一人目9
二十歳から少しづつ時計貯金をしていた。
それが40万たらずあった。
結婚を前に夢の自動巻き時計を買いたいと思っていた。
正美にそれを話していた。
反対などするはずもない。
小野は趣味に浪費するタイプではなく。
堅実な男
「それで、何を買うの?」
「まだ迷ってるんだけど、ブライトリングかオメガかIWCか?」
「私がプレゼントしてあげる」
「ダメだよ!これは僕の夢なんだ。自分で買う事に意味があるんだよ」
小野は真剣な眼差しで正美に言った。
正美もそんな真剣さに喜びを覚えた。
この人だったら幸福になれると。
時計は次の休みに上野で買った。
悩みに悩んで、ブライトリング クロノオーシャン ヘリテージを買った。
潤沢なある訳ではない予算の範囲で買える物。
ケース径が46ミリと大きなタイプ
腕につけた時に、日々フライパンを振ってる小野の腕には大きく感じずにフィットしていると正美は思った。
小野はまるで子供が欲しいおもちゃを買ってもらったかのごとく喜び、目を輝かせていた。
36ミリのタイプを正美はペアとして購入した、
小野と気持ちを共有したかったのだ。
しかし、正美にとってはこれが小野との最後のデートになった。