とあるエルフの貴族
最近森の片隅にすんでいたエルフが消えた。
それだけならばよくあることだ。
エルフは長い寿命を持っており気まぐれに生きる。
だがそのエルフは外に出るようなタイプじゃなかった。
むしろ病弱でほとんど家の外に出なかったはずだ。
そのエルフは市民の間では聖女といわれていた。
彼女の作る回復ポーションはとても高い効果があった。
彼女のポーションを使えば傷は瞬時に治った。
さらに彼女は万能ノ霊薬すら作ることができた。
万能ノ霊薬は身体の部位の欠損も、どんな病気も治すことができた。
しかし彼女はそんな回復ポーションも万能ノ霊薬も貴族からしか金を取らなかった。
普通に買うならば回復ポーションは金貨10枚、万能ノ霊薬ともなれば金貨2000枚つまり白金貨2枚、いやもっとたくさんの金を出しても買う者もいるだろう。
しかし彼女は市民からは一切の金を取らずに回復ポーションを配っていた。
彼女が金を取るのはエルフの貴族たちからのみだった。
しかしエルフの貴族からも嫌われてはいなかった。
彼女は良心的な値段で交渉してくれたし、本当に困っている貴族からは金を取ることはなかった。
彼女に救われた者は多いだろう。
私もその1人だ。
ある日のこと、私の娘が魔物に襲われた。
見つけた時には酷い傷だった。
右手はなくなり、顔にも傷跡が残り、下半身は麻痺をして動かなくなっていた。
親としてなんとかして治してやりたかった。
そんな時だ。
彼女の噂を聞いたのは。
森の片隅に聖女と呼ばれる賢者がいると。
どんな傷も治してくれるらしいと。
藁にも縋る思いで会いに行った。
彼女は私の話を聞いて無料で万能ノ霊薬をくれた。
それを娘に飲ませると身体は完治した。
その時に私は決めたのだ。
彼女を貴族として全てから守ってみせると。
それに彼女の作る回復ポーションも万能ノ霊薬も私たちエルフの国、フェルノリアに莫大な利益をもたらしてくれていた。
少し気分屋で依頼を断る時もあったが、彼女がこの国にとって大切な存在であるのには違いない。
そんな彼女がしばらく前からいなくなってしまった。
エルフの貴族も市民も誘拐を疑った。
しかしいくら調べてもなんの手がかりも見つけられなかった。
彼女は一体どこに消えてしまったのだろうか。
無事でいてくれればいいのだが。
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