第5話 メリーゴーランド
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小雪舞う『夢の国』。
普段は静寂に包まれているであろうそんな群馬の山奥でのサバイバルは、まだまだ続く。
麓の街では、この山奥でそんなドンパチが繰り広げられている事など、夢にも思っていないのであろう。
そんな『夢の国』で、ポールと離れ離れになったエマの方はと言うと、
ドッカ~ン!
「なっ、なんだ?!」
突如立ち上がった大爆音と、地球が割れたかのような地響きに、思わず口をあんぐり。
見れば東の方角、即ちポールが逃げ落ちていった『ミラーハウス』から、モクモクと黒煙が立ち上がっているではないか。
天井も壁も完全に崩れ落ちている。まるで巨人に踏み潰されたかのような有り様だ。
まさかあいつ......
また幻覚でも見たってか?
それとも敵に追い詰められた?......とか。
どっちに転んでも、あの爆発の大きさはうちら仕様の手榴弾だ。
少なくとも敵がポールを攻撃する為に使用したものじゃ無い。まぁ、それがせめてもの救いだけどな......
ポールもそれなりに経験を積ん来てる。きっとあいつなりに最善の策が手榴弾だったんだろう。
そんなポールの身を案じる心優しきリーダーは一体今どこに居るのかと言うと、
パンパラパパ、パンパパン......
パンパラパパ、パンパパン......
なぜだか、『メリーゴーランド白馬の王子』の馬の影に身を潜めていたのである。
なんでまたそこに居るんですか?
そんな質問に対しての答えは、ただの成り行き。としか言い様が無い。取り敢えず隠れたら、たまたまそこだったと言う経緯だ。
まぁ、それにしてもよく回ること、回ること......
七色に輝くスポットライトの下、馬が居て、カボチャの馬車がいて、なぜだか人魚が居たりもして......
『メリーゴーランド』だけに、回っていないと仕事にならない訳ではあるが、一向に止まる気配を見せない理由は七不思議としか言いようが無い。
やたらとメルヘンチックな空気に包まれる中、なぜだか人魚の首がもげて足元に転がってる。
首がもげてもなお笑顔を絶やさないこの人魚は、きっと仕事熱心なのだろう。そこだけは見習わなきゃならない。
そんなエマが勤勉なる生首に向かって、南無阿弥陀仏と念仏を唱えたその時だった。
プシュン!
遠くで銃声が轟いたと思えば、次の瞬間には、
バシッ!
人魚の生首が木っ端微塵に四散した。破片が頭に降り掛かってくる。
見付かったか?!
エマが反射的にカボチャの馬車の影へ飛び込むと、
プシュン! プシュン! プシュン!
今度は3発の銃弾がエマの頭を掠めて今度は馬車を粉砕した。
さすがに年期ものだけあってやたらと脆い。とてもじゃ無いけど、銃弾の盾としては役不足と言わざるを得ない。
とにかく撃つことしか能が無い敵の単純攻撃ではあったが、撃ち手がこれだけ多いと、さすがのエマも防戦一方と成らざるを得なかった。
こりゃいかん!
エマは直ぐ様馬車の屋根を剥ぎ取ると、今度はそれを盾替わりにしてみた。
幸いにもそんな屋根は鉄板で出来ていた。再びスナイパーが弾を射ても、屋根は『なめんなよ!』と言わんばかりに弾をはじき返してくれる。
取り敢えずは一安心......などと優雅に茶を点ててる場合でも無かった。
見付かってしまった以上、いつまでもこんな所でセレブを演じている訳にもいかない。数秒後には取り囲まれてお陀仏間違い無しだ。
とにかく、身を移さないと......
そんな訳で、
1、2、3、はいっ!
『メリーゴーランド』から一気呵成に飛び出したエマは、次なる退避場所へと一目散に駆け出して行った。
エマがステップを踏む度に、地面の上に張り付いた氷が砕け散る。
飛び散った氷は『メリーゴーランド』が放つ七色の光に反射し、まるで虹のように見えたりもする。まぁ、『夢の国』と言うだけの事はある訳だ。
やがて、そんなエマが無事辿り着いた次なる『退避場所』はと言うと......
ガタン、ガタガタ......
今度もまた回っていたのである。しかも今度は密室。




