Japanese MUKASIBANASI 赤頭巾ちゃん
むかーしむかし
あるところに赤い頭巾をいつもかぶっている女の子がいたそうじだ。
いつも被っているものだからしまいには親や自分でさえ赤頭巾と呼んでしまうほどであった。
とある日、赤頭巾のばあさまが病に伏してしまった。そこでかあさまが赤頭巾に
「赤頭巾や、ばあさまの見舞いに行ってくれ。お前が行けば大層喜ぶだろうからね」
と言いました。赤頭巾は大好きなばあさまの見舞いと聞いてよし来たと言わんばかりに見舞いの野菜を籠に詰め山へ歩いていきました。
山へ歩いている途中、坊さんに
「これそこの童女や、そんなに急いでどこに行く」
と呼び止められました。
「ばあさまの見舞いのため山に向かうのです」
と答えたら坊さんは困ったように言いました。
「わしは今、この山には子鬼が潜んでおると聞いて麓のお寺に助けを求めておったのだ。今山に入るのは危険だ」
「しかし、それならばなおさら行かねばなりません、ばあさまが襲われでもしたらと思うと居ても立っても居られませぬ」
それを聞いた坊さまは仕方ないとばかりに懐からお札を出して赤頭巾に渡しました。
「これは鬼怯みのお札じゃ、もし鬼に見つかってもこれさえ有れば逃げることは出来よう。しかし退けることは出来んぞ」
坊さまはそう言って山を下っていきました、赤頭巾は籠にお札をしまいながら去っていくお坊さんの背中に礼を言い、山を登っていきました。
途中、道端にユリの花が咲いているのを見て
「ばあさまの見舞いに野菜だけでは寂しかろうて、少し摘んでいこうか」
と足を止めてしまいました。それを草木の奥から子鬼が見てしまったからもう大変。
「しめしめ、童女が一匹山に入ってきおるわ、それに山に住む婆が病に倒れておるとは良いこと聞いたわい」
子鬼はまずばあさまを食べ、次いでばあさまの振りをして赤頭巾を騙して食ってしまおうと考え一目散に走っていきました。
そんな事もつゆ知らず、赤頭巾はばあさまの家に向かって歩いていきました。
とうとう、赤頭巾はばあさまの家に着きました。赤頭巾が戸を叩き
「ばあさま、ばあさま、赤頭巾が見舞いに来たよ」
と言いました、しかし家の中には既にばあさまを腹の中に収めた子鬼が布団の中で赤頭巾を待ち構えて追った。
「ああ、赤頭巾かい。待ってたよ早くお入り」
子鬼が返事をしましたが赤頭巾はいつもの優しい声でなくしゃがれた怖い声だと気づきましたが、病のせいだろうと思い直し部屋に入っていきました。
しかし、赤頭巾は一目見てばあさまの様子がおかしいと思い三つ尋ねました。
「ばあさまやなんて赤ら顔、まるで鬼みたい」
「う~む、熱が出て苦しいのだ」
「ばあさまや、目ん玉が黄色くてまるで鬼みたい」
「う~む、病のせいかもしれん」
「ばあさまや、なんとまあ大きな口まるで鬼みたい」
「う~む、それは……お前を食べるからだ! 」
子鬼はそう言うと布団から飛び出し赤頭巾に襲い掛かりました。赤頭巾は驚きのあまりひっくり返り籠の中身をひっくり返してしまったのです。
その時、
籠から飛び出た一枚のお札からまばゆい光が放たれて部屋を満たしました。あまりの光に子鬼はこれはいけないと部屋のから飛び出し裏の洞穴に逃げ出してしまいました。
それを見た赤頭巾は、ばあさまがいないことを知って子鬼に食われたのだと気が付き急いで坊さまの所に走っていきました。その途中で大勢のお坊さんを引き連れた坊さまと会い子鬼が洞穴に逃げた事、ばあさまが子鬼に食われたことをを伝えました。
「安心せい、ばあさんも助けたるわ」
坊さまはそう言うと赤頭巾の言う洞穴に行き弱った子鬼を大勢でふんじばり、皆でお経を唱えました。すると子鬼は途端に苦しみだして
「うが~苦しい」
口からばあさまを吐き出しました。これを見た坊さまはとどめだと言わんばかりに大きなお札を子鬼の額に貼り付け大きな声で
「カッーーーーーーーー!!! 」
っと一括するとたちまち煙となり消えてしまいました。
その後、子鬼がいなくなった山は平和になりばあさまの病も治ったそうだ。
めでたしめでたし。
赤ずきんではなく赤頭巾なのは昔話みたいだからです。