第3話 課外授業 冒険者の仕事【前編】
「えー、今日は午後から課外授業で冒険者の仕事をしてもらう、皆知ってると思うが15歳から冒険者登録をするのが昨年から義務化された。国から指示があって、こう言う形で冒険者登録をさせてもらう」
俺が通っている翠文海高校の1年2組担任、高橋一歩先生が真面目な表情で言う。
俺はもう冒険者登録してあるから楽だな、国はなんで冒険者登録を義務化したのか未だにわからない。
「んで、既に登録してある水谷豪、大崎忍、金子彩は、先生と一緒に皆が登録を終えるまで準備を手伝ってくれ」
「はーい!」
元気よく返事をしたのは先程呼ばれた金子彩さんだった、黒髪ポニーテールで丸顔、そして身長が低い彼女は男子から人気がある。
「いい返事だ、じゃあここらへんでショートホームルームを終わりとする」
「起立!」
挨拶担当の男子生徒が起立と合図をすると、俺も含めてほぼ全員同時に立ち上がった。
「気おつけ、礼、ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
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昼休みが終わるチャイムが鳴り、鳴り終えたと同時に先生が勢いよくドアを開けた。
「よーし、皆昼ごはんちゃんと食べたよな? まぁ食ってなくてももう時間だから行くが……とりあえずバスに乗る。30分くらいした場所にギルドがあるからそこに向かうぞ」
「先生、まだご飯食べ終わってないんですけどバスで食べてもいいですか?」
「駄目だ、時間配分を考えて次から食べてくれ……というか原田、この前もそんな様なこと言った記憶あるぞ?」
金髪で高身長のコミュ力が半端ない原田翼さんは、毎回飯を60分間かけて食べている。その原因は友達と喋りまくって全くご飯に手をつけてないから。
「運転手さんも待ってることだし貴重品を持って移動するぞ、5分待つから準備してくれ」
1年2組の生徒1同は貴重品をカバンに詰めて学校を出て、敷地内の駐車場に停めてあったバスに乗り込んだ。
「みんな座ったみたいだな、よし! 今日バスを運転してもらうのは米澤秀人さんだ、みんな挨拶」
「よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくお願いします」
「まず最初に向かうのは、ダンジョンではなく、ギルドだ、そこで冒険者登録をしてからダンジョンに向かう」
バスはゆっくりと発車し、学校を後にする。
学校の屋上では、先生方が手を振って見送っていた。
バスが発車した後も先生の説明は終わらない。
「冒険者登録をしたらDランクダンジョンに潜ってもらう、初心者向けだが油断はするなよ? 命に関わるからな」
Dランクダンジョンでも命を落とした冒険者が少なからずいる、主な原因はダンジョンを甘く見て強化アイテムや回復アイテムを何1つ持っていかなかったこと。
そしてたまにそのダンジョンにいるはずのない格上の魔物がいることがある。あの時のデュラハンみたいな……。
「あの配信みたいに、デュラハンみたいなのでたら怖いんですけど」
と、隣に座っていた希子さんが呟いた。
「大丈夫だ、今回はAランクパーティーの『火の鳥』を呼んでいるからな! そういう事態になると危険だからと国の命令で動いてくれたんだぞ」
先生の火の鳥が来るという発言でバス内が一気に騒がしくなった。有名人だけあって凄い盛り上がりだ。
「静かにしろ、そろそろギルドに着くから準備して待っていてくれ」
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ギルドの駐車場に到着した生徒1同はバスから降りて直ぐにギルドの玄関に向かった。
「全員背の順に整列してくれ、ここで一旦火の鳥が来るまで待ってもらう、登録済みメンバーは整列しないで俺に着いてきてくれ」
先生は手招きをしてギルドの中に入っていった、それを俺とその他登録済みメンバーは早歩きで追いかける。
ここは俺がいつも使っているギルド、俺の住んでいる新潟県にはギルドが3つある、まずここの西区、そして中央区、最後に東区だ。俺はただ近いからという理由で西区のギルドを利用してる。たぶんみんなそういう理由が多いだろうなぁ。
「よし、水谷と大崎、金子には生徒に指導をしてもらいたい、勿論先生もするんだが人数が足りなくてな、すまないが戦闘のやり方を教えてやってくれ」
「先生、俺……教えるの無理なんですけど、怖い」
びくびく震えながら、大崎さんは右手を上げて言った。顔は長い前髪で隠れていて見えず、低身長で細い体をしている。」
わかる、教えるの難しいよね。
「うーん、じゃあ前に出てとにかく戦っている姿を見せてやれ、たぶんお前の印象凄い変わるぞ」
大崎さんは確か俺と同じBランク冒険者だったな、戦闘してる大崎さんを見たことないから見てみたいな。
「そろそろ火の鳥のメンバーが来るはずなんだが……というか待ち合わせ時刻はもう10分前に過ぎてるんだが、遅すぎるな」
先生は困った表情で右腕に付けている腕時計を見て言う。
「すいませんっ! 笹団子食べてたら遅れました!」
声が聞こえた方へ振り向くと走ってこちらに向かってくる火の鳥メンバーの姿があった。笹団子食べてて遅れるとか本当に好きなんだな。
「勘弁してくれ、一応国の命令なんだぞ」
「本当、すいません」
「とりあえず、火の鳥メンバーは待っている他の生徒と合流してくれ、待ちくたびれてるだろうな」
火の鳥メンバーは他の生徒が待つ場所に向かって走っていった。
「火の鳥の役割は他のメンバーの冒険者登録するのを手助けするのと、戦闘を教える役割だ、俺たちは先にDランクダンジョンに向かい色々と準備をするからよろしく頼むぞ、時間があいつらのせいでやばいからもう車に乗って早速行くぞ」
先生と登録済みメンバーは足早に駐車場に向かい他の生徒たちが火の鳥メンバーと話をしている所を素通りして車に乗り込んだ。
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