての感情も感じられた。
「ねぇ、先輩見て下さい!」
「なんだよ」
見ていて、こちらが微笑ましくなる程のはしゃぎ具合い。
「あーあ……」
どこで間違えたのかな。思い当たる節があり過ぎて、自分が嫌になるなぁ……。
気付けば、2人の姿はなくなっていた。それが、さらに自分を惨めな気持ちにさせていく。
だからなのか、自分の気持ちに素直に向き合える。私はあいつの事が好きだった。今なら分かる。今なら言える。だから伝える。
「ずっと……好きだったよ」
誰もいぬその場で小さく呟き、後悔しかない過去を思い出しながら、私はその場を後にした。
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