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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

過ぎ行くルール

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 うん……この時間だと、車の数もめっきり減ってしまうな。まあ、昼間みたいにびゅんびゅんと行きかうことがあったなら、すわ一大事とか思っちゃうけれど。

 今はこうして、人も車も同じ地上を行き来している。ゆえに接触事故などは現代になっても絶えないが、SFみたいにどちらかが空を飛ぶなりしてスペースを有効活用できれば、その手の事故は減るかもしれないね。

 いや、手放しで喜べるかというと別だけど。空飛んでいるときに、うっかり故障で墜落なんてことになったら、路上でエンストするよりはるかに命が危ない。さらに今度は飛んでいる鳥なんかに注意しなけりゃ、やはり事故の原因となるだろう。

 人間が日々、交通ルールを確かめてしみ込んでいる存在だからマシだけど、彼らに一から交通法を学ばせるのは骨が折れそうだしねえ。フライト関連は将来の人たちの課題になっちゃうかもしれない。

 いや……ことによっては、我々のほうがあまりに遅れていて、かえって迷惑をかけている可能性もなくはないかもね。

 僕もちょっと前に不可解な事故に出会っちゃったことがあってさ。そのときの話、聞いてみないかい?


 そのリードは、あまりに無造作に道路へ投げ出されていた。

 朝早くに、家で決まっているゴミ出し当番を引き受けて、ゴミ捨て場までの数十メートルを歩く中で僕はそれを見つけたんだ。

 リードの先端、首輪の部分には犬のものと思しききつね色の毛がちらほらとこびりついており、直前まで使用されていたのを物語っている。

 車道へ放り出されたそれを見れば事故にあったのではないか、と容易に想像できてしまうが、首輪も持ち手側もその間のひもに至るまでも汚れや血のりは見られない。

 犬も飼い主もその場でたちどころに逃げ去ってしまった……という風に思うのが自然だったんだ。かくいう僕も「妙なことをするもんだなあ」とひとりごちながら、そのままスルーし、ゴミ出しを終えていつもの朝へ戻っていったよ。

 何日も経ってから小耳にはさんだのだけど、そのリードは隣の地区で一人暮らしをしている家主が使っていたものの可能性が高いとされた。

 僕がリードを見た日の前後あたりから飼い犬ともども、姿を見せなくなっているとのことだったよ。


 それからほどなくして。

 再びゴミ当番を仰せつかい、ゴミ捨て場へ足を運んだ僕は顔をしかめてしまう。

 カラスたちだ。カラス除けネットを使うようになったゴミ捨て場であっても、出す人の不注意なのか、はたまたカラスたちがネットの性質を学びきったのか。半端にはみ出ているゴミ袋の端を器用についばんでは、引きちぎる。

 そこから生ごみのかけらや、お菓子の破片などが引っ張り出されては、ちょちょいと連中につままれていった。こちらが近寄るといったんは距離をとって――飛ばずに、ぴょんぴょん跳ねて間合いを取るあたり、なめられている感もあるが――完全には逃げずに、ことが済むのを待つのも、すでに彼らの学習内容なのだろう。

 自分が離れたら、またゴミたちをあさりだすに決まっている。そのせこさも気に入らず、石でも投げてやろうと思ったところで。


 チリンチリンと、ベルの音。

 経験から自転車のものと分かり、とっさに道の端へ寄ったものの、そこではじめて自転車の姿があたりにないのに気づいた。

 え? と首をかしげる間に、間合いをあけながらも歩道にたむろしていたカラスたちの鳴き声が短くあがったかと思うと、唐突に途切れてしまう。

 見ると、ほんの先ほどまでカラスたちが足をつけていたところに、何もいなくなっている。いや、厳密にはいくらか黒羽が散らばっているものの、それをのぞいたカラスたちの痕跡は残っていない。

 ばっと、いまさらながら遅れて飛び去った連中は、たまたま近くのブロック塀の上などへ避難していた面々。先を争うようにして去っていくあたり、僕が見損ねていた同胞のてんまつを目の当たりにしていたのだろうか。


 それからも、本来なら聞こえるべきでないベルやクラクションを聞き、とっさに身をかわすそぶりを見せると、近くの生き物がぱっと消える……ということは何度かあった。

 もし、彼らが「交通事故」に巻き込まれているならば、この世界の我々も学ぶべき交通ルールがまだある。あるいは新たにできあがり出しているのかもしれないな。

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