プロローグ 病弱なエルフ
…身体のあっちこっちが痛い
小さい頃は良かったなと思ってしまう。
森を自由に走り回ることができたし、どんなに動いても体が痛むことはなかった
だいたい80歳ぐらいのころからだっただろうか。
人間でいう成長期にあたる時期だ。
身体が痛くてたまらなくなった。
最初は成長痛だと思っていたがいくら経っても痛みは治らなかった。
病気にもすぐかかるようになってしまって、ちょっとしたことでも怪我をするようになってしまった。
生まれつき魔力が高かったのでみんな私に期待していたのだろう。
とんでもなく高い回復ポーションも試してもらったし、有名な光属性魔法の使い手にも治療をしてもらった。
しかし、どんな回復ポーションも誰の光属性魔法も意味はなかった。
痛みはどんどん強くなっていった。
エルフは寿命が長い。
最低でも1000年くらいは生きるだろうか。
少なくともあと900年以上もこの痛みに耐えなければいけないのだろうか?
そんなのは耐えられない。
そこで私は考えた。
誰も私の身体を治すことができないのなら私が自分でなんとかするしかないのだと。
まず最初に錬金術を研究することにした。
錬金術は万能ノ霊薬を作ることができるらしい。
万能ノ霊薬なら私の身体を治すことができるかもしれない。
50年ほど一心不乱に錬金術を研究した。
錬金術で回復ポーションを作ってそれを売って、材料を買った。
そしてついに万能ノ霊薬を作ることができた。
そして万能ノ霊薬を飲んだ。
「ステータスオープン」
アストリッド
エルフ♀
142歳
Lv15
魔力:SSS
物理攻撃力:F
魔法攻撃力:S
防御力:F
魔法防御力:S
素早さ:D
スキル
錬金術Lv.Ex
上級風魔法Lv.4
固有スキル
自然の加護
状態
健康
やっぱりだ。
万能ノ霊薬を飲んでも、体の痛みが取れることはなかった。
薄々わかってはいた。
いつ見ても状態は健康でステータスにはなんの異常もない。
それでも万能ノ霊薬ならなんとかなると信じたかった。
研究の成果があったといえば錬金術のスキルがLv.1からExになったことだろう。
スキルのレベルは最大で10とされているがExが存在していたらしい。
万能ノ霊薬の作製がExの条件だったのだろうか?
ただ万能ノ霊薬でも治すことができないなら錬金術ではもうどうしようもないのだろう
あとの望みは魔法だけだ。
「ステータスオープン」
アストリッド
エルフ♀
519歳
Lv31
魔力:SSS
物理攻撃力:E
魔法攻撃力:S
防御力:E
魔法防御力:S
素早さ:C
スキル
錬金術Lv.Ex
最上級火魔法Lv.Ex
最上級水魔法Lv.Ex
最上級風魔法Lv.Ex
最上級土魔法Lv.Ex
最上級光魔法Lv.Ex
最上級闇魔法Lv.Ex
固有スキル
自然の加護
状態
健康
エルフは国の決まりで200歳になるまで国を出ることができない。
古い風習だが200歳がエルフの成人とみなされる年齢だからだ。
小さい頃から世界を旅をすることが夢だった。
何年かかっても体を治して世界を見て回るんだと思っていた。
体を治すために痛みに耐えて必死に魔法の研究をした。
魔法は火、水、土、風、光、闇全ての属性の魔法をExまで上げた。
しかし体を治す解決策を見つけることはできなかった。
絶望したと言っていい。
錬金術も魔法もできることは最大までやったといってもいいいいだろう。
研究に没頭して魔法や錬金術を使っている間は不思議と痛みは和らいだが痛みはどんどん酷くなってきているのに体を治す解決策はみつけることができない。
もう体も精神も限界だった。
「…やっとできた。」
ついに、ついに唯一といえる解決策をつくることができた。
錬金術と魔法を使って痛みを何とか誤魔化してある魔法を創った。
今の記憶を持ったまま転生をする魔法だ。
今の体を捨てて記憶を持ったまま別の体に転生すればいいのではないかと思い、研究を始めて今は601歳になった。
ようやく転生の準備ができた。
もう待ちきれない。
少しでも早くこの体から離れたかった。
「さよなら、役に立たなかった私の体。」
そう言って呪文を唱えると目の前が真っ白になった。