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第四話 ピンクの来訪者

同時投稿ダァ?できらぁ!

「周囲、ヲ、スキャン中…損傷、ノ、少ナイ、建物、ヲ、検出。要救助者、ノ、可能性、アリ。」


13日目

「死ぬかと思ったぁぁ〜」

 天災から生き延びた少女が、全ての重荷を下ろしたような、緩み切った顔をしながら言う。しかし、生き残ったからにはやることが山積みである。

「缶詰、服、地図、ヨシ!どれもしっかりある。」

 必要な物は流されていないようだ、ひとまずは安心だ。しかし、何かが足りない。何かを忘れている。

「なんか忘れているような…気のせいかな…」

 そう考えていると、幼女に背中を叩かれる。構って欲しいのかと振り返ると、幼女は"忘れていた物"を指差した。

「あっ…お手伝い人形が…」

 避難するときに屋根に上げるのをすっかり忘れていた。直し方も使い方も分からない三型は何処かに消えて、二型は装甲が剥がれ、"足"として使っていた一型は見るも無惨な姿となっていた。

「消えたの…探そ?」

 幼女はそう言うが、使い道も分からない物のために危険を犯すことはできない。

「…ごめんねニコちゃん、危ないからできないよ。」

 幼女を宥めつつ、生存計画を練る。災害で地形や建物、見つけていない物資のほとんどが流された。遠くに行く必要が出てきた。

「でもたくさんは運べないし...」

 やはり一型の損失は大きい。食料を今まで以上に切り詰める必要があるかもしれない。雨さえ降らなければ、津波さえ来なければこんなことには...いや違う。

「津波が来てよかったと考えるんだ。良くないと思うから、良くない理由を考えるんだ。」

「おねいちゃん...どうしたの?なんか変だよ?」

 自問自答が幼女を怖がらせてしまったようだ。無理もない、頼れる相手がぶつぶつ言いながら目も合わせてくれなかったら、誰だって不安になるものだ。しかし、少女の頭は止まらない。

「そうだ...津波はすべてを流し去る。ならナイトメアだって連れ去られるはずだ!」

「家の周りを片付けたり、安心して寝たりする絶好のチャンス!なら最初にやるべきことは...」

 少女が導き出した”最初にやるべきこと”それは...

「家を直さないと...」

 まずは身近なところからだ。一番使うものに一番労力をかける、人類史が繁栄し続けた理由でもあり、基礎的なことでもある。そのためには、まずはご飯を食べるべきだ。


 今まで食べていた「白飯」は底をつき、未知の食材である「赤飯」を食べる時が来た。プルタブを引いた先にあったのは、赤黒く変色した塊と、薄いピンク色をしたお米がこちらを覗いていた。

「...うわぁ」

 想像を絶する見た目に琴音は戦慄するが、虹心は違った。何のためらいもなく赤飯を掬い取り、食べた。な外から見たら「まだ子どもっぽい姉と大人びた妹」のようにも見える。少し情けなく感じたのか、ニコからの冷たい視線が、琴音を突き刺す。

「ええい、ままよ!」

 ようやく覚悟を決め、赤飯を口に運ぶ。赤黒い物体の何とも言えないもさもさ感と少し味のついたお米で、何とも言えない感情になる。特にお米が妙にしぶとく、噛めば噛むほど粘り気が増して、顎が疲れてくる。

「モチモチモチモチモチモチモチモチモチモチモチモチモチモチモチ」

 はっきり言おう、気に入らない。あんまり美味しくない。そんな文句が頭をよぎり続ける中、扉開く。

 「モチモチ...チ?ち」

 二人が扉のほうを見ると、ピンク色で人型の”何か”がそこに立っていた。


 しっかりとした足。胴体にはたくさんのぽっけがついていて、何かをひっかけれそうだ。手首周りは用途不明の凹凸がみられる。何かの花びらを張り付けたような頭がこちらを向く。初めて見るはずなのに「懐かしさ」を感じる。そういえばお姉ちゃんが喋らないけどどうしたんだろう?

「よし!よし!よし!」

 どうしたんだ?

「助かった!助かったんだ!」

 多分違うよ。

「助けが来たんだ!」

 来てないよ。

「お姉ちゃん...そいつ人じゃないよ...」

 一瞬の沈黙、お姉ちゃんはゆっくりとこちらを向く。その顔には少しの涙があった。

「そんなわけ...ないよね?」

 かすれたような声でこちらに問いかけてくる。

「人間...だよね?」

 お姉ちゃんの涙は少しづつ大きくなり、やがて頬からこぼれ落ちる。

「思い出したの。」

 こいつの名前。

「教えるね。」

 残酷な事実。

「一型...人の入ってない一型...」

 膝から崩れ落ちた少女をしり目に、一型は音を発する。

「大丈夫、デスカ。助ケ、ハ、来マス。ココ、ニ、イマショウ。本部、ト、連絡中...応答、ナシ。」

 その音を聞いた途端、琴音は地面にうなだれ、大粒の涙をこぼし始めた。心の隅のどこかにあった、大海に生まれた泡のように小さな希望。小さくても残っていたからここまで頑張れていたのだ。

「なんで...なんで...」

 こちらにすり寄り、小さな胸の中でさらに泣き始める。その涙を掬い取り、手に乗せる。立った一滴の水だが、津波より重く感じた。あぁ、私はまた泣かせてしまった。胸の中で小さくなっている琴音を優しく抱く。今の私にはこれくらいしかできない。あぁ、私は、なんてことを。

 助は来ない、少女たちの二人ぼっちの生活はまだ続く。遠征はできるようにはなった、希望が気泡のように消えてしまったから。

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