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死にたい勇者は空に笑う  作者: 中野ると
東の大地編:第一章 神炎の伝承と消える少女
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ダイ14話 消えたモンモンを探せ!


 ――モンモンを置いて帰ろう。


 なんてことは、流石の俺も思わない。


 それこそ、モンモンを置いてきたなんて言えばおっさんからの報酬は帳消しになる可能性もあるし、その上おっさんに吹っ飛ばされたりするかもしれない。

 想像しただけで体が震える。あのおっさん、心底怖い。


 さて。

 モンモンを探すとはいえ、どうやって?


 ここ、モズク大森林は東の大地の六割ほどの面積がある巨大な森だ。とてもじゃないが徒歩での探索は不可能。見つける前に俺たちも迷子になってしまう。本末転倒だ。


 そこで、出発前のおっさんの発言を思い出す。


『そのモズク大森林の奥地にとある集落があってな。かつては人の集まる賑やかな村だったが、とある話が広がるや否やすっかり人が寄り付かなくなってしまったようで、今となっては幻の集落などと言われとる』


 そう、この森には集落が存在する。確証はないが、そこに行けばモンモン捜索の手がかりを得られるかもしれない。


「よし、ヨーコワッド。どこにあるかは知らねえが、集落を目指すぞ。そこに人がいれば何か手がかりを得られるかもしれねえ」


「はい! どこまでもお供いたします、師匠!」


 こうして、俺とヨーコワッドは未知なる集落を目指し森の中を進み始めた。




 


   ◇ ◇ ◇





 

 奥へと進めば進むほど、道は険しくなっていく。

 人が寄り付かなくなるのも理解できる。もはや、歩くだけで精一杯だった。


 俺の隣ではヨーコワッドが落ち着きなくキョロキョロと目を泳がせていた。時折、モンモンの名を叫ぶ。

 一方で俺は落ち着いていた。別に、モンモン捜索に精を出していない訳ではない。俺だってその点は必死だ。


 ただ、それ以上に今はこの状況におけるヨーコワッドの存在が気がかりだった。

 まさかこんなことになるなんて知っていれば、ノリで弟子にしてこの森に連れてくることはなかった。


 モンモンがいない今、俺がもし仮に致命傷を負った際の対処法は存在しない。つまり、俺がやられること即ちヨーコワッドも巻き添いになるということ。


 そんな責任、取りたくないし取れない。俺は師匠だが親ではない。ヨーコワッドの身に何かあればその責任は当然俺にまわってくる。そんなの御免だ。そこまで俺は器用じゃないし、余裕はないし、優しくない。


 ――死んでもこいつを死なせない。


 ただそれだけだった。生きてヨーコワッドを村に連れ帰る。それが仮にも師匠である俺の役目だ。


「ヨーコワッド、俺から絶対に離れるなよ」


「はい、師匠」


 そう言うとヨーコワッドは少し俺との距離を縮める。少し近いが問題はない。


 それにしても、この森は広い。

 これだけ進んでも未だ森の中。森の外れに近づく雰囲気を一向に感じない。


 だが、この森の中から集落を探すことは不可能ではない。

 もし、本当に集落があるのなら。そして、その集落に今も人がいるのなら。


 おっさんはあの時、『かつては人の集まる賑やかな集落だった』とも言っていた。それを踏まえると、森のどこかに集落へと繋がるルートが存在している可能性が高い。


 たとえ長い間使われていなくとも、その痕跡は残っているかもしれない。

 もう少し進めば、もしかしたら――。


 その時だった。


「し、師匠! なにか建物のようなものが見えます!」


 ヨーコワッドの視線の先、生い茂る草木の間からたしかに石造りの建造物が見える。


 ――ここが例の集落なのか?


「よし、行くぞ」


 ひとまず、行ってみないことにはなんとも言えない。

 俺たちは建造物の方向へとそそくさと進む。


 すると、建造物の全貌が見えてくる。高さは二階建て程度で、苔むした石造りの外装が特徴的。ところどころ崩壊していて、もはや建物としての役割は破綻していた。


「これは一体……」


「おそらく例の集落ではないな。辺りになんもありゃしねぇ」


 この建物の他に何かが建っていた形跡は皆無だった。やはりここは集落とは別の何かと見るのが妥当だろう。


 だが、ここに集落に関するなんらかの手がかりが残っている可能性もある。地図でもなんでもいい。とにかく俺たちには情報が著しく欠如していた。


「おい、ヨーコワッド。今から俺はこの建物の中に入り、手がかりを探してみる。お前は俺の後ろにピッタリとくっついて喋りも動きもするんじゃねぇぞ」


「はい、師匠!」


「バカ、喋るなつっただろ。静かに着いてこい」


 するとヨーコワッドは口を両手で押さえていた。どこまでも利口な奴だな、こいつは。きっと素晴らしい両親に大きな愛情を注ぎ続けられてきたのだろう。


 俺も少しくらいは常識をわきまえているつもりだ。もはや入り口が無数にあると言っても過言ではないボロ家だが、一応扉があっただろう場所から中に入る。


 中に入ると、妙にひんやりとした空気が身を包む。外装と同様にどこもかしこもボロボロで、まさに廃墟だ。


 中央にそれなりの大きさの階段があり、その両脇に部屋がいくつかある。


 まずは一階の探索だ。


 一階の部屋はどれも同じような造りで、古い書物や木の机や椅子が乱雑に放置されていた。書物を調べたり、本棚や机の引き出しを除いてみたものの、手がかりらしきものは見当たらなかった。


 次に階段を上がり、二階の探索に移った。


 二階に関しても一階とさほど変わりはなかった。

 ここまで見たところ、この建物はかつて宿舎として利用されていたと予想できる。各部屋に必ずある古びたベッドが何よりの証拠だ。


 もはや手がかりはゼロかと思われたが、たった一つだけ広さも格式も異質な部屋が存在した。


「ここが最後だ。油断するなよ、ヨーコワッド」


 ヨーコワッドはこくりと頷き俺の腕をぎゅっと握る。

 他の部屋のものよりひとまわり大きい扉を開く。ギーという音が響いた。


 すると、白い光が視界を一気に覆う。前がまったく見えない。ヨーコワッドは無事か? これは一体……。


 やがて少しずつ光が弱まると、そこには我が目を疑う不思議な景色が広がっていた。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

モンモン捜索中に見つけた謎の建造物。

そこでマグロが見た《驚愕の光景》とは?!

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