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一人目4
相変わらずポカポカした陽気は続いていた。
小野は学生から視線を動かした。
相変わらず子供達は全身で楽しんでいるようだった。
さっきと反対側に小野より少し若そうな男が本を読んでいた。
真剣に本を読む男はカッコイイ雰囲気ながら、芯の強さを感じる横顔だった。
小野は彼みたいな感じだったらどうだったかと考えた。
高校を卒業後、都内の洋食屋に就職した。
元々手先が器用だったので、仕事はすぐに覚え、毎日忙しく働いた。
結構人気のお店ですぐに店舗展開し始めた。
小野も充実した毎日を過ごしていたが、ある日、店に泥棒が入った。
対した被害はなかったが、前日の最後に帰ったのが小野でだった。
鍵をかけ忘れた訳ではなかったが、それを責められた。
実際は納入業者の鍵の閉め忘れだったが、小野は何も弁解せず、自分の不注意を詫びた。