8話 山道
「初めまして、帝都で商人をしております。オリバーといいます。」
ジョンと一緒に馬車に近づくと、メガネをかけた男性が挨拶をしてきた。
2人ともやはり私の顔を見て固まった。
まあ美人だし、しょうがないよね。
私でさえ、見た時は芸術だと思った。
「マークだ、ジョンと冒険者をしてる。」
続けて弓を持った護衛が言う。
「アスタ。よろしく。」
私も軽く自己紹介をする。
「帝都まで同行させてもらうね。」
と私は言う。
「ええ、構いません。ジョンさんから魔術が使えると聞きました。護衛が増えて助かります。」
と言った。
「帝都に入るのに何か特別な手続きとかある?」
私は3人に聞く。
「特にないはずだ。」
とマークが答える。
「そうですね、通行税を取られるくらいですかね?」
とオリバーが言った。
「あれ、でも冒険者でも帝国民でもないんだよな?」
とジョンが言った。
「じゃないとなにか問題?」
私は聞いた。
「いや、何か身分を証明するものがあるならいいが。ない場合は鑑定魔法料として金貨1枚取られるぞ。」
とジョンが言う。
「金貨1枚?」
「ああ、犯罪歴がないかとかを専用の魔導具を使ってしらべるからな。」
「なるほど。」
どうしようか。
そもそもお金持ってないんだよね。
「お金持ってなかったら入れない…?」
一応聞いてみる。
「難しいと思いますね。」
とオリバーが答えた。
今持ってるのは森の中で倒したスライムの核と錬金術で作った回復ポーションが5本だけ。
回復ポーションを売っても金貨1枚には足りないだろうが一応オリバーに確認してみた。
「回復ポーション買う?」
「回復ポーションですか?今は詳しい鑑定ができないので暫定価格でいいのなら買いますが。」
とオリバーが言う。
とりあえず見せるだけ見せておく。
虚空から回復ポーションを取り出す。
「これなんだけど。」
3人が驚いた顔をする。
「今どこから出した?」
とジョンが言う。
「マジックバックか?いやそもそもバックも持ってないな。」
とマーク。
「魔術師だから。」
と私は言った。
「そんな魔術が。しかしあんまり人には見せない方がいいかもしれません。マジックバックですらとても貴重な物ですので。」
なるほど。これからは気をつけよう。
話がずれてしまったが、オリバーに回復ポーションを見せる。
「1本銀貨5枚ならすぐに買い取れますよ。」
うーん、それだと足りないんだよね。
他人に貸しなんて作りたくないし。
1回ひどい目にあったから。
まああれはあいつだけだろうけど。
万能の霊薬エリクサーでも作って売ろうか?
いや万能の霊薬エリクサーは材料が足らなそうかな。
「少し待てる?」
「大丈夫ですが、なにか?」
とオリバー。
私は回復ポーションの蓋を開けて地面に置く。
そして魔力を練り上げた。
「【錬金術:偽・アスクレピオスの杖】」
目に見えるほどの青白い魔力が放たれる。
眩いくらいに光る青白い魔力が螺旋を描いて渦になった。
渦の先端で液体状になり回復ポーションの中に雫として一滴落ちた。
緑色だった回復ポーションが白色に変わる。
どうやら成功したみたいだ。
万能の霊薬エリクサーって本によって生成方法が違うけど回復ポーションに魔力をたくさん込めれば一歩手前までできちゃうんだよね。
まあ万能の霊薬エリクサーと効果なんてたいして変わらないし、全然生命の雫アムリタでいいんだけど。
蓋をして取り上げる。
3人とも固まっていた。
呆けているオリバーの顔の前で手を振る。
しばらくすると気がついたようだ。
多分魔力酔いかな。
そんなに魔力を込めたわけじゃないんだけど。
「すいません。少しボーとしてました。」
とオリバーが言う。
「大丈夫。それよりもこれならいくらで買う?」
私は出来上がった生命の雫アムリタを見せる。
「それはなんですか?」
あらら、知らないらしい。
「生命の雫アムリタ」
「生命の雫アムリタ?鑑定しないと買い取れませんし、そもそも本物だとすれば私では買い取る資金が足りないです。」
とオリバーがいう。
なんですと。
結局オリバーにお金を借りることになった。
全員が復活したところで休憩を終えて帝都へと進むことになった。
「なあ、さっきの光はなんだったんだ?」
とジョンが聞いてくる。
「錬金術だよ。」
「錬金術?ジョンからは魔術師と聞いていたが?」
とマークが言った。
「錬金術も使えるんだよ。」
と答えた。
ひたすら道を進んで日が落ちかけてきた。
「この山を越えて少ししたら帝都が見えてくるぞ。」
ジョンが言った。
「この山で野宿?」
私は聞いた。
「いや、この山は超えた方がいい。盗賊がよく現れる場所だ。」
ジョンがそう言った。
もうすっかり日が落ちて月が道を照らしている。
光魔法で辺りを照らしながら山道を進んでいく。
殺気がする?
しばらく山道を進んでいると尾行されていることに気がつく。
「ねえ、つけられてる。」
私はジョンに言う。
「盗賊か?」
ジョンが聞いてくる。
「多分そうだと思う。」
「逃げられないか?」
「もうだいぶ近いから無理だと思う。」
「まずいな。」
「ねえ、盗賊を殺しても帝都に入れるよね?」
「…?。ああ特に問題はないはずだ。」
盗賊に私は容赦しない。
弱者を食い物にする奴らなんか許せない。
理性のない奴らなど魔物にも劣る。
何よりそれは人類を守る女神に対する侮辱だ。
魔力感知で辺りを見渡す。
20人ほどだろうか暗闇に紛れて木の影などに隠れているが魔力感知にはしっかり映っている。
「盗賊を誘き出すために指示に従ってほしい。」
2人にそう言って馬車を止める。
オリバーにも伝えて4人で野営の準備をしてるように見せかける。
野営の準備が終わった。
オリバーを馬車の中に戻して、2人には少し下がってもらう。
そしてライトを消した。
その瞬間に盗賊たちが襲いかかってきた。




