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一人目13
仕事は単純なものだった。
ベルトコンベアーで流れてくる部品にハンダ付けしていく。
何も考えずただ黙々と。
小野にはそれで十分だった。
寝る場所も飯もあり、決して多くはないが給料もある。
人と係わり合う事に抵抗があった。
また、今までと同じ様な事が起こる。
そんな恐怖はいつも頭の何処かにあった。
その中で唯一の友達がいた。
ブラジルからの出稼ぎ労働者のシジマール。
ブラジル人のなかでも一際陽気な男だった。
歳は小野と同じ、褐色の肌に白い歯、少しちじれた髪でちょっとした優男だった。
シジマールは事あるごとに小野に話しかけた。
最初は警戒していた小野も何時しか彼とは話すようになった。
その頃の唯一の救いだったかもしれない。