世界中の花
地平線から陽が昇り、地平線に沈むことが見ることのできる、そこは広い土地でした。
夜には美しい満天の星空を見ることができました。
ある朝、暖かい陽気に誘われて僕は目を覚ましました。
「ん、ん~」
力いっぱい背伸びをすると、柔らかくなった土の中から外へと顔を出すことができました。
「わぁ~、広いな~、明るいな~、暖かいな~」
今までは冷たく重い土の中で、この先どうなるのだろうと不安に思っていた僕は、目の前に広がる光景が夢のようでした。
時折り吹く、まだ冷たさの残る風が体を揺らします。そして暖かい春の陽射しに、うとうと、うとうと。
「ん~」
すると隣から声が聞こえてきました。
「やぁ、おはよう」
そう言いながら背伸びをしています。
「おはよう」
恐る恐る僕の答えました。
「今日は暖かいね」
「うん、そうだね」
そうしているうちに、あちらこちら土の中からたくさん顔を出していました。
それからは時々ケンカもしましたが少しずつみんなで大きく育っていきました。
夏が近づいてきた頃、日照りが続き大地が割れるほど乾燥してしまいました。僕も友達もみんな元気がなくなりしおれてしまいました。
「大丈夫かい?」
僕は声をかけました。
「うん、でも喉がかわいたよ」
「僕もだ」
空を見上げると強い日差しが眩しく感じました。
「早く雨、降らないかな」
陽が沈む頃になると周りのみんな、話す気力がないほどやつれていました。
「もう駄目だ」
近くから声が聞こえた。
「何を言ってるの。辛いのはみんな同じだよ。きっともうすぐ雨が降る、頑張ろうよ。」
まるで自分自身に言い聞かせるように僕は言いました。本当は雨が降ることなど分からないのに、何故こんな事を言ってしまったのだろうと心の中で思いました。そして僕は思いきり手を伸ばして隣にいる友達の手を掴みました。ふと空を見上げるとまばらに見える星たちが雲に隠れたり、姿を現したり、忙しく動いているように見えました。
「疲れたよ、眠くなってきた」
僕はそう呟いて目を閉じようとしました。
冷たい風が僕の身体を揺らし始めました。すると一粒の水滴が僕を叩いて起こすように落ちてきました。
「雨だ!」「雨だ」「雨だ!」
あちらこちらから、心の奥から喜んで叫ぶような声が聞こえてきました。そして僕自身も冷たいところから暖かい所に来たような、安心と穏やかな気持ちを取り戻す感じがしました。
環境が整うと僕たちはどんどん成長していきました。やがて、それぞれに花を咲かせる時がやってきました。
「お前は背が低いな」
「君の花は変だよ」
「あなたは何故もっと話をしないの?」
「太くない?」「みんなと違う?」…
花を咲かせると他人を見ては、それぞれの思いを口にし始めました。
「それがどうかしたの?」
透き通るような大きな声が響きました。
僕は声が聞こえた方を探しました。
そして、赤く美しく咲いている花を見つけました。それはそれは文句のつけようがない花でした。
「あなたはすべてが整っているから、そう言えるのよ!」
「お前に悩んでいる俺たちの気持ちがわかるのか?」
「そうだ、そうだ!」
自分自身と美しい花を比べて、みんなが声を上げました。
「それじゃ、みんなが同じになってしまうじゃない」
その言葉に、今までざわざわとしていたみんなが静かになりました。
「えい!」
次の瞬間、言葉とともにちぎれた花びらがゆっくりと地面へと舞い降りていきました。
「え~、何てことするの?」
辺りからは悲鳴のような声も聞こえてきました。
「痛たたた、やっぱり痛かったわ!」
すると近くから声が聞こえてきました。
「せっかく美しく咲いた花を君は何てことをするの?」
「美しく咲いた花の私、そして一枚欠けた花も私、どんな形でも私は私。同じじゃなくて違っていてもいいじゃない」
まわりの花たちは、それぞれの姿と自分を見比べました。
「そうだよね。みんな同じだったら誰だか分からなくなってしまう」
誰かが言いました。
「俺、今の自分でいい」
「私も!」「僕も」
あちらこちらから声が聞こえてきました。
「うん、そうよ。限りある命だから、自分らしい花を咲かせて楽しく仲良くしましょう」
彼女は大きな声でみんなに伝えました。
「そうだ、そうだ!」
その頃には、もう誰も他人の事を言わなくなりました。
暖かい優しい風が草原を駆け抜けていきます。
色や大きさ、高さ、それぞれに違う花たちが賑やかに咲き誇っています。
誰もが最初はどう成長するのか分からない種であっても、諦めないで寒い冬を乗り越えればきっと自分らしい花を咲かせる暖かい春がやってくるのだと、僕はそう思いました。