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4話 ソロでのクエスト

 結局――

 本を読む事に夢中になりすぎて徹夜した俺は、寝不足のままギルドへと足を運んだ。


 まだ日が登らない時間帯ならリノア達にまず会う事はないだろう。

 それにこんな早朝から依頼を探しに来る、風変わりな冒険者もいない。


 夜の間に依頼を受けて朝方に戻って来る冒険者もいるから、ギルドは常に二十四時間営業体制を取っている。

 だからこんな早朝でも依頼は受ける事ができるのだ。


 それと早めにパーティ募集しないとな。

 やっぱりパーティ組んで依頼を受けないと、効率が悪い。


 まあ昨日あんな事があったばかりだ。

 リノア達に解雇された冒険者なんて、そうそう拾ってくれる奇特なパーティなんて無いだろうなぁ。


 俺はギルドに入ると、中央に設置されている依頼掲示板の前に立つ。

 今日は一人でも出来そうな依頼を探す事にした。

 万能錬金術スキルを試すためにだ。


 んで、俺の視界に入ってきたのは、初心者向け『スライム退治』の依頼。


 俺は戦闘経験がほとんど無い。

 だから初心者向けの依頼なら怪我をするリスクも少ないと判断した。

 それに【万能錬金術スキル】を試すには、スライムは持ってこいの相手だろう。


 で、依頼内容は……『森近隣に出没するスライムを五匹討伐』か。

 依頼のランクはD。


 俺は手早く依頼書を引き剥がすと、カウンターの受付嬢に差し出した。


「おはようございます、アクアさん」


 馴染みの受付嬢はニコっと笑って、俺と挨拶を交わす。


「ん、ふぁ〜……おはようさん」

「ずいぶんと寝不足ですね? そんなコンディションで依頼受けちゃうんですか?」


 思いっきり欠伸をした俺を、彼女は心配そうに見ている。


「ん……問題ない問題ない。早く依頼受理してくれよ」

「ん〜分かりました。じゃあ依頼の内容はっと……アクアさん。これ、ランクDの依頼ですけど、受ける依頼間違ってませんか? それに一人でやるんですか?」


 受付嬢は、訝しそうな表情で俺に聞いて来た。

 俺の冒険者ランクはS。

 依頼ランクDで初心者向け依頼を持ってきたら、不思議がるよな。


「……ま、まあ。いろいろと事情があってな。察してくれ」


 受付嬢にそう答えた。

 どのみち俺が解雇されたのを知られるのは時間の問題だろう。


「冒険者の事情を私が聞く必要もありませんが……分かりました。アクアさんなら問題無く出来ると思いますし、依頼よろしくお願いしますね。あの辺りにはスライムよりも強い魔物は出ないはずですし」


 この信頼も俺が冒険者ランクSだからだろう。

 リノア達パーティの実績が積み重なって、勝手にSランクになっただけなんだが。


 冒険者ランクはSだが、戦闘経験が少ない俺の冒険者レベルはC。

 冒険者レベルとは個人の戦闘能力に直結する。

 だから俺は初心者より少し上程度の戦闘レベルしかない。


「りょーかい」


 俺は依頼書を受け取りギルドを後にした。



 ○



 街を出て数十分ほどで、目的地である森に着いた。

 駆け出しパーティだった頃、よくここでスライムだの弱い魔物を倒してたものだ。


 って、感傷的になってる場合じゃないな。

 さっさと始めるか。


 この辺り一帯、大小カラフルな色をした様々なスライム達がぷよぷよと動いている。

 大きいので牛ほど、小さいのでも大型犬ほどのサイズだ。


 一見動きは緩慢だが、獲物を襲う時だけ普段からは想像もできないスピードで移動する。

 主な獲物は放牧されている家畜や小動物、たま〜に人間を襲う事もある厄介な魔物。


 冒険者レベルが高ければ問題じゃないんだが、俺には少し手こずる相手……そう今までの俺なららそうだったろう。


「んじゃ、ちゃっちゃと片付けるとしちゃいますか」


 辺りを見回し、手頃そうなスライム五匹に目星をつける。


「――スキル発動っと!」


 その言葉に反応するように、五匹のスライムの頭上に鉄球が出現した。


 グチャ! グチャ!


 五匹のスライムは同時に落ちてきた鉄球に押しつぶされた。


「思ったよりも早くスライム討伐が終わったな……ふむ」


 俺は東の空に視線を向けた。

 地平線からようやく太陽が半分顔を出し始めている。


 俺が街を出てからそんなに時間が経っていないみたいだ。

 これから街に戻ってもいいが、それは少し勿体無い気がする。

 正直、まだこの錬金術スキルを試してみたい。


 となると行先は森に決まる訳だが……

 森の奥に行けば、スライムよりも強い魔物がいるはずだ。


 ただ、森に入るにはソロの場合はギルドが推奨する冒険者レベルはB以上。

 構成にもよるがパーティを組んだ場合でも、レベルC以上と言うのがギルドが定めた条件だ。


 今、俺は一人しかいない。


「まあいざとなれば、【速度上昇薬】を飲んで、逃げればいいだけだ。なんとかなるだろう」


 手のひらにポツリと薬の錠剤を錬成する。



 ――きゃあああああっ!


 その時だった。

 森の方から絹を裂くような女性の叫び声が聞こえてきたのは。


 ふむ。

 こんな悲鳴を聞いて放っておける訳がない。


 俺は他にも肉体強化の薬を錬成すると、直ぐに飲み込んだ。


「待ってろよ、今すぐに行くからな!」


 俺の足は森へと向かっていた。

 尋常じゃないスピードを出しながら。


読んで頂き本当にありがとうございます。


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