魔法の目覚まし時計
「もっと寝たいなぁ……」
朝、起きる時にそんなことを思ったことはありませんか?
そんな願いを叶えてくれる目覚まし時計のお話です。
※改行多め
あるところに、小太郎という寝起きの悪い少年がいました。
どれくらい寝起きが悪いのかというと、農家の鶏が庭でけたたましく鳴いても、お姉さんが怒鳴りながら揺り起こしても、ぐーすかぐーすか寝ているのです。
夜は早く寝るように言い含めても、寝付きが良くなるまくらに使ってみても、一向に治る気配はありません。
学校に遅刻してばかりで先生にも注意されていたお母さんは、わらにもすがる思いで絶対に寝坊しないという目覚まし時計を買い与えました。
翌日、その目覚まし時計はベルを鳴らしました。
そして小太郎はベルを止め、そのまますとんと眠りに落ちます。
そのまま時間が過ぎ、お姉さんも今日に限って起こしには来ません。
小太郎ははっと目が覚めました。
そして目覚まし時計を見ます。
寝坊したと思いましたが、しかし時計は小太郎が寝る前に指定した時刻をさしてました。
小太郎はよくわからずに首を傾げ、そのままリビングに向かいます。
朝ごはんを用意していたお母さんが「あら、今日はちゃんと起きたのね。偉いわよ」と微笑みました。
新聞を読んでいたお父さんが「小太郎が早起きしたのか。雪でも降るんじゃないか?」と外を見ます。
今まで起こしに来ていたはずのお姉さんはまだ寝ていました。
小太郎はすごい目覚まし時計を手に入れたと喜び、その日から自分で起きるのが楽しみになったのです。
目覚まし時計を使い始めてから幾年も経ったある日、小太郎はついに夜更かししてしまいました。
簡単に終わると高をくくり、宿題を後回しにしてしまったのです。
小太郎にはこのまま寝ればいつもの時刻に起きれないことは分かっていました。
なのでその日は寝ないで学校に行こうとしたのですが、気付かないうちにうとうととし始め、ついには寝入ってしまいます。
小太郎ははっと目が覚めました。
そして目覚まし時計を見ます。
するとどうでしょう、時計はいつも通りの時刻をさしていたのです。
小太郎は夜更かしすることを覚えました。
学校が終わると友達と遊び、家に帰ってはゲームをし、深夜を過ぎたころでようやく勉強をし始め、日が昇る前に寝る。
そんな生活を続けていました。
それでも不思議なことに、小太郎が寝坊することはなかったのです。
しかし気付かなければいけなかった違和感に、小太郎は気付くことができませんでした。
小太郎が学校を卒業して働くようになったある日、小太郎は珍しく寝坊をしました。
いつまでも起きてこない小太郎に家族が不思議に思ってると、会社から電話がかかってきます。
寝坊だと気付いたお母さんは急いで小太郎を起こしますが、ぐーすかぐーすか眠り続けているのです。
お母さんは会社には病欠すると伝え、病気かもしれないと眠ったままの小太郎を病院に連れて行きました。
小太郎ははっと目が覚めました。
そして目覚まし時計を見ます。
しかし目覚まし時計はありません。代わりに見覚えのない部屋が、夕日で赤く染まっていました。
そばで心配していたお母さんが「大丈夫なの?」と訊ねましたが、小太郎には全く覚えがありません。
問答の末、ようやくここが病室であることが分かった小太郎は、お母さんに目覚まし時計を持ってきてもらうように言いました。
そして持ってきてもらった目覚まし時計は止まっていました。心なしか、色褪せて見えます。
小太郎は電池切れかと思い、目覚まし時計をあちこち調べてみますが電池蓋は見つかりません。
やがて気付きました。小太郎はこの目覚まし時計を電池交換したことがなかったのです。
慌てた小太郎はお母さんにこの目覚まし時計を買った場所を訊きましたが、お母さんは覚えてませんでした。
夜明けまで起きては気が済むまで眠る。
そんな生活を続けていた小太郎にはその目覚まし時計がどうしても必要です。
そのあと小太郎はあの手この手を使って目覚まし時計を直そうとしましたが、どんなに手を尽くしても直りません。
そのうち会社に病気ではなく生活の乱れで休んでいることがバレてしまい、会社をクビにされてしまいました。
そうして家には、動かない目覚まし時計と仕事のなくなった小太郎が残ったのです。
稚拙をお読みいただきありがとうございます。
長らく小説は書いてなかったのですが、知人にお誘いを受けたのでリハビリがてら参加してみました。どうでしょうか?
私は童話なんて書いたことなかったのですが、なんか知らぬ間にこんな感じになっていました(笑)
なんか敬語で書いてるとさくさく筆が進むんですよね。でも敬語の小説ってほとんどないよ!
私の方はそんな感じで。それでは失礼します。
著:ビークル