勇者の第2節2
雨は止んだ。
のぶあきはまずドロンの情報を集めようとした。
王都、のぶあきの元居城キングダムから少し離れた街。
ドロンと初めて会った街にたどり着いた。
街の名は無い。なの無い街と呼ばれている。
相変わらずの無法地帯だ。
モンスターを相手にし無い分さらに人同士の削り合いが激しくなっていた。
金を持つものと金を削がれ強制労働しているもの。
全ては自分のせいである。
のぶあきは知らぬ顔をし奥へ進んだ。
ゴールドバンク。あの時モンスターに襲われた銀行だ。
のぶあきは扉を開けた。
いらっしゃいませ。
外とは大違いの品性のある服を着ている奴らがいる。
「最近ドロンはきてないのか?」
近くの男に聞いた。
「ドロン様はここ1年は顔を出していません。今は裏稼業と表稼業で忙しいと聞きました。」
「裏稼業‥?」
「はい。裏稼業とは未だ闇で暗躍しているモンスターや人などを退治して政府から裏金をもらっているのです。そしてそれを仲介してるのが‥」
ここで男の声が止まった。
「これは勇者様には関係の無い事でしたね。お城に寝転がっているだけで良い生活なんですから」
「一つだけ言ってやる。今の俺はお城から放り出された冒険者だ。それにこの世界に俺より強い奴などまだまだいる。その裏稼業を引き受けたい。そのうちドロンにも会えるはずだ」
男は手で付いて来いとした。
のぶあきはついていく。
金庫とは違う地下へ続く道。
「モンスターに襲われた時この道が公になら無いか困っていました。ドロンさんには感謝してます。資金の提供もしてくれていますしね」
男と喋りながら奥へ来るとそこには魔界さながらの場所へと繋がっていた。
「こんなもんおおやけにできるわけがねぇ‥」
「流石勇者様。見た事ありますね、この紋章。」
エスベスト山山頂にこの紋章をみた。
魔界と現世をつなぐ術式。
なぜこれがこんなところに‥!?
「この術式は一番古い術式です。初代勇者が生まれ初代魔王を倒す時に倒した時の術式です。そしてこの街が全ての始まりの地。それ故に名前すらを消されました。」
「そんな事があったのか‥。じゃああんたはこの街の本当の名を知っているのか?」
「創世の地エデン。これが本当の名で代々私達に受け継がれてきた書に書いてありました。この事はドロンさんや勇者様他に私達一族が信用した者しか知りません。それ故に他言無用。」
男の声が変わる。
「他に漏らせばあなたであっても消されます。」
のぶあきは驚愕した。と同時に懐かしいものが蘇った。
冒険心。それ以外に何も無い。
人の為に魔王を倒した。人の為に何かをしたかった。
だが今は違う。あと冒険をもう一度したい。
のぶあきは腰に差してある剣を取る。
「天空剣ザンザスですか。良い剣です」
男は知っていた。何もかも知っている。
「俺は全ての街をみて、全てを知ったつもりでいた。だがそれは間違いだった。俺が旅に出て初期の街ですら俺の知ら無いことがあった。」
「あなたは表世界の勇者であっても裏の世界では少々名の知れた者です。のぶあき様これの最終目的はみな同じなのですが‥」
男は初めて顔に淀みを見せる。
「現世、魔界、どちらにも王がいる。現世の王は勇者様、魔界の王は魔王様。そしてどちらにもそれより強い者もいるのです」
「それってもしかして‥神か‥?」
「左様。神です。神様や魔神様もいられるのです。そして裏の世界の住民はみなしてこの方達を倒そうとするのです。なぜならば‥」
ゴクリッ‥。
のぶあきはつばをのみこんだ。
「神の力を手に入れようとするからです」
神の力を手に入れる‥だと‥。
「そんな事があるのか?そんな事をしてどうするんだ?」
「神の力がどの様な者かも私は知りません。それはあなた自身で探ってください。奥にドロンさんも居られるはずです。」
こんなドキドキするものがまだ眠っていたのか。
のぶあきはそれしか考えていなかった。
「ですが所詮は言い伝えです。神など口論上の絵なのかもしれません。それでもいかれますか?」
あぁ、俺は行くさ。
男には聞こえたのか聞こえて無いかはわからない。
どうでも良いのだ。のぶあきからすれば。
のぶあきは術式の中へ飛び込んだ。