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4話 オーガ探し

「もう何して遊ぶかは決めているの?」


 一緒に遊ぶ事になったエレイナ姉さんは、僕達に遊ぶ内容を決めているのか聞いてくる。僕はまだ決めてない事を話すと、エレイナ姉さんは〝じゃあオーガ探しなんてどう?〟と勧めてきた。


「オーガ探し?」


 僕は聞いた事のない遊びに首を傾げると、エレイナ姉さんは説明をしてくれた。

 話を聞くと、それは地球で言う鬼ごっこに近い遊びであった。1人がオーガになって残りはヒューマンになる。オーガはヒューマンを制限時間内に全員捕まえると勝利となり、ヒューマンは制限時間を逃げ切れば勝ちとなる。普通の鬼ごっこと違うのは、捕まったら鬼を交代するのでは無く、終了するまでは鬼が変わらないという事だ。捕まるとオーガに食べられて負けとなるため、交代はしないらしい。

 普段ルーイ兄さんと英雄ごっこ等、二人で出来る遊びでしか遊ばない僕は、オーガ探しという複数人でやる遊びに面白そうと思い〝オーガ探しにしよう〟と言う。その頃にはルーイ兄さんも復活しており、オーガ探しをやる事に賛成する。


 オーガ役については〝私がオーガ役をやるね〟と言ってくれたので、エレイナ姉さんがやる事になった。しかし、エレイナ姉さんはルーイ兄さんや僕と比べたら年上の為、体格に差がある。このまま始めてしまうとエレイナ姉さんが簡単に勝ってしまうので、エレイナ姉さんにはハンデを負ってもらうことになった。

 ハンデ内容は3つ。

 1つ目は、追いかける時は小走り。

 2つ目は、1回は捕まっても振り切ることが出来る。

 3つ目は、見つけてから15ミル経ったら一度見失う。

 これだけを見たらエレイナ姉さんが不利に見える。しかし僕達という小さな子供を相手にするには丁度いいハンデだ。エレイナ姉さんも〝これくらいしないとハンデにはならないよ〟といい、範囲や時間も定めていく。範囲に関しては村全体、終了時刻はお昼になるまでとなった。今の時間は9ジル、お昼になるまでは後3時間ジル程ある。村の範囲の事を考えると長い気もするが、ハンデもあるし丁度いいのだろうと勝手に自己完結させ深くは考えないようにする。



「いーち、にー、さーん……」


 ルール内容を決め終わるとエレイナ姉さんは家の壁に体を向け10セル数え始める。

 僕とルーイ兄さんは、エレイナ姉さんが数え始めたと同時に走り出す。ルーイ兄さんは広場の方へと逃げていき、僕は近くにあった木の影に隠れる。取り敢えずは様子見だ。僕はエレイナ姉さんの実力を知らないので足が速いかどうかは分からない。だが、家の畑仕事を手伝ってるのを何回か見た事があるので、体力はあるだろう。

 そう考えてるうちに10セルが経ったのでエレイナ姉さんが居た家の方を見るが、既にそこにエレイナ姉さんは居なかった。何処に行ったんだ?と思い、周りを見渡そうとすると後ろから声が聞こえた。


「ミイツケタ」


 その声は、地獄の底から這いずり出てきた鬼の様な声だった。

 ゆっくりと後ろを振り返ると、そこには化け物の様な形相のしたエレイナ姉さんが居た。逃げようとするが恐怖で足がすくみ動かない。カタカタと歯が打ち合う音が聞こえる。気が付くと足元が濡れており、失禁してしまった事が分かった。


「一回目だね、セレン♪」


 エレイナ姉さんは僕の肩に触れると、笑顔でそう言った。


 気配も何も感じなかった、気がついたら後ろにいた。その事実に驚き戸惑っていると、エレイナ姉さんは〝ルーイを探しに行くから逃げるんだよ〟と言い残しルーイ兄さんを探しに行ってしまった。


 僕はエレイナ姉さんが去っていた方向を暫くの間ぼーっと見ていたが、この事をルーイ兄さんに伝えなければならないと思い、震える足を何とか抑え立ち上がるとルーイ兄さんが逃げた広場の方へと走った。


「うわぁぁぁー!!!!」


 ルーイ兄さんの声が聞こえる。恐らくエレイナ姉さんに見つかったのだろう。急いで声の聞こえた方へ向かうと、そこでは丁度ルーイ兄さんがエレイナ姉さんに捕まっている所だった。


 見つからない様に家の影に隠れ様子を伺う。やはりエレイナ姉さんは化け物の様な形相をした後、笑顔の様な顔になりルーイ兄さんを捕まえていた。


 エレイナ姉さんが遠くに離れたのを確認すると、僕はルーイ兄さんに駆け寄り〝大丈夫!?〟と聞く。ルーイ兄さんは僕の方を振り返り大丈夫だと言うと、僕の下の方を見て顔を逸らし〝セレン…お前の方こそ大丈夫か?〟と言った。僕は下に、なにかあるのかと思い見てみると、先程失禁してしまい濡れていたズボンがまだ濡れていたままだった。


「大…丈…夫……」


 恥ずかしさのあまり顔が熱くなる。僕は5歳の女の子だ、だがそれは肉体的な話だけであって精神年齢はもうすぐ22歳になる大人の男性だ。そんな大人が失禁しただけではなく、それを10歳の男の子に見られ心配されてしまった。

 今すぐここから逃げ出したい。僕の頭の中はそれだけに支配されていた。先ほどエレイナ姉さんから感じた恐怖も、漏らしてしまったのをルーイ兄さんに見られてしまった前では何の恐怖も感じなかった。


 しかしまた何処でエレイナ姉さんと遭遇するか分からない。あのエレイナ姉さんを見ると、一人で逃げるより二人で逃げた方が安全な気がする。それにこのままバラバラに逃げていると、気が付いたら2人ともやられていた、なんて事にもなりかねない。恥ずかしさで死にたくもなったが、幸いにも今の僕は小さな子供。なので、小さな子供なら仕方が無い事だと割り切る事にし、安全の為にルーイ兄さんと一緒に行動する事にした。


 建物の影から外を覗き、エレイナ姉さんが居なさそうなら急いで近くの建物の影へと走る。これを繰り返す。何回同じ行動をしただろうか、気が付くと僕達は村の端に居た。

 やばい…ここから先は範囲外だ。

 僕はルーイ兄さんに伝える為に戻ろうとすると、〝ドコイッター〟と言うエレイナ姉さんの声が聞こえた。

 声が聞こえた方をこっそりと覗くと、キョロキョロと周りをみながら僕達を探しているエレイナ姉さんが居た。

 まだこちらには気づいてないようで再度「ドコイッター」と言いながら僕達が隠れられそうな場所を探している。


 だけど時間の問題だ。今いる場所は村の端っこ、ここから逃げるにはエレイナ姉さんの前を通らなければならない。もしかしたら気付かずに通り過ぎてくれるかもしれないが、それに期待し捕まる事だけは避けたい。もしもどちらかが捕まってなければ、捕まってない方を犠牲に逃げる事が出来たのだが、生憎2人共一度捕まっているのでそんな事は出来なかった。


「セレン、お前は逃げろ」


 ルーイ兄さんもエレイナ姉さんが近くに来ている事に気付いたようで、小さな声で僕に逃げる様に言ってくる。


 それにしても本当に自分が恥ずかしい、10歳の子供に漏らした姿を見られただけではなく助けられそうになっている事が。僕は体は子供だとしても精神年齢では大人だ。子供に殿を任せていい訳がない、僕も覚悟を決めるべきだ。今からあの化物を全力で引き付けて逃げる覚悟を。


 しかし僕がなんと言った所でルーイ兄さんは逃げないだろう、なのである提案を出す事にする。


「掛け声と同時に僕とルーイ兄さんはそれぞれ違う方向に逃げる。そして追われた方は追われなかった方から出来るだけ離れ、引きつけながら逃げるなんて案はどう?」


 ルーイ兄さんは少し悩んだが、その作戦が追われなかった方が生き延びる確率が高いのに気付くと渋々だが了承してくれた。


 さて、こうしている間にもエレイナ姉さんはこちらに近づいてきてたようで30m程の距離まで近づいていた。僕は作戦をもう一度確認すると、ルーイ兄さんに作戦開始の合図を送る。


「3、2、1、今!」


 その掛け声と同時に僕達は走る。エレイナ姉さんがこっちを見て、一瞬どっちを追うか悩んで止まる。それを見て僕は畑がある方へ逃げ、ルーイ兄さんは奥の村長の家の方へと逃げる。


 逃げる直前に僕は一瞬だけ足を止める。それを見たエレイナ姉さんは僕の方がルーイ兄さんよりも距離が近く、早く捕まえられると判断し僕を追ってくる。


 それを振り返り走りながら確認すると畑の中へと隠れ込む。畑は野菜が成長しており、成長した野菜の葉が僕を隠してくれた。その中をしゃがみながら移動し進んでいく。エレイナ姉さんはしゃがんだ僕の姿が見えないので、僕を探すのに暫く時間がかかる事だろう。


 暫く進むと畑が終わる。一度戻りエレイナ姉さんがまだ畑で僕を探しているのを確認すると、畑から出て近くにある倉庫の中へと入り込む。ここまで来たらあとはエレイナ姉さんが倉庫のドアを開けないことを祈りながら隠れ続けるだけだ。


 どれ位の時間が経ったのだろう、足が痺れて辛くなって来たので一度倉庫の外へと出る事にする。外に出ると太陽は空の中心近くまで登っていた。恐らく、11ジル30ミルぐらいだろう。あと少し、ここまで逃げきれた事に喜びながら僕はルーイ兄さんと合流する為に倉庫を足早にと去っていく。


 広場の方へ行くと、そこにはルーイ兄さんが居た。話を聞くとルーイ兄さんはあの後捕まってしまったらしい。ルーイ兄さんはこれで2回捕まってしまったので食われた事となり負け。


 生き残っているのは僕だけという事が分かった。ルーイ兄さんに別れを告げ村長の家の方へと行く。別れ際、ルーイ兄さんが〝生き延びろよ〟そう言っていた気がした。


「ミイツケタ」


 右側から声が聞こえる。声が聞こえた方角を確認する事無く一目散に反対の方向へと逃げる。後ろからはタッタッタッと小走りで誰かが追ってきている音が聞こえる。100%エレイナ姉さんだ。


 エレイナ姉さんは小走りでも早く、このままじゃ追いつかれて捕まってしまう事が分かったので家の角を上手く使い撒くことにした。右へ左へ、何度か角を曲がると足音が遠くなっていく。逃げ切ったと確信した僕は歩を緩める。撒いた安心感からドット疲れが押し寄せてきた、いつの間にか息も止めていたらしく足りなくなった酸素を補充するかのように、大きめの深呼吸をする。心臓の鼓動の音もいつもより大きく感じられた。


 村長の家に行くために、最後の角を曲がると目の前には撒いたはずのエレイナ姉さんが居た。エレイナ姉さんは後ろにいる僕に気が付いたらしく、振り返るとニコニコしながら近づいてきた。僕はもう逃げる気もせず、両手を上げると〝まいりました〟と降参するのだった。

本当はオーガ探しを前編と後編に分けたかったのですが、ただでさえ薄い内容が更に薄くなるので辞めました。

次回更新予定は12日です

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