10/16
一人目10
幸せから一転した。
小野はいつもの様に店の後片付けをしていた。
忙しい一日の最後にきっちりする、
この時間をいい加減にはしなかった。
「肇、お前何か隠してないか」
オーナーマスターが帳簿を付けながら言った。
「いえ、何も無いですけど」
小野は心当たりも無く、即答で答えた。
「お前、仕入れの金をごまかしていないか」
まさかの疑いだった。
店の金に手をつける、考えられない事だった。
小野は真面目で誠実な男
「そんな事してません!何かの間違いです」
オーナーマスターは小野の言葉など聞いていないかの様に叱責した。
小野は訳がわからなかった。
言われ事のどれもが身に覚えの無いことばかりだった。
混乱していた。