表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

K&K:胡桃ちゃんと暦ちゃん

タンゴの赤オニ青オニ

掲載日:2026/02/22

赤鬼さんは近くの村人たちと仲良くなりたいと思っていました。

霜月透子様主催のひだまり童話館*「またねの話」参加作品です。

 むかしむかし、丹後(たんご)の国の大江山(おおえやま)に、なかのよい二人のオニさんがすんでいました。

ひとりはツノが一本の、女の赤オニさん。

もうひとりはツノが二本の、男の青オニさんです。


 夜になると、月あかりの下で、ふたりは向かい合って手をつなぎ、くるくると楽しくおどりました。

山には、たいこのような足音と、えがおがひびいていました。


 ある日、赤オニさんが、ぽつりと言いました。


「ふもとの人間さんたちと、なかよくなれたらいいなあ」


 それを聞いた青オニさんは、しばらく考えてから言いました。


「じゃあ、ぼくがわるものになるよ」


「えっ?」と、赤オニさんは目をまるくしました。


「ぼくが村であばれて、きみがそれを止めるんだ。そうすれば、きみは人間となかよくなれる」


 でも、赤オニさんは首をぶんぶんふりました。


「そんなこと、できないよ。だれかをこわがらせるなんて、いやだもの」


 青オニさんは、何も言わずにうなずきました。


 それから、何日かたちました。

大江山の近くの漁村(ぎょそん)で、ふしぎなことが起こりました。

海の水が、ずるずると引いていき、いつもは見えない海の底まで見えています。


「おかしいなあ」


 村人たちは首をかしげました。

話を聞いた年よりの村長さんは、顔色をかえました。


「まさか…… 大津波(おおつなみ)の前ぶれじゃ」


 そのときです。


「オニが出たぞー!」


 という悲鳴が聞こえました。


 浜辺(はまべ)では、赤オニさんと青オニさんが、金棒(かなぼう)をぶんぶんふりまわしていました。

どーん!と砂浜(すなはま)をたたくと、砂けむりがもうもうと上がります。


「おらおら! この村はオレたちが占領(せんりょう)するぞ!」


「いたい目にあいたくない人は、早く出ていってね!」


「わーはっはっは!」


「みんな早くしてっ。なるべく高いところに行きなさいっ!」


 村長さんは、ハッとして、さけびました。


「みんな、今すぐ高い(おか)()げるんじゃ!」


 村人たちは、必死に丘まで走りました。

丘の上で、だれかが海を指さしました。


「あれを見ろ!」


 沖のほうから、山のような津波がせまってきたのです。

津波は村をのみこみ、家々をおし流していきました。村人たちは、ことばも出ませんでした。

そのとき、丘のそばを、二人のオニさんが通りすぎようとしました。


「ちょっと待ってくだされ」


 村長さんが声をかけました。オニさんたちは立ち止まり、村長の方をむきました。


「ほんとうに、ありがとうございます。わしらを逃がすために、わざとあばれたのじゃな」


 オニさんたちは、頭をかきながら言いました。


「……バレてたか」


 そのあと、二人は村の復興(ふっこう)を手伝いました。

重い木を運び、こわれた家をなおしました。

夜になると、手を取り合って、見たこともない楽しいおどりを見せてくれました。


 やがて村が元どおりになると、オニさんたちは山へ帰ることにしました。


挿絵(By みてみん)


 去っていく二人に、村人たちはいつまでも手をふりました。

村の子どもたちも「またねー」とさけんで、大きく手をふります。

オニさんたちも、何度もふり返って手をふりました。


 その夜、大江山では、いつもより少しだけ、やさしい音のおどりがひびいていたそうです。


 * * *


偉文(たけふみ)くん。この話って歌の『赤鬼(あかおに)青鬼(あおおに)のタンゴ』が元ネタ?」


 安アパートで(ひと)()らしをしている(ぼく)の部屋に、従妹(いとこ)(こよみ)ちゃんが遊びに来ている。

彼女はとても物知(ものし)りの小学生だ。僕が書いた絵本の案を見ている。


「そうだよ。他に『泣いた赤鬼』とか『いなむらの火』という絵本のネタもいれている」


「ふうん。丹後(たんご)の国って京都だよね。日本海側だから、津波は少ないと思うんだよ」


「うん。津波は太平洋側より数は少ないのは(たし)かだ。そのぶん、住民が油断(ゆだん)していて、たまに津波に来たときに被害(ひがい)が大きくなることもあるみたいだ」


 絵本の『いなむらの火』は、津波がくることに気づいた老人が収穫(しゅうかく)した(いね)に火をかけるんだ。おどろいた住民が高台の稲のとこに集まって、津波の被害をまぬがれる話だ。

ちなみにこっちの舞台(ぶたい)大阪湾(おおさかわん)だから、太平洋側である。


「偉文くん。お話のラストは、鬼さんのおどりが村に代々と伝わって『赤鬼と青鬼のタンゴ』の歌になった。とすればいいんだよ」


「それは僕も考えたんだけどね。昔の日本でタンゴは合わないんだよ。リズムが違いすぎる」


「昔の日本の鬼の正体は、漂着(ひょうちゃく)した欧米人(おうべいじん)だった、という説もあるんだよ」


「西洋のダンスならありだけど、タンゴは19世紀(せいき)の南米が発祥(はっしょう)だからなあ……」


 暦ちゃんは少し考え込んで、それからニコッと笑った。

この顔はまた変なことを思いついたかな。


「大江山の鬼だから、金太郎(きんたろう)を登場させるんだよ」


 いや、鬼退治してどうするんだ。

暦ちゃんの豆知識

挿絵(By みてみん)

「大江山の悪いオニを退治する昔話もあるんだよ。鬼退治した武将の家来に坂田金時がいるんだよ。金時は大人になった金太郎のことなんだよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひだまり童話館「またねの話」 概要

参加作品一覧
i267677


今回と同じ舞台のお話はこちら。
[K&K:胡桃ちゃんと暦ちゃん]

作者アホリアSSの別作品はこちら
新着投稿順
人気順
― 新着の感想 ―
泣いた赤鬼を彷彿とさせられ、切ない展開!?かと思いきや、津波から守る鬼たち。そして住民たちもそれを汲んでくれるステキ展開!でしたね(n*´ω`*n) ラストの鬼退治にはめっちゃウケました! ためになる…
いつもながらのためになるお話、ありがとうございました。 確かに、鬼って漂着した白人のような、そんな雰囲気がありますね……。 そして、今回はひだまり童話館定期開催の最終企画ということでした。 今まで、…
泣いた赤鬼のお話はすごく泣いてしまいますが、このふたりの鬼たちはすごくほっこりできました。 桃太郎が出てきたら……。 村中バッドエンドになりそうな、そんな気もしました。 読ませていただきありがとうござ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ