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カルラ14歳夏に
遠くなっていく心音が
確固たる終わりを伝えようとしていた
カンカン照りのひまわり畑の真ん中で立ち竦む
汗ばんだ彼女の両腕の中にあるのは動かなくなった
一匹の黒い犬
世界が溶け始めていることに気付きながらも
その流れを遡る術を彼女は知っていた
知っていながら、やれるはずと薄々の確信を持ちながらも
実行に移さなかったのは
彼女なりの反骨、父親への抵抗
生温い風に吹かれながら
良かれ悪しかれ彼女が蘇生に成功したのは
14歳の夏だった
人間は死んでも0にはならない
マイナスとマイナスを掛けたらプラス
科学者は神ではない
0から生み出すことは出来ないが
それでも、
マイナスをプラスにすることは出来る
其処に果ては無い
夏だというのに黒いマントの私。