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一人目11
「だったらそれは何だ!」
オーナーマスターは小野の左手に光る時計を指差した。
「これはこの前の休みに自分で買ったんです。」
「そんな高価な時計をどうしたら買える」
オーナーマスターの追求は続いた。
「二十歳からずっと貯めていたもので買いました。正美さんに聞いてください」
小野も必死だった。何も嘘はついていない。
自分で貯めたお金で確かに自分で買った。
何一つやましい部分は無い。
「正美まで巻き込んだのか!」
オーナーマスターは全く信用する気配な無かった。
「仕方が無い、金は目をつぶってやる。その代わり、御礼の前に二度と顔だすな」
青天のへきれきだった。全く予期もしていない言い掛かりだった。
オーナーマスターには取り付け島も無かった。
小野はただ悔しくて情けなくて、握りこぶしを握り締める他なかった。