一人目3
最後の晩餐、そんなカッコイイものではない。
空腹で野垂れ死ぬ樣なことは嫌だと思っていた。
最後くらい美味しい物を食べ、満足感の中で人生を終えたいと思っていた。
ただ、残された現金は1231円!
決して散財できる金額ではない。
納得いくまで考えたいと、このベンチで考えていた。
目の前を子供が走り回るのを見ながら考え続けた。
「オムライスかハンバーグか」
食べたい物はいくらでも湧いてでてきた。
この一年あまりは我慢に我慢をかせねて過ごしてきたのだから。
「やっぱ、肉食べたいなぁ」
考えては所持金の少なさで消えていくのが半分近く。
小野はふと隣のベンチで考え事をしている学生さんに目を止めた。
あのくらいの時は何がご馳走だっただろう?
金持ちではないが、貧乏ではなかった子供時代。
小学5年の時に父親が死んだ、病気を苦にした自殺だった。
優しい父親だったが、昔の事故の後遺症で苦しんでいた。
母親もそんな父親の面倒に疲れていた。
そんな時の自殺は悲しみはあったが、同時に開放感もあった事は否めない。
小野が高校にあがると、母親に男ができた。
相手は小さな酒屋の店主だった。
悪い人ではなかったが、今まで父親の看病をみて、その後は女で一人で小野を育てていた反動なのか、どっぷり男に溺れた。
あまり家に帰らなくなった母親
小野はバイトに明け暮れる樣になった。
最初は定番のハンバーガーショップ
夕方から閉店まで、毎日ハンバーガーを作り続けた。
バイト終わりに貰える、残り物や失敗した物など、小野は喜んで持ち帰り食べた。
「ハンバーガーかぁ」
これならいくつかは買える。
ただ、最近はハンバーガーも安い物があり、金の無い時などの定番だった。
「違うなぁ」
小野はまた独り言を言い、その何か考え中な学生を見ながら、彼には明るい未来があるよね。いや、きっと明るい未来があると願った。