表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

◎ 酒が飲めないくらいなら

 かつて、遥かなる王国に、『人々の運命を左右する力を持つ』とされる魔法使いがいました。


 彼女の名はミリア。


 彼女が魔法を使うと、人々の人生は色鮮やかに輝き始めるというのです。


 ある日、若き王子がミリアのもとを訪れました。



「魔法使いミリアよ、我が国の民は、父王が健康にできるかぎり長生きすることを願っております。しかし父王は、酒をやめようとしないのです。このままでは体を壊してしまいます。どうか父王に魔法をかけてください」



 ミリアは微笑みながら答えました。



「王子よ。あなたは王の人生がこれからも輝くことを願っているのですね」


「もちろんです」



 ミリアは王子の要請に応え、王に魔法をかけました。しかし、王はその後も酒を飲み続け、病で亡くなってしまいました。



「魔法使いミリアよ。お前が魔法をかけて以来、誰ひとりとして父の酒を止めることができなくなった。父は早々に私に王座を譲り、こんなにも早く死んでしまった。これはいったいどういうことか」


「私は先王の人生に彩りを与えました。彼ののぞみは、好きな酒を飲みながら、あなたが立派に王の勤めを果たすところを見たいということでした。酒を取りあげられるくらいなら、死んだ方がマシだとも言っていました。私はみなが王の意思を尊重できるよう、魔法をかけたにすぎません」


「酒を飲まなければ、父はもっと長生きして、もっと長く王座にいることもできたのに……」


「それはあなたや民の願いだったのかもしれません。しかし、先王ののぞみはそうではなかった。これからをどう生きるか、彼自身が決めたのです。先王の人生は短くも豊かで、輝かしいものになったはずです」



 王は思い出しました。楽しげに酒をあおる先王の姿を。


 自分の即位式で酔っ払い、大暴れした先王。酒であっけなく死んでしまった偉大な父の後ろ姿を。


 涙を流す王に向かって、ミリアは魔法の杖を振りながら言いました。



「これは、ご本人の選択です」


「……捕らえよ」


「あ、あなたは、長寿だけが人間の幸せだと思っているのですか? 生きる楽しみを取りあげられ、我慢と不満の日々を長く生きることが本当に……」


「私は父王に、もっと長生きしてもらいたかったのだ。そのためにお前を呼んだというのに!」


「王よ! 人生は長さではありません! だれにも邪魔されることなく、自分の選んだ道を進む、その輝きこそに価値が……」


「うるさい! 兵ども! その魔女を捕らえて処刑せよ!」



 魔法使いミリアは必死に訴えましたが、怒った王により処刑されてしまったということです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


こちらもぜひお読みください!



三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~



ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~



カタレア一年生相談窓口!~恋の果実はラブベリー~

― 新着の感想 ―
[良い点] 酒は体に悪いから飲むなと言う人であっても、健康や安全に悪いことを何かしらしておりますから。 危険性があるとわかっていても、興味本位で首を突っ込んでいるのが人間という生き物です。 この王子…
[一言] 俺はミリア派の人間ですね! 人は長く生きるのもたしかに残される家族からすればそうあって欲しいと望むのでしょうがそれよりもどう生きるか!? を俺は選択したいですね! 両親ともに短命の方であった…
[一言] 確かにそうですよね。 僕もそうで、僕はちょっと理由が違いますが(どちらかというとさっさとこんな世の中から抜け出してバルハラで楽になりたいのが理由です)サッサと死にたくて、それこそ自殺未遂もし…
2024/04/13 01:13 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ